先日、古書で『戦国対談』新書戦国戦記10 対談者・高柳光壽、清水崑(春秋社昭和五十二年刊)というのを手に入れた。私は、この高柳光壽という人の言っていることは、だいたい当たっているのではないかと思う。それと、この人が話題にしている戦国時代ものは、私の知らない本も多いが、読んだことがあるものは、まちがいなく良いものだ。未知谷というマニアックな出版社から菊池寛の本が出ていたが、むろん高柳光壽はそれも話題にしていた。
以下は、一太郎ファイルの発掘。以前「未来」にのせた文章である。まとめようと思っていたが、そのままになってしまったので、ここに再録する。
〈今月の歌〉
移したる視野のかがやくなかに群れひとしく泳ぐ胸分けざまに
ささらぎて流るるを一またぎして岨来ればまた音ささらぎぬ
上がり根のふたもと三もとくれなゐに沁みとほりたる夜すがらの雨
普現二字ならぶ頭に朱方印道有が上朱爵印天山が下にて捺されあり
重き櫓を押しては返し額の汗はらひもあへぬさまの小三治
片山貞美歌集『魚雨』より
山登りの歌が多くある。著者は年鑑によると大正十一年生まれだから、登山者としては最高齢に近いだろう。作品は調べにのりつつも、峨峨として兀立する風情の読後感をあたえる。いちいちの嘱目詠にこめられた諧謔は、時に読者をして哄笑せしむるものである。堂々とした男の歌、老い人の歌である。準縄、あってなきがごとく、俗にあって俗を脱し、自由である。良い哉。 不識書院刊
以下は、一太郎ファイルの発掘。以前「未来」にのせた文章である。まとめようと思っていたが、そのままになってしまったので、ここに再録する。
〈今月の歌〉
移したる視野のかがやくなかに群れひとしく泳ぐ胸分けざまに
ささらぎて流るるを一またぎして岨来ればまた音ささらぎぬ
上がり根のふたもと三もとくれなゐに沁みとほりたる夜すがらの雨
普現二字ならぶ頭に朱方印道有が上朱爵印天山が下にて捺されあり
重き櫓を押しては返し額の汗はらひもあへぬさまの小三治
片山貞美歌集『魚雨』より
山登りの歌が多くある。著者は年鑑によると大正十一年生まれだから、登山者としては最高齢に近いだろう。作品は調べにのりつつも、峨峨として兀立する風情の読後感をあたえる。いちいちの嘱目詠にこめられた諧謔は、時に読者をして哄笑せしむるものである。堂々とした男の歌、老い人の歌である。準縄、あってなきがごとく、俗にあって俗を脱し、自由である。良い哉。 不識書院刊