日本銀行が、現在行っている金融政策は、異次元の金融緩和政策といわれています。この金融政策の目的は、安部自民党政権から要請された、消費者物価2%上昇実現といわれています。歴史上も、世界的にも物価上昇○%を政策目標に掲げる政権、政治はまれです(そのくらい異常なこと)。通常は物価上昇を抑えるための金融政策、政治目標は多くの政権が掲げる政策目標です。
この1990年代以降日本はなぜ、物価が下がっているのでしょうか。この物価上昇がなぜ起こらなかったのかがわかることで次の対応策が適切に実施できるはずです。
まず、第一に不動産市場、株式市場のバブルを作ったのは中曽根内閣、自民党政権であり、そのインフレ対策を行ったのも自民党政権です。その後、不動産価格の下落、金融機関の不良債権、金融機関の破綻、自民党政権による金融機関救済策(税金の投入)、ゼネコンなどの救済を連続的に行ってきました。その結果、中小零細企業は金融機関からの貸しはがしにあい倒産の激増が起きました。日本経済の中心部分を支えてきた中小企業の倒産で、日本経済は長期にわたる低迷を余儀なくされました。そこに働く多くの国民は解雇、失業に見舞われました。日本社会の特徴といわれた中産階級、中流意識が消滅し、貧富の格差が急激に拡大しました。
第二は、この頃、新自由主義がイギリス、アメリカ、ニュージーランドなどで「成功」したとしてもてはやされ、先進工業国の多くが新自由主義的な政治経済路線をとるようになりました。それが、市場万能主義です。市場に任せれば問題は市場が解決する。強者生存、弱肉強食社会の到来でした。日本では小泉・竹中経済路線の下で採用され、郵政民営化、規制緩和路線が吹聴されました。代表的な事例としてライブドアの堀江、村上投資顧問会社による株価操作などがありました。この時期は、金融緩和政策をとっていましたが、経済の成長はできず、物価も基本的には安定していました。その理由は、少子化で国内市場は縮小し、大量生産、大量消費は時代の流れと乖離してきました。また、アメリカ経済の金融中心主義などにより、ドル安、円高が緩やかに進み、原油、食糧、原材料輸入に頼る日本経済は、輸入コストの減少が継続していました。国内では、労働法規の規制緩和で、正規労働の減少、非正規、有期雇用が急激に拡大しました。景気対策として、金融緩和、景気浮揚策としての税金投入を行いました。財政赤字は急激に増加しました。その結果、収奪の強化、社会保障費の毎年度切り下げ、国民所得は急激に低下し、年収300万以下の家庭が激増しました。収入減少、購買力の減少、少子化で国内市場は縮小し、そのそも物価が上がる要素などは全く発生しませんでした。
これらがこの20年間の物価が下がる要因、歴史的経過です。したがって、直接的に物価を上昇させる金融政策がいかに「いかさま」であるかがわかると思います。完全な対処主義に落ちっています。
現在は、少子化はいっそう深刻化し、地方都市は疲弊し、過疎化、山間部では限界集落がたくさん発生しています。また、正規労働は半分、非正規労働が半分になろうとしており、国民所得の減少、低所得の常態化もあり、貧富の格差が固定化しています。しかも、失業保険の削減、社会保障の引き下げ、消費税率の拡大により社会構造は20年前とは大きく変化しています。これらのことを無視して超金融緩和を行い、市場に大量の資金を供給し、物価上昇、不動産市場、株式市場のバブルを人為的作れば国民の大半を閉める低所得者、老人、年金生活者、非正規労働者(全世帯の約半分)はその日の食費、生活に困ることとなります。
さらに、過去の不動産、株式市場のバブルのように政治がコントロールすることができず、膨大な不良債権(救済も含めて財政赤字が急激に拡大した)を作り出すことも自明のことです。再びその付けを消費税でまかなう。国民の税金を投入し救済することで富裕層、大手金融機関、大手企業は利益だけを懐に入れて「知らぬ、存ぜぬ」を決める。このようなことが今回、再び、繰り返される可能性が出てきています。
日本社会が必要なことは、環境対策、少子化を受け入れた市場規模の縮小に見合った産業構造への転換、輸入に頼らない経済構造、そのためには、再生可能エネルギーの開発を急激に進める。食料自給率を高めること。また、アジア各国との平和外交の実現、通商の安定的な確保ではないかと思います。