<韓国中央日報>構造改革の代わりに通貨・財政ショー、アベノミクスはポピユリズム
安倍首相は「この道しかない」と言った。だが4-6月期の連続マイナス成長(4-6月期マイナス7.3%、7-9月期マイナス1.6%、年率)を記録するとアベノミクスに対する批判論が強まった。すると安倍首相は「消費税の追加引き上げ延期」を掲げて衆議院を解散し、今月14日投開票の総選挙を行う強硬姿勢に出た。信用評価機関ムーディーズは「財政赤字の縮小目標を達成する可能性が不透明になった」として日本の信用等級を「Aa3」から「A1」に1段階下げた。韓国よりも低い信用等級だ。中央SUNDAYはアベノミクス施行2年を迎えて日本最高の経済専門家3人に連続インタビューした。アベノミクスの設計者である浜田宏一エール大学名誉教授は「すべてうまくいっている」と話した。2000年代初期に「小泉改革」を総括した竹中平蔵・元経済財政相は当時、財政拡大なしに財政健全化を成し遂げた点を強調して「安倍首相は構造改革にさらに拍車を加えなければならない」と助言した。一方、少壮の経済学者である小幡績・慶応大学准教授は「アベノミクスは経済学的には話にならないポピュリズムショー」と批判した。岐路に立たされたアベノミクスを眺める視点は依然として交錯している。
――アベノミクスの最も大きな問題は何か。
「アベノミクスはポピュリズム、それ以上でもそれ以下でもない。難しい構造改革をしないで通貨政策と財政拡大でショーをしている。安倍首相の人為的なインフレ政策は国債価格を暴落させ経済危機に追い詰めるだろう。国債価格が暴落すれば国債を大量に保有する都市銀行が経営破綻に陥ることになる。銀行が破綻すれば金を借りた中小企業がつぶれる。その状態では政府が銀行を救済しようとしてもだれも国債を買わないため救済金融も不可能だ。日本経済が崩壊するだろう」
日本政府が国債を大量に発行し、今後の景気上昇に対する期待感が高まるなどさまざまな変数が重なれば長期国債金利が高まる。これは国債価格の下落を意味するため投資家には損失だ。こうした投資家がいっせいに国債を売りに出れば国債価格が暴落することになる。小幡教授のようにアベノミクスに批判的な学者はこうした崩壊の可能性を示し安倍首相とアルマゲドンを合成した“アベマゲドン”と呼んだりもする。
――それでも慢性デフレを抜け出すべきではないか。
「大きな誤解だ。デフレと不況は厳格に異なる概念だ。インフレは単に資産と所得の減少だけのことだ。税金が決められるのと同じだ。インフレを起こすと経済が回復するという主張は話にならない。物価と賃金は自動で連動していない。こうした点からポール・クルーグマンも間違いだ。忍耐心を持って構造改革をすべきで、お金を印刷すれば経済が生き返ると詐欺をしてはいけない。円安で輸出が回復するというのもそうだ。日本はこれ以上輸出主導成長をすることも、する立場でもない。安倍政権は1970年代から来た人々のようだ」
――世界の多くの報道機関と経済学者はアベノミクスが唯一の希望だとみているようだ。
「彼らは量的緩和が好きなだけだ。米国の人々が特にそうだ。量的緩和が少なくとも短期的には株式市場に良いためだ」
――それならあなたの政策対案は何か。
「成長率を高めるのは容易なことでない。短期間に何かをするというのは不可能だ。安倍首相は需要中心政策に集中している。だが、成長は経済学理論でも供給政策に重点を置く。私は専門学校を多く作り能力ある人材を多く作ろうと主張している。雇用の好循環も強調する。もちろんこうしたことで市場の懸案を直接解決することにはならない。だが、長期的に考えてみれば能力のある人材が多ければこそ成長が促進される。過去20年間がなぜ失われた20年なのかといえば、人的資源に投資しなかったためだ。多くの若い日本の人たちが単純職種に従事している。社会的に浪費であり彼ら自身にも役に立たない。前世紀の日本では大企業が新入社員を多く採用して教育し、彼らの能力を育てた。いまは教育する時間もなく、ただ絞り取って仕事をしろという。生産性を高める余地がない」
――改革を長期間かけてしようということか。
「日本経済の状況は良くないが危機ではない。方向はいいのだがスピードが遅いのだ。サムスンに負けた後、日本の人々は『どうしてサムスンに負けることがあるだろうか』と衝撃を受けた。円安でサムスンに勝つことができるだろうか。マクロ政策にあまりに縛られるのは望ましくない。経済政策を正常化する必要がある。財政健全化も同じだ。最も重要なのが年金として出て行くお金だ。だが、安倍首相は政治的に敏感なこの懸案に対しては何も言わないでいる。若い世代は政府を信じていない。税金のように国民年金を払えというが後でもらえそうにもない。政府が乗り出して不確実性を減らさなければならない。ある政権になって『5年後に年金が破綻する』と言ったら、その次の政権は『違う。今後数十年は余裕がある』と言うが、これではだめだ。成長戦略は日本だけでなくすべての先進国でゆっくり保守的に執行するほかない。麻酔や心臓衝撃のような短期政策は効果がない」
――このまま行けば日本経済に危機が迫るだろうか。
「2年前に私がアベノミクスに対し批判的な本を書いた時、だれもが『君は本当に勇気がある』と言った。ところがいまでは多くの経済学者がアベノミクスに疑問を提起している。量的緩和は1度はわからないが2度はやりすぎだ。安倍首相は自信を持って継続するというが、一般国民の生活は変わっていない。民主党政権の経済政策よりは良くなるかも知れないが株価上昇のほかにいったい何が良くなったのかわからない。長期的で根本的な成長戦略が見えない」
――浜田宏一教授は日本の国の債務が国内総生産(GDP)の250%ではないという。
「タブロイド新聞の論理だ。とんでもないことだ。日本人が国債を所有しているので問題ないというのも同様だ。ならば財政健全化のための消費税引き上げは3年後にまた延期しなければならないかもしれない。その時になって、また経済が良くなければそのようにするだろう。そうした状況を投資家が見て『あぁ、日本は本当にだめだなぁ』と考え始めたら大きな問題だ」
――安倍首相はいまが日本経済に決定的な瞬間だという。
「それだけだろうか。とても絶体絶命の瞬間であり最終チャンスとまで言っている。完全に間違った言葉だ。日本社会に染みついた否定的な考えをなくそうというのもアベノミクスの一部だと承知している。心理的解消? それは良い。いまは正常な経済政策を展開すれば良いということだ」
――それでも日本は失われた20年を体験しなかったか。
「誇張されたと考える。デフレがあった。経済は良くはなかったが失業率は低かった。1990年代にバブルが崩壊し通貨危機が訪れた。アジア全体が危機だった。何がそんなに悪かったのか。国の債務が10年間で2倍に増えたこと? 未来に負担になるだろうが根本的に解決不可能な状態ではない」
◇小幡績=1967年生まれ。東京大学経済学部を首席卒業した後、大蔵省(現財務省)に入省し7年で退職。2001年に米ハーバード大学で経済学博士学位を受けた。以降金融庁諮問委員、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)運営委員などを務める。現在慶応大学経営大学院教授。(中央SUNDAY第404号)