ロシア経済が混乱し、ドルに対するルーブルの価値が半分に切り下がりました。その要因は、ロシア政府とウクライナ領土問題にあるとしてもロシア国民にとっての生活苦、資産価値の下落は大変なものと思います。
今回のルーブルの下落は、原油価格の下落が直接的な要因となっています。ロシア経済が、資源の輸出に大きく依存していることが下落の引き金になっています。
しかし、だからと言って、ロシア国民の生活が急激に悪化してよいということにはなりません。
ウクライナ問題は、アメリカ、EUを中心とする国家が軍事的、経済的な対抗思想をロシア周辺国に広めたことにも1つの要因があります。同時に、だからと言って、ロシアがクリミア半島を併合することも許されることではありません。今回のウクライナ問題を軍事衝突にせずに、ウクライナ、国連、ロシア、EU、アメリカが話し合い、解決策を見つけ出すことが必要です。そのこと無くして経済封鎖、通貨の暴落を放置すれば、第二次大戦勃発と同じような歴史の悲劇を繰り返してはならないことと思います。第一次大戦によるドイツへの過大な賠償責任、ドイツ経済の破綻がヒトラーの台頭、排外主義復活、軍事独裁政権の台頭、関係国が戦争に入る政治経済状況を再現してはなりません。
ロシアが核兵器を所有する大国かどうかではなく、あらゆる紛争を話し合いで解決し、紛争を軍事衝突に発展させてはならないことは自明のことです。
<日経記事>
ロシアは、最悪の通貨危機に苦しんでいる。危機は国内の経済、政治システム、対外関係に深刻な影響を与えている。新興国通貨の暴落の水準からみても、今週のルーブルの下落ぶりは極端だ。数日、いや数時間前までは考えられなかったような史上最安値まで落ち込んだ。
引き金となったのは、ロシアの主要な輸出産品である原油の値下がりで、さらにプーチン大統領のウクライナへの軍事介入に対する欧米の制裁が事態を悪化させた。一方、ルーブルの落ち込みの深さは金融市場で高まっている確信を反映してもいる。プーチン氏がもはや経済的な利益において国を統治しておらず、むしろ架空の地政学上の目標追求に躍起になっていると市場は考えている。昨日、同国の中央銀行は政策金利を大胆にも6.5%引き上げて17%にしたが、それでもルーブルを下支えできなかっただけでなく、単に混乱を深めただけのようだった。
通貨下落に歯止めをかけるためにロシア当局が即座に実行できる選択肢は、さらなる利上げか、中銀の外国為替市場への大規模な介入か、あるいは通貨統制しか残されていない。最初の2つの選択肢については、大きな代償を伴って失敗に終わることに気づかされるかもしれない。第3の選択肢はひどく不評で、1990年代のロシア通貨危機を乗り越えルーブルの信用を取り戻そうと賢明に努力してきた政府にとっては、むしろ事態を後退させるだけかもしれない。状況を一変させるには、何か他の手立てが必要だ。
■近代化のチャンスを逸してきたロシア
ロシア経済は、プーチン政権の下で、腐敗した国家資本主義と化してきた。ロシアは、国内経済の石油・ガスへの依存度を低下させることができたかもしれない近代化のチャンスを逸してきた。確かに、ロシアが世界に開かれた経済国家であることに変わりはないが、世界でのこの立ち位置の維持を不可能にしているものは、クリミア編入やウクライナ東部の分離派への軍事援助を通してプーチン氏が西側に対して引き起こした対決である。欧州の安全保障秩序を脅かすこのロシアの挑戦に対して、欧州連合(EU)と米国は制裁を科す他なかった。過去数週間の原油価格の急落によって、ロシアの痛みは今や増している。ロシア経済は、欧米の経済制裁国がそこまでには何年もかかるだろうと予想していた地点に、最終的には行き着くにせよ、突然到達してしまったのだ。
そのため、プーチン氏は厳しい戦略選択を迫られている。ウクライナ東部への侵攻を覆すことも可能だった。仮に同氏が9月に自分が調停の手助けをした停戦合意を完全に順守するのであれば、西側はロシアの銀行やエネルギー関連企業への制裁を解除するだろう。さらに、原油安の悪影響は残るにしても、経済制裁の段階的緩和は、徐々にではあるものの市場の信頼を回復させるだろう。さもなければ、今後も現行の戦略を続けるという選択肢だ。仮にプーチン氏がこれを選択すれば、ロシアはますます抑圧的で孤立主義を深めた戦時経済に陥るだろう。そうなれば、短期的な国民の支持を取り付けるような軍事的冒険の拡大に一層執着することになる。
■ウクライナ問題の緊張緩和を
今、西側に譲歩すれば、間違いなく国内の強硬派の国家主義者からの反発に遭うとプーチン氏は確信している。とはいえ、現行の戦略にこだわれば、もっと大きなリスクを招く。自国通貨を安定させることができなければ、物価上昇とこれまで以上に深刻な景気後退に陥る。そして、同氏の人気を支えてきた国内の生活水準の向上は逆行するだろう。資本統制に踏み出せば、同政権をこれまで下支えしてきた、まさに国内新興財閥を遠ざけることになる。
西側は、プーチン大統領に第1の選択肢をとるよう促すためにできることを行うべきだ。ウクライナ問題の段階的緊張緩和はロシア経済に対する国際的圧力を和らげるということを同氏に確信させる必要がある。希望的観測では、プーチン氏は今からでも方向転換したい気持ちになっているに違いない。怖いのは、深まる経済危機への対応として、同氏がこれまでになくもっと危険なレベルまで報復主義をエスカレートさせることだ。