“さるかに合戦”  臼蔵 と 蜂助・栗坊 の呟き

震災や原発の情報が少なくなりつつあることを感じながら被災地東北から自分達が思っていることを発信していきます。

日本の製造技術と価値

2014年12月23日 12時30分50秒 | 臼蔵の呟き

日本人の技術者が、隣国などで産業技術の発展に寄与することができるとしたら、すばらしいことです。先進工業国が大量生産、大量消費型産業で経済的な発展を促進し、その利益を労働条件の切り下げによって確保してきたことは紛れもない事実です。そのために日本では、労働運動の機関車的な役割を果たした、国労、動労、教職員組合などの組合を分断し、労働運動の弱体化を促進しました。その流れが連合に引き継がれ、労働組合に依存した社会党が分裂、衰退しました。そのこともこの20年間くらいの流れを見ると非常によく分かる歴史的な事実です。

大手企業は、大量生産、大量消費型産業を維持しようとして、国内から海外に生産拠点を移転してきました。その最大の理由は、相対的に高い日本人労働者の賃金を嫌い、新興国、輸出国周辺で生産することで政治的な摩擦を抑え、かつ、人件費の抑制を図りました。その結果、日本国内で蓄積された技術、熟練労働が保存されないという深刻な問題が発生しています。

政治経済のグローバル化を進めながら一国の中に産業技術を閉じ込め、その国には必要がないから保存しない、活用しないとの言い訳と主張は、ある意味で手前勝手な言い分としかなりません。新興国などで産業技術が必要とされ、そのことが中小零細企業の経営、発展に役立つのであれば、大いに活用したらよいと思います。そのことが、技術者、熟練労働者にとっても幸せなことと思います。

<韓国:中央日報報道記事>

「日本の退職技術者が必要な韓国中小企業に支援増やす」

李鍾允(イ・ジョンユン)韓日産業技術協力財団専務は「韓国国内の中小企業が日本で退職した技術者からノウハウを受け、工程を効率化し、コストを減らすことができる」とし「日本の退職技術者を招請するのに必要な中小企業の費用負担を減らすことを模索している」と述べた。

韓日産業技術協力財団は2008年から、韓国の中小企業が必要とする日本の優秀退職技術者を発掘・斡旋し、技術の指導にかかる費用の一部を支援する事業をしている。韓日財団は現在、日本の退職技術者450人余りを確保している。今年まで中小企業284社に技術者を派遣し、技術の指導を行った。

李専務は「金型製作、熱処理などの技術では工程と技法の差が不良率などを決めるため、企業の利益と直結する問題」と強調した。日本は相対的に産業化の歴史が長く、一つの分野で長期間働いた熟練技術者が多く、誤差を減らす技術改善方法などが蓄積されているということだ。

李専務は「今までは主に東京・大阪地域を中心に退職技術者を発掘したが、来年はトヨタ自動車がある名古屋地域に拡大する計画」と明らかにした。


安倍の経済政策とトリクルダウン

2014年12月23日 11時08分11秒 | 臼蔵の呟き

総選挙の争点と歌い上げた、安倍経済政策が政策と呼べるほどのものであるかどうかは別にして、「この道しかない」と叫んで、安倍、自民党政権が小選挙区制度を利用して小選挙区で議席を掠め取りました。したがって、何回も何回も彼らが宣伝する経済政策なるものが中小零細企業、多くの低所得者に経済的な恩恵をもたらすのかーーー経済学者としても論じ、その本質は何かを明らかにする必要があります。

貧者である圧倒的多くの国民、99%の国民は安倍の経済政策が恩恵をもたらすか。そのことは検証する必要があります。この2年間の安倍・自民党政権が行った経済政策は、大まかに言って消費税率の引き上げ=法人税率の引き下げ、社会保障制度改悪、日銀を使っての国債の金融機関からの買取・資金の市中への供給、株式相場への資金誘導と株式相場の高騰、円安の誘導で80円から120円への円安、そのことによる原油高と電気料金の一斉値上げ、―――これらの政策のどこに多くの国民を豊かにし、恩恵をもたらすものがあったのでしょうか。時々、中小零細企業経営者が、地方は疲弊し、自民党の経済政策の恩恵が今後及んでくると応える姿がテレビなどで報道されます。しかし、論理的に言って、このような経済政策で地方、中小零細企業、低所得者に恩恵がくるはずがありません。

トリクルダウンなるものは詐術であり、多くの国民をだますデマ宣伝でしかありません。

<毎日新聞 危機の真相> 「くだりと のぼりと さかのぼり」トリクルはいずこに? 浜矩子教授 

 17日付毎日新聞の「水説」欄に「逆トリクルダウン効果」という言葉が登場していた(「はっとするニュース」中村秀明論説副委員長)。

 この言葉が目に入ったとたんに、それこそ、はっとした。なぜなら、この論考を読む2日ほど前に、筆者は「トリクルアップの経済学」というフレーズを思いついていたからだ。かくして、偉大な頭脳は同じことを考える……。

 おっと、いけない。このような不遜な言い方が頭をよぎるとは、不届き千万。消去!

 反省は反省として、やっぱり心強い。ベテラン・ジャーナリストの発想と、同じ軌道上で我が思いも展開していたのであるから、勇気が出る。

 もっとも、よく読むと中村さんの「逆トリクルダウン効果」と筆者の「トリクルアップの経済学」は、少々違う。

 中村さんは、経済協力開発機構(OECD)が発表した「所得格差と経済成長」に関する報告書に着目している。この報告書の中で、弱者救済のための財源を金持ち増税に求めている点を高く評価されて中村さんいわく、「確かに成長の果実はいずれ金持ち層にも及び、持ち出す一方ではない。課税強化も成長の妨げにはならないのだ。貧しい層への配慮が富裕層にも見返りとなってもたらされる『逆トリクルダウン』効果である」。

 全くご指摘の通りだ。実によく分かる。異論はない。だが、この同じ感覚を筆者は逆の観点から抱いていた。エコノミストにあるまじき寡聞にして、筆者は上記のOECD報告を見逃していた。これから読む。筆者が「トリクルアップの経済学」を思いついたのは、貧乏人をないがしろにしていると、やがてそのツケが金持ちにも回っていくぞ、という感覚からだった。

 ごく最近、最新の日銀企業短期経済観測調査(短観)の結果が発表された。その中で、大手製造業の景況感も悪化しているという結果が示されていた。それをみて筆者は、これがトリクルアップの経済学ではないかと思った。

 大手製造業の景況感悪化には、グローバル経済の雲行き等々、さまざまな要因がある。したがって、短絡的な結び付け方はできない。だが、それにしても、あまり弱い者いじめばかりしていると、巡り巡って強き者にも、その先細り効果がジワジワと及んでいく。そういうことがあるのではないか。そのように考えた。

 プラス効果の逆トリクルダウンに着目するのか。マイナス効果のトリクルアップを問題視するのか。この辺には、性格の違いが影響しているだろうと思う。明らかに、筆者の発想の方はクソ意地が悪い。弱い者いじめには天罰が下るぞ。そんな具合に脅しにかかっている。中村さんは、弱者に優しくすると、強者にも恩恵がありますよと言っている。こっちの方が素直な感じだ。

 性格の悪さは致し方ない。だが、マイナス効果のトリクルアップはやっぱり重大問題だと思う。一将功成って万骨枯ることは、許し難いことだ。だが、実をいえば、万骨枯れてしまえば、結局のところ、一将もまた功成り難しだ。

 底辺の弱さは、ジワジワとてっぺんの方にも浸透してゆく。足腰をないがしろにする経済は、足腰の弱さによって滅びる。いかほど大きな者といえども、小さき者たちの支えと需要が無ければ生きていけない。土台のもろさは、着実に頂上にトリクルアップする。ところが、頂上のにぎわいが土台までトリクルダウンする保証はどこにもない。

 ここで、またまた、聖書の一節が頭に浮かぶ。ある金持ちと貧乏人の物語(ルカによる福音書16・19〜31)だ。貧乏人の名はラザロ。金持ちの門前で野たれ死にする。そして彼は天国へ。金持ちは、地上でぜいたくざんまいの暮らしを謳歌(おうか)する。そして彼は地獄行き。

 貧乏人のラザロは、天国でユダヤ人の始祖、アブラハムの懐に抱かれている。至福の時だ。その姿を、地獄からみた金持ちが叫ぶ。「父アブラハムよ、どうか、ラザロをつかわして、その指先を水に浸し、私の舌を冷やさせてください。私は炎の中でもだえ苦しんでおります」。だが、時既に遅し。彼我の間には越え難きふちがある。

 このシンプルな例え話の中に、何がどうトリクルするかしないかについて、実に多くのことが語られている。まず、トリクルダウンはまやかしだということが分かる。金持ちは、いくらより金持ちになっても、門前の哀れなラザロに見向きもしない。体中、でき物だらけになって死んでゆく彼を見殺しにする。

 トリクルアップの経済学の怖さを知らない金持ちには、天罰が下る。それも、この物語の中で示されている。

 逆トリクルダウン効果については、微妙だ。地獄の金持ちはアブラハムに懇願する。どうか、自分の兄弟たちが自分の二の舞いを演じないよう、警告を発してくれとお願いする。すると、アブラハムいわく、「彼らにはモーゼと預言者たちがいる。その言うことを聞けばよい」。賢者のいましめに、よく耳を傾けろということだ。要は、「水説」をよく読めというわけだ。

 ■人物略歴 ◇はま・のりこ   同志社大教授。


ルーブルの暴落と懸念

2014年12月23日 05時40分00秒 | 臼蔵の呟き

<毎日新聞社説>新興国市場 世界経済に新たな懸念

 新興国の経済が揺れている。通貨が急落し、株価も軒並み下落、景気の悪化や債務の返済が困難になる事態も懸念され始めた。長期化、深刻化すれば、日本も含め世界経済全体に影響が及びかねない。

 中でも通貨の下落ぶりが際立つのはロシアだ。中央銀行が深夜に大幅な緊急利上げを発表するなど異例の措置をとったものの、動揺は収まるどころかルーブルの対ドルレートは一気に史上最安値を更新した。

 だが、不安定化しているのはロシア経済だけではない。

 ルーブル危機の発端の一つは、半年で約半値となった原油価格の急落だ。国家の財政をエネルギー収入に依存する他の新興国でも、通貨や株価の下落が深刻になっている。南米の産油国で輸出のほとんどを原油が占めるベネズエラでは、債務不履行の懸念が高まった。

 原油は現在、1バレル=60ドル近辺で取引されているが、石油輸出国機構(OPEC)からは、40ドルを下回っても減産しないとの強気の声も聞かれ、一段と値下がりする可能性も否定できない。原油安は日本などエネルギー輸入国にとって朗報とはいえ、歯止めなき急落には、金融危機の引き金となるリスクが潜む。

 一方、ルーブル発の市場の動揺は、産油国以外にも飛び火しつつあり、警戒が必要だ。トルコやインド、南アフリカ、インドネシアなど、石油の純輸入国でも、通貨安や株価の下落が急速に進んでいる。

 影響を及ぼしているのは、先進国の大規模金融緩和で世界にあふれ出た大量の投機マネーだ。高い利回りを求めて新興国に流入し、株高や好景気を演出したが、米国の金融政策の転換で流れを変えた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和政策を手じまいし、来年は複数回、利上げを実施する構えだ。自国の経済に必要な措置とはいえ、新興国市場などの混乱に拍車をかけるようなことになれば、難しいかじ取りを迫られそうだ。

 アジア諸国やロシアを襲った1997〜98年の通貨危機の再来を懸念する声が少なくない。当時との類似点、相違点、それぞれあるが、重大な違いとして、各国の政策対応の余地が乏しくなっていることが挙げられよう。特に日本は、先進国一の借金を抱え、中央銀行が、発行額とほぼ並ぶ国債を購入している。危機に対応しようにも、大規模な対策にはインフレなど大きなリスクが伴う。

 「今、起こっていることは、最悪の夢の中でさえ想像しえなかったものだ」。ロシア中銀のセルゲイ・シベツォフ副総裁がルーブル暴落を受け語った。日本にとっても重く響く言葉である。

<アジア通貨危機>

アジア通貨危機は、1997年にタイを震源として、インドネシアや韓国などのアジア諸国に波及して起こった深刻な金融危機をいう。その発端は、1997年7月2日に投機的なバーツ売りの圧力に屈したタイが固定相場制を放棄し、これを契機にインドネシアや韓国などアジア諸国へ危機が飛び火し、急激な資本流出と通貨暴落が発生した。具体的には、アジアの多くの国が自国通貨の大幅な下落圧力にさらされた結果、事実上の対米ドルの固定相場制の放棄を余儀なくされ、為替レートが急激に下落すると共に、経済が危機的状況となった。

1990年代は、アジア経済の良好なファンダメンタルズへの楽観的な機運が広がり、先進国から資金流入がアジア諸国へ拡大していた。また、アジア諸国の多くが事実上の固定相場制を採用しており、為替変動リスクが過小評価される傾向にあった。そういった状況の中、アジア諸国は資本規制の自由化を進め、国内の長期の設備投資資金を海外からの資金調達で賄う一方で、その多くは短期のドル建て債務であり、期間と為替の両方でミスマッチが発生していた。さらに、1995年以降のドル高はドルペッグ制下のアジア通貨を実効レートで割高とし、また多くの国の経常収支は赤字基調で推移していた。

このようなミスマッチや問題に対して、欧米のヘッジファンドなどの投機筋が着目し、投機の対象として通貨の空売りが仕掛けられ、1997年後半から1998年にかけ、タイバーツ売りに端を発したアジア通貨危機が発生した。これは、それまでに途上国や新興国が経験した危機の中では最大級のものであり、アジア域内から資本が大規模に流出し、深刻な経済危機を発生させることになった。また、この危機に対する政策が適格さを欠いたことも事態を悪化させることになった。

当初、アジア通貨危機を終息させる上で、国際通貨基金(IMF)は、タイに続き、インドネシアや韓国に対して支援策を実施したが、高金利・緊縮財政を基本とする構造調整プログラムでは、急激な資本流出により外貨準備が不足し、短期的な国際流動性が枯渇する危機を収拾することはできなかった。最終的には、IMF世界銀行アジア開発銀行などの国際機関の協調融資により終息に向かっていったが、この危機を契機にIMFを補完する地域金融協力体制の必要性が認識され、後にチェンマイ・イニシアティブが構築された。