戦争法案の今国会成立に突き進む安倍自公政権与党への抗議が各地で続いている。会期末まで2カ月余り、法案の成立を阻止するには国会での追及とともに世論の力が必要だ。声を上げ続けたい。
「安倍晋三首相は「理解を得る努力を続けたい」と繰り返すばかりで、国民の疑問や不安を受け止めようとしない。」
「多くの憲法学者が「違憲」と指摘しても合憲だと突っぱねる。世論調査で反対が多数を占めるのに採決を強行する。強引なやり方に批判が高まるのは当然だ。」
<信濃毎日社説>安保への抗議 声を上げ続けてこそ
安全保障関連法案の今国会成立に突き進む政府与党への抗議が各地で続いている。会期末まで2カ月余り、法案の成立を阻止するには国会での追及とともに世論の力が必要だ。声を上げ続けたい。
衆院の特別委員会で可決された一昨日、国会近くには抗議する人たちが詰め掛けた。参加団体によると入れ替わりを含め10万人、周辺の歩道で身動きが取れないほどの規模になったという。衆院通過のきのうも国会前で抗議集会が開かれている。
「憲法違反だ」「十分に審議したと言うが、ただ時間を稼いだだけ」「国民の声を聴かずに強行採決するのは許せない」。憤りや怒りはもっともだ。
安倍晋三首相は「理解を得る努力を続けたい」と繰り返すばかりで、国民の疑問や不安を受け止めようとしない。
多くの憲法学者が「違憲」と指摘しても合憲だと突っぱねる。世論調査で反対が多数を占めるのに採決を強行する。強引なやり方に批判が高まるのは当然だ。
法案に反対する集会を毎週金曜夜に国会前で開いているSEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)など若者の取り組みが目を引く。「だれの子どもも、ころさせない」を合言葉に母親たちのグループも発足した。心強い動きだ。
長野県内でも、各地の九条の会や「戦争をさせない1000人委員会」など、さまざまな取り組みが続けられている。信州大学の教員らは法案の撤回を求めて会を発足させる。それぞれのやり方で意思表示したい。
「日米安保条約改定や国連平和維持活動(PKO)協力法成立時にも国民の反対が強かった」。首相や与党議員から、開き直りの発言も出ている。国民を見くびった態度をこのまま続けさせるわけにはいかない。
日本を取り巻く安保環境は確かに変化している。中国の海洋進出や北朝鮮の核・ミサイル開発への対処は考えなければならない。問題は日本をどう守るかだ。それがなぜ、集団的自衛権の行使容認や他国軍支援の拡大なのか。政府から納得のいく説明はない。
安保政策は国民にとってなじみが薄い。今度の法案は多くの人が目を向けるきっかけになったのではないか。政府にブレーキをかけるには安保政策について社会全体で理解を深めることも大事だ。世論の盛り上がりを国民的な議論につなげられるといい。