明治大正時代に採炭で旧財閥企業は莫大な利益を上げました。国策による廃坑で、産炭地は過疎化、自治体機能の弱体化に見舞われました。夕張もその1つでした。
自治体が財政破たんしたことはその要因を明確にしたうえで、再発させない。しかし、地域住民が住むことができないような返済と財政再建計画は修正しなければなりません。
<北海道新聞社説>夕張破たん10年 希望の持てる将来像を
過去に目を閉ざしては未来を見いだせない。しかし、過去にとらわれてばかりいては、将来像は描ききれない。
財政破綻の表明から10年。全国唯一の財政再生団体、夕張市はそんな苦悩の中にある。
国への借金は計画通り減らし続けている。だが、図書館、美術館は閉鎖、小中学校はそれぞれ1校に統合された。「負の歴史」によって、教育環境の低下が進み、子育てをしにくくしている。再建への取り組みを検証してきた市の第三者委員会が4日、報告書を提出した。
借金返済最優先の財政再生計画を全面的に見直し、子育て支援の充実や定住促進を図るよう提言。地域再生との調和を求めている。大切なのは住民が夕張の将来に希望を持てるようにすることだ。鈴木直道市長はきょう、総務相に再生計画の見直しを求める。国も夕張の願いを受け止めてほしい。
夕張市は2006年、約350億円の借金を抱え破綻した。市税や地方交付税など市の実体的な年間収入の8倍もの金額だった。
財政が国の管理下にある中、市は経費削減を徹底して借金の返済に努め、再生計画を進めてきた。06年4月に260人だった市職員は104人に削減し、給料の大幅カットにも踏み込んだ。
市民には「最高の負担、最低の行政サービス」を強いる。市民税、軽自動車税は標準より高く、下水道使用料は66%も値上げした。
これまでに約95億円の赤字を解消したが、計画ではさらに26年度まで10年以上、毎年約26億円の返済を続けなくてはならない。
人口は破綻当時の1万3千人から8千人台にまで減っている。
借金を返すのは当然だ。だが、返済に追われてまちが崩壊しては元も子もない。
全国の自治体は、子どもの医療費を無料とする年齢を引き上げるなど、若者の定住に知恵を競う。
夕張市が借金返済一辺倒では、その流れから取り残される。必要な施策を行えるよう自治体としての裁量権がほしい。
市は策定中の地方版総合戦略の柱の一つに、子育て世帯らへの住宅対策を据えた。炭層メタンガスを活用した新エネルギー開発も目指す。
財源として国、道の支援を求めるとともに、産炭地時代に縁のあった会社などから、企業版ふるさと納税にも期待をかける。
国も新たな枠組みで夕張の将来像を考えてはどうか。