「政府は新年度から、ふるさと納税の企業版を導入する予定だ。個人が返礼品を選ぶように、公共工事の受注や物品調達、許認可などを当て込む企業と自治体の癒着を招く恐れはないか。透明性の確保を含め慎重な対応を求めたい。」
首都圏以外が、人口減少、経済的な低迷の中で、自治体の財政が悪化、減少する中で、ふるさと納税が奨励され進んだ結果起きている問題です。そもそも、人口減少と過疎化対策が打たれな中で、税収全体は同じだとして、その税収をふるさと納税で取り合えば、このようなことが起こることは想定範囲であったはずです。問題の根本を正さずに、小手先の対応を繰り返す。愚かな政治には辟易します。
少子化と地方都市の人口減少を改善する政策を政治が先頭に立って行う。首都圏だけが反映する政策を止めなければなりません。非正規労働を野放しにせずに、正規労働を基本として労働法制を立て直す。中小零細企業への財政支援策を強化する、そのうえで最低賃金を1000円以上にする。環境、再生可能エネルギーなど新分野の事業を育成し、新産業を育成する。地方交通の切り捨てを止める、赤字の公共交通事業を財政的に支援する。義務教育の小中、保育などの教育施設を減らさず、地方都市で生活できる環境を充実させる。地方都市で安心して生活できる住環境、労働環境ができれば、過疎化も改善され、財政上の問題も緩和されます。
そのうえで、地方自治体が財政上の問題に遭遇しない、税制度を再度検討し、実施させることこそが正道です。
<東京新聞社説>ふるさと納税 特典競争はやめたい
郷里や応援したい自治体に寄付する「ふるさと納税」の特典競争が過熱している。本来見返りを求めない寄付が、返礼品目当ての買い物になっては本末転倒だ。自治体には良識ある対応を求めたい。
ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」によると、二〇一五年にふるさと納税が最も多かったのは宮崎県都城市の三十五億二千七百万円。一四年のトップ、長崎県平戸市の二・八倍に達した。二位は静岡県焼津市の三十四億九千二百万円だった。
都城市は特産の宮崎牛と焼酎を中心とした特典、焼津市はマグロをはじめ五百種以上の品ぞろえが人気を呼んだ。年間の住民税を上回る自治体も増えているという。
制度は2008年に導入された。寄付者は居住地の住民税などが控除される。カード決済の普及もあって、寄付額はうなぎ上り。一五年度から控除限度額が二倍となり、各自治体の競争に拍車が掛かる。
返礼は特産品のカタログギフトまでなら許容範囲だ。富山県氷見市が始める、寄付者が持つ空き家の管理サービスなどはユニークな“品”として評価できる。
しかし「一千万円の寄付で七百五十万円の土地」「三百万円で肉牛一頭」など、豪華さを競う例が増えた。プリペイドカードなど換金性の高いものも登場した。
ここまでくると、故郷への恩返しやまちづくりの応援という制度本来の趣旨から逸脱する。見かねた総務省が、節度を持った対応を求める通知を出したほどだ。
返礼品のなかった静岡市は昨年十二月から、金沢市は今年四月から返礼組に。「寄付は無償行為」との立場だが、寄付金の“出超”が続き、背に腹は代えられないようだ。
このように、自治体間で税金を食い合っている。政府は競争をあおるだけでなく、財政格差の是正も考えなければならない。
ふるさと納税は、使い道が指定できる唯一の税でもある。特典で誘うだけでなく、魅力ある政策で競い合ってほしい。「寄付してみよう」という動機づけから「行ってみよう」へ。旅行者に体験を提供することで「住んでみよう」と思うかもしれない。こうしたビジョンを描いてほしい。
政府は新年度から、ふるさと納税の企業版を導入する予定だ。個人が返礼品を選ぶように、公共工事の受注や物品調達、許認可などを当て込む企業と自治体の癒着を招く恐れはないか。透明性の確保を含め慎重な対応を求めたい。