「市場の催促を受け、各国が金融緩和を繰り返すのは不健全と言わざるを得ない。こうした状況に歯止めをかける必要がある。」
デフレ経済の要因が、何かを事実に即して、分析し、長期的に考えた経済対策を講じない限り、対処療法的な対策に終始する限りは、問題は解決しません。市中への異常な資金供給、為替変動による通貨引き下げ競争、異常なマイナス金利などでデフレ、景気低迷と経済構造の改善、転換をすることは不可能です。2012年から2016年3月までの自民党経済政策と日銀による金融政策で立証されています。
国民の貧富の格差拡大と貧困化が極端に深刻化している政治経済構造を転換しない限り、デフレ、経済低迷は改善することがないことは自明のことです。――安倍、自公政権が大手企業の収益が改善すれば、中小零細企業、労働者にその収益が順次、回るとする説明を行っています。しかし、現在の新自由主義政治経済を信奉する先進工業国――アメリカ、日本、イギリス、EUなど経済の低迷、デフレ経済に直面していることがそのことを証明しています。
大量生産、大量消費型経済がもつ浪費構造と限界が明らかとなっています。大企業、多国籍企業、巨大金融機関中心と優先の経済構造も見直す必要があります。問題なのは市場と企業に資金が不足しているからではなく、経済構造が変化していることを無視して、成長至上主義に基づく金融緩和、投資強要などは、問題を一層複雑にするだけです。
環境保護、再生可能なエネルギー構造、食料の確保を世界が目指すこと。一人一人の国民が、安心して暮らせる収入と労働環境を作り、貧困の解消を目指すこと。これらを国が政策として整合性をもって優先順位を決めて実行することです。
<北海道新聞社説>ECB追加緩和 通貨安競争招きかねぬ
欧州中央銀行(ECB)は包括的な追加金融緩和策を決めた。
金融機関がECBに余剰資金を預ける際に手数料を課すマイナス金利を0.3%から0.4%に拡大するとともに、国債などの資産を買って市場に資金を供給する量的緩和を強化するのが柱だ。
月間の資産購入規模を600億ユーロ(約7兆5千億円)から800億ユーロに増額する。マイナス金利の拡大は昨年12月以来で、銀行に貸し出しや投資を促す。
2月のユーロ圏の消費者物価は前年同月比で0・2%低下し、2%弱の上昇目標にはほど遠い。
予想を上回る規模の追加緩和は、このままではデフレに陥るというドラギECB総裁の強い危機感の表れと言える。
しかし、ECBがこれまでに実施した緩和策に期待されたほどの効果があったか疑わしい。
追加緩和によってユーロ安になれば、他の中央銀行も追随して通貨安競争を招く恐れもある。
むしろ副作用を警戒し、金融緩和頼みの経済運営から脱する道を探るべきだ。
ECBは2014年6月にマイナス金利を採用し、昨年3月からは量的緩和にも踏み切ったが、物価を押し上げる効果を発揮したとは言い難い。
今回、16年のユーロ圏の物価上昇率の見通しは1.0%から0.1%に大きく下方修正された。このところ銀行の融資はある程度伸びているものの、経済成長率は低水準で推移している。逆に、マイナス金利は金融機関の収益を圧迫し、南欧の銀行を中心とした不良債権処理の重荷になりかねない。
緩和マネーの流入により、不動産市場の過熱といったバブルの懸念も指摘されている。
欧州では非ユーロ圏のデンマーク、スイス、スウェーデンもマイナス金利を採用している。ユーロ圏との関係が深いこれらの国は、ユーロ安が進めば、対抗して金利引き下げを迫られるだろう。
こうした動きが広がれば、20カ国・地域(G20)による通貨安競争回避の合意にも反する。
ECBは昨年末の緩和策が市場の失望を招いたため、今回、政策の総動員を余儀なくされた形だ。日銀も年明け以降の金融市場の混乱を受け、マイナス金利の導入に踏み切った。
市場の催促を受け、各国が金融緩和を繰り返すのは不健全と言わざるを得ない。こうした状況に歯止めをかける必要がある。