「変わらぬ消極的な情報開示について、アナリストは「第三者委員会はきちんと調査したのか、もう不正はないのかと疑ってしまい、投資家からも不安を招きかねない」。
東芝の不正会計、情報操作は深刻な問題です。しかし、最も深刻な問題は、会長、社長など企業トップが、利益を出すために不正会計処理を知りながら隠蔽したこと。その目的は、自らが立案し指揮した年度計画が、非現実的で、非科学的な事業計画であるという点です。今回の発表を見ても、東芝の不正経理処理の最大要因であった、アメリカ原子力企業の損失処理を予測しながら、今後の東芝の事業の中心的事業に原子力事業を位置づけるという常識では考えられない再建計画である点です。
そもそも再建計画のために3万4千人の労働者を東芝から退職、外部企業に移籍しながら、その経営方針の間違いと赤字損益の犠牲を経営危機に責任がない労働者に転嫁するという破廉恥さ、傲慢さは驚きです。これは東芝経営陣の経営倫理のなさと、今後の再建計画の有効性に疑問を提起するでしょう。そもそも、福島第一原発で東北地方、日本がこれだけ大きな被害と惨禍を受けていることを知りながらーーー自社だけは別だとーーー中心的事業に位置付けるという経営感覚は???この企業幹部の経営意識と長期的な日本と地球環境の推移に関する意識の乖離には恐れ入ります。
<東京新聞>事業計画 東芝、原発頼みの再建 3万4千人削減 4部門に絞り込み
経営再建中の東芝は十八日、看板の白物家電事業などを売却し、事業部門を現在の七部門から四部門に絞り込む計画を発表した。従業員数は三万四千人削減し、二〇一七年三月末には十八万三千人にする。今後は原発と半導体を事業の中核とするが、さらなる損失処理や不正会計により罰金などが科される可能性があり、再建への道のりは厳しい。
室町正志社長は記者会見で、自社の成長の原動力だった白物家電事業の売却について「じくじたる思いだ」と語った。白物家電のほか医療機器子会社も売却。一七年三月期の連結売上高は不正会計発覚前の15年三月期と比べ約一兆七千億円減の四兆九千億円とし、事業規模を大きく縮小させる。合理化のため17年四月に入社予定の新卒採用は見送る。
パソコン事業も富士通やVAIOを念頭に他社との統合を模索。絞り込む四部門の中でも、原子力に「最注力」する電力事業と、ビルの空調や鉄道敷設などのインフラ事業、半導体などデータ記憶装置の三部門に力を入れる。特にスマホなどに使う最新の記憶用半導体のフラッシュメモリーには巨額の投資を行う。残る一部門は企業向けITサービスで、各部門と連携しながら収益拡大を目指す。
原発の新設などを織り込み、純損益は一六年三月期に見込む七千百億円の巨額赤字から、一七年三月期は四百億円の黒字転換を目指す。
しかし、原子力を担う米国の子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)をめぐっては、東京電力福島第一原発の事故を受けて収益性が悪化。早ければ一六年三月期の決算で、WHの価値を引き下げて損失を計上する可能性がある。さらに米国では、WHの過去の会計処理について司法省と証券取引委員会(SEC)が調査を開始。何らかの違反が確定すれば、罰金などを科される可能性がある。
◆サザエさんCMは継続
東芝の室町正志社長は十八日の記者会見で、国民的アニメ「サザエさん」へのCMの提供を続ける意向を明らかにした。白物家電のCMは取りやめる見通しだが、「東芝全体のイメージ戦略にご理解を賜りたい」として、不正会計問題で失った信頼の回復を図る場としても活用する考えだ。
◆情報隠しのリスク抱え 米WH社処分の可能性
東芝は大幅なリストラを決定し、経営再建に本腰を入れる。しかし、米国の複数の子会社が米当局から調査を受けていることも判明。情報開示に消極的な姿勢も続く。今後、経営体質を変えていくことができるのか、懸念を抱えながらの再出発となる。
「原子力へ最注力する」。室町正志社長は十八日の記者会見で強気の姿勢を改めなかった。しかし、東芝のエネルギー事業で中核を担う米原発子会社のウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を取り巻く状況は不透明だ。
この日、東芝は会見に先立ち、WHを含む複数の米子会社が昨年末以降、米国の司法省や証券取引委員会から不正会計問題に関する情報提供を求められていることを発表。金融庁からの命令による課徴金に加え、米国で子会社が処分を受ける可能性が出ている。
室町社長は会見で「具体的な疑いがあるかは分からない」とした。しかし、東芝がWHを買収した時に見込んだ通りにWHが利益を上げることができず、損失を生む可能性も浮上。「追加損失が出るとなれば数千億円規模になる」(アナリスト)との声もある。
情報開示の姿勢にも懸念が残る。WHは二〇一二~一三年度にも計約千百五十六億円の損失を出したが、東芝は昨年十一月、「検証した結果、連結では損失を計上する必要はない」と否定。東京証券取引所から同月に指摘を受けるまで損失を発表しなかった。
変わらぬ消極的な情報開示について、BNPパリバ証券の中空麻奈アナリストは「第三者委員会はきちんと調査したのか、もう不正はないのかと疑ってしまい、投資家からも不安を招きかねない」と話している。