
「橙色の軌道」
ノウゼンカズラの花を見つめる
跳ね返って来そうな橙色に引き込まれ遡り 落ち着いた優しい駅にたどりつく
無人駅のホーム
橙色の粉末ジュースを溶かさずに
含んだ味わいの汽車が来る
肌色に橙色のくすんだ車体
錆び付いたブレーキ音をかるく響かせ停車
降りてくる人 乗り込む人
遠い遠いところで見ているから
霞んでボヤけている
みんな一様に遠い駅行きの切符を心にしのばせてすれ違うから 互いの距離は遠ざかる
鋭い警笛が高らかにこだまして 青いストライプの汽車が出ていく
次に停車する遠い駅のホームに
カンナの橙色が朱色に萌えて
水に溶かした粉末ジュースの味わいを遠くへ遠くへ遠ざける
