「あぶ・らぶ」(高橋 鐵(てつ)著、昭和46年10月30日初版)を読んだ。
心理学者である、高橋鐵(1907~1971)が異常性愛についてまとめた書物の中の一冊だ。“あぶ・らぶ”とは“あぶのーまる・らぶ”のことだ。前半は、女性・男性に見る異常性愛について実例を挙げながら解説し、後半は主に著者に届いた相談に答える公開カウンセリング形式になっている。
ゲイ、レズビアン、サディスト、マゾヒスト、フェティシズム、ナルシズム、露出欲、隠蔽趣味、児童性愛、性愛緊縛、獣姦、視姦、排泄物狂崇、汚染症、淫斬症、ほりものマニア、アベック殺し、男根化粧‥等々等々。←紹介されている異常性愛を系統立てて紹介しようと思ったけど、どれがどの系統に入るのか分からなくなったので目につくものをそのまま羅列してみた。名称だけではよく分からないもの、今は呼び方が変わってるものもある。
性に関する俗称や隠語は時代によってコロコロ変わるようで、今までほとんど聞いたことのない単語もよく出てくる。コイツス、パンパン、ヨニ、トーハー、千鳥、ブルーセックス等々‥ 前後の文章を読めばなんとなく意味は分かる。自分より年齢の上の人なら知ってて当たり前な単語なんだろか?もしかして僕が知らないだけ??
単語だけでなく内容にも原稿が書かれた時代を感じることがある。カウンセリング編で、相談者が「戦時中、どこそこへ出征しており‥」というような記述が珍しくない。「戦地で女を強姦しろと上官に命令され、それを拒むと人目につく電信柱に全裸で縛られ‥それ以来露出欲が芽生えてしまった」とか、「戦後急激にエロ雑誌(もっと違う呼び方だったかも)が氾濫し‥」「近代的な女性が社会に進出し‥」みたいな感じで。
「戦前は、何か犯罪事件が起きると『犯人は探偵小説を読んでおり』という記事が‥」という文章もある。戦前は“探偵小説の殺人等の描写箇所を読んだ影響で事件を起こした”という関連づけられ方もしたようだ。関係づけられる対象はゲームやアニメに変わったが、今も昔も関連づけたがる人の思考パターンは変わらないようだ。
この数々のあぶのーまるらぶの中に「腹切願望」もちゃんと入っている。相談者の手紙には本人が描いた少年が切腹しハラワタを掴み出している絵も添えられている。
「終戦時、青年14人が割腹したという新聞報道を見て現場に駆け付けたが、遺体がそのまま放置されているはずもなく虚しくその現場を1日歩き回った。あの時切腹後の光景を目の当たりにしていれば‥、感激して追い腹を切って死ぬにせよ、本物の切腹死体に気持ち悪くなって腹切願望を捨て去るにせよ、自分の異常性愛にケリがつけられたものを‥」という内容に共感というか同情というか、とにかく他人ごとではないという気がした。
自分の祖父ぐらいの年代の人も若い頃に「自分は変態ではないか?このままでは異常性愛のせいで人生が破綻してしまうのではないか?」と気に病んでいたのだと知って親近感が湧いた。カウンセリング編で見られるような著者の「世間のほとんどの人は、一般的に異常だと思われるような面を何か持っているものだ。貴方のような人に合うパートナーは必ずどこかにいるし、異常性愛を昇華させて人生の役に立つようにすればいい。」という答えは当時の悩める人たちの気持ちをいくらか救っただろう。
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