草原の四季

椎名夕声の短歌ブログ

HPはhttps://shiinayuusei-1.jimdosite.com/

怒る歌

2014-12-24 14:39:52 | 和歌・短歌

イヌつけてブナもサクラもサンセウもやや劣る意とするあからさま(今野寿美)

この歌が収録されているのは、3年程前、著者60歳頃出版の第9歌集だそうだ。
「イヌ(犬)」は「イナ(非)」が転じたものとも言われ、犬柘植(イヌツゲ)などは、庭木にすると本柘植とは一味違う味わいがある。せっかくの著者の憤慨も、認識に誤りがあるともいえる。たぶん、僕と同じ愛犬家なのだろうと思うが、犬に育てられた赤ん坊の逸話その他、犬の地位は不動なので安心して欲しい。
ここで大切なのは、憤慨している著者の、生身の姿が見えて好感が持てるということだ。
なお、同じ歌集に、

をさなごがきちんと静止するすがた放射線量測らるるため

という歌があるように、最近の著者の作歌動機がほの見えてくる。



ハゼの顎を引きちぎるごとあのくちをこの指をもて千切ったろうか(椎名夕声。2010年発行の短歌人)

ちょっと問題作かなあ、と思い東京歌会に出してみたら、あからさまな批判が1個あっただけで、改作のヒントにはならなかった。その後半年以上未発表にしておいて、改作の道を探ったが、力及ばず諦めて短歌人例月歌稿に出したという、思い入れのある旧作だ。ネット上で、ある人のその月の目にとまった作品いくつかのなかに入れていただいた。



先日、武田鉄矢の母の伝記をTVで見た。
「こら、てつや。なんばしよっと!」という有名な言葉を残した人(故人)だ。ちなみに、その地方では、「おい」とか「ちょっと」と似た意味で「こら」と言うのが常だそうで、怒っている度合が標準語の「こら」より、かなり弱いらしい。たぶん、鉄矢はそれを承知で、むしろ利用して歌詞を脚色しているのだろう。
海援隊の最初のヒット曲の歌詞「働いて、働いて、日本の星となれ」というのは、かなりショッキングなものだが、その母の父(鉄矢の祖父)が家業をほったらかし、投機にのめり込んで失敗、一家離散となった事実が紹介された。
鉄矢がそのことを具体的に知ったのはこの伝記の試写が初めてだと語るが、事実としてそういう裏付けがあったことが、大ヒットの要因だろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする