醸楽庵だより

芭蕉の紀行文・俳句、その他文学、社会問題についての評論

醸楽庵だより  610号  白井一道

2018-01-01 13:42:24 | 日記

 古希を過ぎ喉に詰まりし雑煮かな  いちどう


句郎 今日は昨日に引き続いて「指揮権密約」について話したいんだ。
華女 朝鮮戦争と自衛隊成立とは深い関係があるのよね。
句郎 そうなんだ。1950年6月に北朝鮮軍が南朝鮮解放戦争をはじめると破竹の勢いで韓国軍を圧倒した。日本に駐留していた米陸軍が7月1日に参戦する。その結果、在日駐留米軍基地を防衛する軍隊がいなくなってしまった。その結果、駐留軍総司令官マッカーサーは7月8日、警察予備隊を創設し、在日米軍基地の防衛にあたらせたんだ。
華女 その警察予備隊が後々自衛隊になるのよね。
句郎 、そうなんだ。翌年の1951年の9月にサンフランシスコで開かれていた対日平和条約が調印されると10月、警察予備隊を改組して保安隊を発足させるんだ。もともと自衛隊は成立の出発からして日本国や日本の国民を守るための軍隊ではなかったんだ。
華女 自衛隊は日本国と日本国民を守るための軍隊ではなかったのね。
句郎 元陸上自衛隊幕僚長冨澤暉氏が講演会で述べていたよ。自衛隊は日本国や日本国民を守る軍隊ではないとね。
華女 では何を守っているのかしら。
句郎、富沢氏の主張によるとアメリカを中心とした世界秩序を守っているんだと述べていた。世界の秩序を守ることが日本の平和と国民を守るんだとね。
華女 昔、高校生の頃、学んだことがあるわ。「パックス・ローマーナ」の思想ね。
句郎 「ローマの平和」思想かな。強大な軍事力をもったローマ軍が地中海世界を支配した時にローマを中心にした世界秩序が成立し、地中海世界に平和が訪れたということだよね。
華女 核兵器で武装したアメリカ軍の存在が世界秩序を保つ。これが平和なんだということよね。
句郎 だから日本の自衛隊が日本国や日本国民を守ることを第一義的にはしていないが、アメリカ軍と一体となって世界秩序の形成に役立つことが日本の平和、日本国民の安全に寄与していくんだということのようだ。
華女 だからといって沖縄の農民の土地を奪い、そこに米軍基地を作るようなことは許せないわ。
句郎 1951年にサンフランシスコ平和条約が調印され、日本が独立国となると同時に旧安保条約を日本はアメリカと結んだんだ。
華女 日本は独立した以上、日本国内に駐留米軍がいるということはおかしいわ。
句郎 それが自然な感覚だよね。その真っ当な感覚が実現しなかった。駐留米軍は存在し続けることになった。
華女 朝鮮戦争の真っただ中だったからなのかしら。
句郎 朝鮮戦争にアメリカ軍は苦戦していたからね。日本の基地なしには戦争の続行は不可能だったからね。武器・弾薬・医療・食料の補給基地として日本を最大限利用した戦争だった。
華女 アメリカ軍は日本の基地があったから休戦協定が結べたのかしらね。
句郎 その後米軍は米軍基地拡張を日本各地で行った。その一つに東京立川の砂川基地拡張があった。土地を奪われる農民の反対運動が起こった。

醸楽庵だより  609号  白井一道

2018-01-01 13:42:24 | 日記

 古希を過ぎ何がめでたい今朝の春  いちどう


句郎 今日はちょっと難しい話をしない。
華女 どんな話なの?
句郎 2017年10月10日に「創元社」から出版された『「指揮権密約」の研究』という本を詠んだんだ。
華女 誰が書いた本なの。
句郎 、末浪靖司さんという方が書いた本なんだ。華女 何をしている人なのかしら。
句郎 もともとジャーナリストだった人のようなんだ。定年退職後、アメリカの国立公文書館に自費で通い、機密指定解除をされたアメリカ政府や軍部の公文書を大量にコピーさせてもらい、研究したものなんだ。
華女 年金生活者がよくそんなことをしたわね。
句郎 世の中には奇特なことをする人がいるもんだね。
華女 戦後日本に対するアメリカの政策を知りたいということにとりつかれた人だったのね。研究の結果、何が解明されたの。
句郎、そこが問題だよね。華女さん、今、日本の自衛隊は世界で何番目ぐらいの軍隊なのか知っている?
華女 そうね。自衛隊を日本政府は軍隊とは言っていないのよね。憲法上の制約があるからなのかしらね。でも実質的には軍隊になっているんでしょうね。だから世界的に見れば、それほど大きな軍隊ではないんじゃないかと思うわ。
句郎 ネットで調べてみると最高位がアメリカ、次いで中国、ロシア、日本になっているものから9位に位置付けているものがある。
華女 自衛隊って、凄いのね。世界有数の軍隊と言っていいんじゃないの。
句郎 その軍隊の最高指揮官は日本の自衛隊員ではなく、アメリカの軍人、太平洋軍総司令官が日本の自衛隊の最高指揮官になっているということを解明した。
華女 へぇー、そんなことってあるの。それじゃ、自衛隊は日本の軍隊ではなく、アメリカの傭兵隊のような存在なの。
句郎 末浪さんはこのご著書の中で「有事(戦争)になった場合に(中略)傭兵というようなことになってくる」と元自衛隊陸上自衛隊幕僚長杉田一次が(『日本の安全保障』日本安全保障・鹿島研究所1964)中で述べていると紹介している。
華女 安倍総理は日本の国と国民を守るとよく演説するわよね。あの演説はウソになるのじゃないのかしら。
句郎 そうだよね。日本国民の税金で賄われている自衛隊が日本国を守るのではなく、アメリカを守る軍隊なら、さっそく自衛隊を解散してほしいね。
華女 でもどうしてそんなことになってしまったのかしらね。日本には優秀な政治家がいなかったの。
句郎 それには終戦後、まだ日本が占領軍の施政権下にあった時代の1950年6月に朝鮮戦争が始まった。この朝鮮戦争が自衛隊をアメリカの傭兵隊のような存在にしてしまったといえるのではないかと、末浪さんの本を読んで思ったよ。
華女 朝鮮戦争は戦後日本社会に決定的に大きな影響を与えた戦争だったのね。
句郎 どうもそのようだ。朝鮮戦争の特需で日本経済が復興したという話を聞くけれども反対に大きなマイナスの影響もあったということなんだろう。