興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

恋愛が長続きしない人

2021-03-30 | 戯言(たわごと、ざれごと)

恋愛において、誰かと恋人としてお付き合いを始められる能力と、その恋愛を中長期的に深めて発展していける能力は別物であると以前このブログでお話しました。

「恋多き人生」と言えば響きが良いですが、恋愛が長続きしない、結婚願望があるのに恋愛が結婚に結びつかない、結婚しても離婚、再婚を繰り返している、という人生を送っている人達は、当事者にしか分からない生きづらさや葛藤、精神的苦痛を抱えて生きているものです。

例えば「恋の百戦錬磨」の人達というのは、ひとりの人と中長期的に恋愛関係や夫婦関係を維持する事のできない人たちでもあるからです。

カップルセラピーの世界的権威であるヘンドリックス氏が著書で書いておられた「結婚とは2人で花を育てるようなもの」というメタファーには共感します。さらに付け加えるならば、「正しく」花を育てる事だと思います。

私はエアプランツが好きで我が家にはかなりの数のエアプランツが棲息しておりますが、エアプランツを育てる事と恋愛や結婚生活はよく似ているとよく思います。

エアプランツのお話など興味がない方もいらっしゃると思いますが、ちょっとだけお付き合いくださいね。

エアプランツ は、もともと南米産の植物で、高温多湿の空気中の水分を葉から吸収して生きているので、土も根も必要ありませんが、気候が大きく異なる日本で育てる場合、名前に反して結構なコツや手間隙が掛かります。

私がエラプランツに興味を持ち始めた頃は、とにかくよく枯らしていました。しばらく試行錯誤をしていると、生き長らえる期間が伸びていきました。当時の自分にとっては、一年草をなるべく長持ちさせるような感覚でした。

しかしいろいろ調べたり試したりしているうちに、いくつかの個体から新芽が出始めました。

「衰えていくものをなるべく長持ちさせる」というメンタリティから、「発展、繁栄させる」へのパラダイムシフトでした。

今では枯れるものもなくなり、何年も元気に生きているエアプランツ 達でリビングが賑やかです。

恋愛やロマンスにも同じことが言えると思うのです。

ある種の人たちは、恋愛が中長期的に続いたり、発展、繁栄していくという感覚を持っていません。ある種の愛着障害が関与しているケースが多いですが、半年未満の恋を繰り返す人もいれば、1年は続く人、3年ぐらい続くのに入籍や事実婚、パートナーシップに結びつかない人、結婚しても数年しか持たずに離婚と再婚を繰り返す人など、様々です。

結婚生活とは、二人で花を育てること。

エアプランツ には実に様々な種類があり、個体差もあるので、まず、その手元の個体の性質について把握する必要があります。

まず水やりは絶対に必要ですが、問題はこの頻度とやり方です。

あげなさ過ぎてはもちろん枯れますが、実際に多い間違いは、むしろ水のやり過ぎだったり、水やり後の処理をしない事です。

エアプランツ は蒸れに弱く、葉の根本に水が溜まると湿度の高い夏場など蒸れやすく、蒸れて一度痛むとそこから一気にダメージが広がってダメになってしまいます。そういうわけで、水やりの後は逆さまに吊るしたり、扇風機などで空調を作ってやる必要があります。

日光が必要ですが、直射日光はダメで、直射日光の当たらない明るい場所が良いです。

もうひとつ、流木などなくても育ちますが、流木にくっつけて固定すると、根が生えてきて流木に着生し、より丈夫で元気になります。

こんな感じでエアプランツの育成は意外と手間ひまが掛かります。

恋愛関係も同じで、光も水もただ必要なだけでなく、頻度やタイミングや方法などの知識や配慮も必要です。

一度正式にお付き合いするようになるとなぜか水やりがずさんになる人もいれば、水はあげるけれど頻度やタイミングや方法についての知識や考慮が足りない人、水やりは正しく行っているけれど光や湿度などの視点を欠いている人は、どうしても恋愛が長続きしません。

愛情だけでは足りないんです。愛情をどう正しく表現していくか、表現し続けていくかです。

ここでもう一つの問題が出てきます。恐らく実は一番大きな問題ですが、エアプランツ を手に入れて、しばらくは正しく育てていたけれど、途中で興味を失ってしまった理、他に優先順位が出てきてお世話が疎かになってしまうというケースです。

愛着障害などのため、一人の人間という対象に精神エネルギーを注入し続ける事ができない人たちです。

そこまで極端ではなく、後者の、他に優先順位の高いものが出てきて、関係性の維持や発展への注力が弱まったり、潰えてしまうケースです。

こうした人たちは、必ずしも対象に対する興味を失ったわけではありません。

仕事や育児や個人的なクライシスなどで忙殺されたり没頭している生活を続けているうちに関係性が深刻に悪化していくケースです。

急激な悪化は却って対応がしやすい場合もあります。両者が直ちに気付ける程に大きく急な悪化は、両者が危機感を持って真剣に対応しやすいからです。

より厄介なのは、2人あるいはどちらかが知らず知らずのうちに徐々に進んでいく悪化です。知らぬ間に進行していて気づいたら手遅れになっていた、というケースです。

やはり、2人で花に水をやり続けるためには、双方の絶え間ない愛情と努力が必要なようです。互いによく見ている事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最後まで対話を続けられない人

2021-03-27 | プチ臨床心理学
人々の喧嘩や言い争いについてお話を聞く機会は多いのですが、しばしば感じるのは、今回のタイトルである、「最後まで対話をする事ができない人たち」がとても多いという事です。

というのも、対人関係で何か問題があった時、それについて言語化して相手に伝えるところまでは良いのですが、本来はそこから相互理解の対話が始まるはずの「問題提起」がなぜか「最後通告」になってしまう人たちが相当数おられるのです。

「これが問題だ」「これが嫌だ」「これが嫌いだ」「これが耐えられない」「これに傷ついた」、とだけ相手に伝えてシャッターを下ろしてしまうのです。

もちろんその相手が暴力的であったり強く自己愛的で話が通じない、これまでもさんざん話し合いを続けて相互理解を試みたけれどダメだった、という背景があっての最後通告ならば良いのですが、そうではなくて、話し合いができる相手に対してこうする場合は問題です。

このように一方的にシャッターを下ろす傾向の強い人たちの特徴はいくつかありますが、よく見られるものとして、以前このブログでも紹介した、「読心」(mind reading)という認知の歪みです。

思い込みの強い人たちで、相手の表情や仕草、言動そのものに強く反応して、その意味や動機について独自に推測や解釈をして、それが正しいかどうかを相手に確認するための対話をしない人たちです。

その人の表情や言動から分かる事もあれば、それだけでは分からない事は実はたくさんあります。例えばあなたの結婚が決まって大切な人に報告した時に、その人の表情が曇った時、その人の心の中に喜び以外の何かが混じっているところまでは分かりますが、その理由についてはきちんと話をしてみないと分かりません。

こうした人たちはしばしば人間関係にトラウマのある人たちで、「読心」する事でなんとかやってきた、いわば「読心」が処世術となって強化されてきた背景があったりします。

例えば生まれ育った家庭環境で主要な養育者が悪意や意地悪心を持っていて、基本的に否定的なことばかり言われてきた、自分の気持ちや願望はあまり聞いてくれなかった、といった背景があれば、相手の言動や表情を否定的の捉える癖がつきます。

養育者の言動に首尾一貫性がなく、言動が予測不能で、突然不機嫌になって暴言や暴力振るうような環境では、相手の表情や言動に素早く反応する方が適応的ですし、こうした場合、会話が長くなる程に傷つけられる事になりやすいです。つまり、対話を続ける事のメリットをあまり経験していない人たちです。

皮肉なのは、「読心」をする人は、そうし続ける事で、いつまで経っても誰かと深く分かり合えるための「難しい会話」、「居心地の悪い会話」、「タフな会話」をする対話力が身につかず、誰かと本当の信頼関係を築いたり、本当に親密になる事ができないという事です。

もしあなたの大切な人にこうした特徴があるのでしたら、まずはこうした可能性を踏まえて、とりあえずはそっとしておいて、あまり長い時間が経過しないうちに再び歩み寄ってみると良いかもしれません。冷静になると対話に応じられる人も少なくないですし、それで誤解を解くことが出来るかもしれません。

もしあなたにこうした特徴がおありで悩まれているのでしたら、まずは、「読心」の内容について疑問を持ってみることです。

先程の例で、結婚する事を報告したら相手の表情が曇った時、その時は反射的に「この人は私の結婚を喜んでくれない、否定的だ、嫌なんだ」、と解釈して距離を置いたとしても、「本当にそれだけかな」、「本当に否定的なのかな」、「あの表情の否定以外の意味はなんだろう」、などと考えてみて、もし今までのその人との関わりがあなたにとって良いものであったなら、勇気を出してその人と対話の時間を持ってみると良いかもしれません。

その「新しい会話」があなたにとっての「新しい人間関係」となり、新しい気持ちが出てきて、トラウマの克服にもつながります。