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新聞記事 漢詩「述懐」 2014.01.10~01.17 「124」

2019-06-20 08:34:56 | 読書記事

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功名心を漢詩「述懐」から見る  

 人間の心は複雑で、功名心など関係ないという顔をしている人でも、
ライバルが現われると、自然と功名心が湧くようだ。
また誰かに認められて、それに応じようとする場合の功名心もあるだろう。

漢詩では、唐の時代の太宗の時の、魏徴 「述懐」(*参考参照)が有名だ。

太宗の期待に応え、忠誠心を詠っている。ある意味。

ゴマすりの詩と言えないこともない。

ゴマすりが悪いとは言わないが。書き下し文(訓読文)は、参考を読んでもらうとして、

若干の流風の解釈を加えた概略の意味は次のように示しておこう。

「天下は乱れ、群雄割拠している。彼らは、天下の座を狙っている。

私、魏徴も筆を捨て、戦争に身を投げる

蘇秦や張儀の如く、弁舌で天下を取ることを献策したが、それは成すことができなかった。

しかし、この強い情熱は変わらない。」

まあ、机上での理論と実際は大きく異なることが多い。

石田光成のような茶坊主では、現場の信頼を得ることは難しい。

机上の理論を確立して、現場に出れば、それに越したことはない。

問題は、机上と同様、現場で冷静な心を持ち続けられるかどうかであろう。

「そうだからこそ、杖をついてでも、天子にお目通りし、臣下になり、馬を駆って函谷関の門を出て行く。

頂いた冠のひもで南粤(なんえつ)王を縛って、

かつての酈食其(れいいき、漢の人)のように武力を使わず、策謀で東方の国々を攻め落とした人々のような功績をあげよう。」

要するに、武力と知略で功績を挙げると言っている。

また酈食其の手法は、いわゆる調略で、秀吉が得意としたものと似ている。

武力で無理やり征服しても、征服者と被征服者の関係は微妙で、その後の統治を誤まれば、元の木阿弥だ。

ただ調略で、味方につけても、一時的で脆いという見方もある。

「曲がりくねった道を、高い峰を登っていき、緩やかな平野を見渡すと、古木には、冬の鳥が鳴き、人気のない山の夜には、猿が啼いている。

私も人の子、はるかかなたを見やるのも、心は痛み、故郷への思いも強い。

しかしながら、この難儀をどうして厭えるだろうか。国士として遇していただいた恩を思い、いかに報いるか。」

やっと、漢詩的な情感のこもった表現になっている。望郷の念を強くしつつも、それを乗り越え、王のために戦うと決意表明。浪花節的?と言えないこともない。

「季布は、一度言ったことは決して違えなかったし、候嬴も、一言の約束を重んじた。

人間、人生、意気に感じたら、男と男の約束を守るためなら、成功して得られた功名など、どうでもいいことだ。」

先人の有名な事例を挙げながら、太宗との約束は違えないと、さらに表明。

しつこいなあ。やはり裏には、太宗に本当に信用されているか心配なのだろう。

この詩を通読すると、太宗への忠誠心を表明すると共に、功名心を隠している詩と言えよう。

これには複雑な背景がある。というのは、彼は、かつて皇統を争った太宗の兄の方に仕えていた。

太宗は、そういうわだかまりを捨て、彼を重用してくれた。それが故に、改めて忠誠心の表明している。

魏徴の立場は複雑だっただろう。人間の心理は、微妙に詩にも表れる。

こういったことはサラリーマン社会でも同様のことがあるだろう。

ライバル会社から転職したり、敵対派閥が主導権を握った場合の処世術としては、当然求められよう。

そして、この詩が、『唐詩選』の第一番に挙げられていることに注目したい。

編者は、どういう気持ちで、この詩を選んだのだろうか。

*参考 『唐詩選』魏徴 「述懐」

    中原 還た鹿を逐い 筆を投じて戎軒を事とす

    縦横の計は就らざれども   慷慨の志は猶お存せり

    策に仗(よ)りて天子に謁し   馬を駆りて関門を出ず

    纓(えい)を請うて南粤(なんえつ)を繋ぎ   軾に憑(よ)りて東藩を下さん

    鬱紆(うつう) 高岫(こうしゅう)に陟(のぼ)り    出没 平原を望む

    古木に寒鳥鳴き    空山に夜猿啼く

    既に千里の目を傷ましめ    還た九逝の魂を驚かす

    豈艱険を憚らざらんや  深く国士の恩を懐う

    季布に二諾無く  候嬴(こうえい)は一言を重んず

    人生 意気に感ず   功名 誰か復た論ぜんや

    

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