待機児童が多く、保育園に入りたくても入れない人がいる一方で、少子化の影響から園児がどんどん減っている園もあります。
これからさらに子どもが減っていく可能性がある中で、選ばれる保育園や幼稚園になるためにはどのようなことが求められるのでしょうか。
今回は、施設の環境や教育方針など、保護者から選ばれる園になるために必要なことについて考えていきます。
園の方針を設計で実現させるには
選ばれる園であるためには、どのような環境や方針で保育を行っていきたいかを熟慮し、その希望を設計の段階で実現させることが大切です。
設計を考えるときに園の方針を組み込むためのポイントを子ども目線、保護者目線で見ていきましょう。
【子ども目線で考える設計のポイント】
保育園や幼稚園は、子どもにとって第2の生活の場です。毎日通うからこそ楽しく遊べて、
健やかに過ごせる環境、そして子どもたちが飽きない工夫を施すことが大切です。
例えば、園の方針が「のびのびと遊びながら、自分で工夫して考えられる子を育てる」というものであれば、
体をいっぱい動かしながら、他のお友達のことを観察し、自分もこうしてみようと工夫させるような設計にする必要があります。
室内全体を屋内遊具施設のような開放的でポップな色使いをした広々とした空間にすることで、
想像力が働きみんながそれぞれ楽しく考えながら遊ぶことができます。
また、園の方針が「子どものころから本に触れ、語彙力や想像力を伸ばす」というものであれば、
本を読むことはワクワクして楽しいことだと子どもたちに感じてもらえる設計である必要があります。
例えば、テーマが森のなかの楽しい図書館といったイメージで設計することで「本を読むところは楽しいところ」
という気持ちが自然と根付くのではないでしょうか。
【保護者目線で考える設計のポイント】
保護者の目線で選ぶ基準の中で最も重視されるのは「わが子を安心して預けることができる環境かどうか」ではないでしょう。
その上で、子どもたちが不安なく、快適に保育園で過ごす時間を楽しむことができる、ということも園づくりの要素として求められます。
例えば、トイレや手洗い場の設備が整っているか、楽しんで過ごせる工夫が施されているかなどです。
トイレに手すりが付いていたり、近くにお着がえ用の台などが設置してあったりすれば、「トイレトレーニングの際に安心」
「トイレに失敗してもその場ですぐに着替えをさせてくれるんだな」と安心感を抱かれる人も多いでしょう。
【先生目線からも考えることが大切】
選ばれる園であるために、子どもや保護者からの評価が高いことだけでなく、実際に毎日その場で保育する先生の目線から設計を考えることも大切です。
すべての子どもたちを見守れるように死角がないか、動きやすい動線であるか、気持ちよく働ける空間であるか、などを考慮する必要があります。
園に求められる環境とは
【安全で安心して任せられること】
求める保育理の方針がぴったりの園が見つかっても、安全が保障されていなければ、安心して預けることはできません。
安全であることはどんな園にも求められる要件です。警備員の常駐や、園舎の耐震性など子どもたちのために安全な環境が整っていることが重要です。
【のびのびと過ごせること】
狭い空間に何人もの子どもたちが保育されている環境では、十分に運動ができず、子どもたちのストレスがたまってしまいます。
雨の日でも屋内で遊べる十分なスペースがあるかが重要なポイントです。
面積が狭くても廊下や半野外空間を有効に活用するなどして、のびのびと子どもたちが過ごせる環境づくりが必要です。
【環境にやさしいこと】
化学物質を含む内装材などを用いると、シックハウス症候群など子どもや職員の体調不良につながる可能性があります。
環境に優しい園は、子どもたちの心身の健康によいだけでなく、情操教育の面でも有効ですので、
無垢材や紙・土(珪藻土など)といった自然素材を使ったり、化学物質を含まない塗料を使ったりすることで子どもたちの成長に良い影響を与えます。
また、園内に花壇や農園などを作り、花を育てたり、自分たちで作った野菜を食べるということも環境にやさしく、食育にもなります。
選ばれる園になるための差別化ポイントとは
前述した園に求められる環境を整えた上で、プラスαの要素を取り入れることで他の園と差別化を図ることができます。
「求められる環境」+「ここならではの強み」で選ばれる園になりましょう。
【モンテッソーリ教育】
モンテッソーリ教育とは、大人が一方的に教える教育ではなく、子どものやりたい気持ちを尊重し、自発的に取り組むよう促す教育です。
【バイリンガル保育】
ネイティブスタッフを起用し、日本語と英語の両方を取り入れる保育です。子どもは吸収力が早いので、
小さいうちから耳から聞いて慣れることでリスニング力のアップにつながります。
【スポーツに力を入れた保育】
園に温水プールや体操ジムが併設しているなど、運動することで、心身共に健康を目指し、
チームプレーなどを通じて協調性を育みます。園児の間は習い事の要素が強いスポーツを日常の保育で取り入れます。
【自然や文化など地域性を取り入れた保育】
田植えや、畑仕事など自然と触れ合いながら心身を育みます。また、給食に地域産の食材を使用したり、
地域の人と触れ合えるイベントなどを積極的に行ったり、自然や地域の文化などを学びながら成長します。
【病児保育がある】
共働きが多い中、子どもの病気で仕事を休めない人も多くいます。
保育園に病児専用の保育室が用意されていれば心強く、保護者としても安心です。
SOU建築の保育園特設サイトはこちら↓
最近は感染症のことばかりで忘れがちですが、やはり国内で頻発している地震。
地震の多い日本だからこそ、日ごろから防災意識をしっかり持っておくことが大切です。
保育園はたくさんの子どもを安全に保育する場所なので、地震発生の際に起こりうる被害を再度確認し、
全員で子どもの安全を守っていきましょう。地震発生時に園内で想定される被害とは保育園で保育中に地震が発生した場合、
どのような被害が起こりうるのかを想定しておくことが大切です。
園内で想定される被害には以下のようなものがあります。
SOU建築では、照明器具は落下しても割れないものを使用しています。
【保育室での被害】
・ピアノの転倒
・テレビの落下
・照明器具の落下
・時計の落下
・窓ガラスの飛散 など
【廊下・玄関での被害】
・照明器具の落下
・消化器の転倒
・窓ガラスの飛散 など
【体育館・ホールでの被害】
・照明器具の落下
・長机や折り畳み椅子などの散乱 など
【給食室・給湯室の被害】
・食器や調理器具の破損・散乱
【園庭の被害】
・ブロック塀の倒壊
・看板や外時計の落下 など
・園舎などの耐震確認
保育園の園舎が巨大地震が発生した際に耐えられない建物だったら、保護者は安心して預けることはできません。
現在定められている耐震基準は、「震度強から震度に達する規模の地震で倒壊・崩壊しないこと」です。
これらを満たしていない場合は、必ず耐震補強を行わなければなりません。
1981年6月1日より前に建てられた園舎の場合、耐震診断と診断結果の公表を義務付ける法律(耐震改修促進法)に基づき、
耐震診断を受け、現在の耐震基準を満たしているかをチェックし、問題があれば耐震補強を行うように定められています。
園舎の耐震補強工事などは、自治体の補助金制度を利用することができる場合がありますので、疑問があれば、自治体窓口に相談しましょう。
【地震災害対策チェック!】
保育園、幼稚園において地震が発生した際の十分な対策がとられているかをチェックしてみましょう。
この中で十分に対策がとれていないと感じるものにおいては、早急な対策が必要です。
園庭のブロック塀、遊具、倉庫など倒壊の恐れのない強度を確認している
ピアノや本棚・食器棚など大きな家具は、転倒防止のためにしっかり固定している
窓ガラスは強化ガラスにしたり、飛散防止シートを貼ったりして対策をしている
照明器具が落下しないよう固定するなど対策をしている
ピアノや本棚などの大きな家具は不安定な場所に置いたり、出入り口の近くには置いたりしていない園独自の防災マニュアルがあり、
職員全員で共有している緊急連絡先を職員全員で共有している災害時の生活用品や食料を備蓄している
園全体で避難訓練を定期的に実施している緊急時の保護者への引き渡し方法を共有している、または、訓練を実施している
子どもたちにも災害時の防災意識を指導している
【ピアノの転倒防止策と正しい避難方法】
保育園に必ずあるピアノですが、とても重く、万が一倒れて下敷きになってしまうと大けがにつながります。
大型家具の場合は転倒を防止するための防災グッズがホームセンターなどでも多く販売されており、対策がとりやすいですが、
ピアノの場合は、設置方法や設置場所もとても大切です。
アップライトピアノの場合、重心がうしろに片寄っているので、後ろが壁でない場合や、ふすまなど軽いものが背後の場合、
後ろに転倒することがあります。
だからといって壁にくっつけて設置すると、壁面とぶつかった反動で前に転倒する場合があります。
そのため、ピアノの設置は壁からセンチ離したところがベストです。ピアノが倒れないために、柱に固定したり、
器具を設置したりする場合がありますが、万全とは言い切れません。地震警報が鳴った場合は、ピアノのそばから離れること、
またグラっと揺れが来た時にピアノの下に隠れたり、ピアノを支えにして揺れをしのいだりするのは大変危険です。
「地震がきたらピアノから離れる」ことを徹底しましょう。
地震は一部だけのものではなく、日本、世界中で発生しています。
常に災害に対する危機感を持ち、保育士など職員に意識づけをすることが大切です。耐震補強や家具の固定、生活用品の備蓄はもちろんのこと、避
難ルートの確認、訓練、緊急連絡網の確認など、普段から定期的に見直しと共有をしておきましょう。
用意しておく備品としては食料、粉ミルク、離乳食、水などのほか救急用品と薬、毛布、紙おむつなど多岐にわたります。
なお、幼い子どもたちと避難訓練をして、それを認識させるのは大変なことですが、揺れを感じた時にはまず頭を守るなど、
「ダンゴムシのポーズ」などを日頃から一緒に練習しておきましょう。
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