幼稚園の開園を考える際に、幼稚園施設整備の基本的な方針や、施設整備における基準について知っておくべき、大切なポイントをご説明します。
また、時代が変わりゆく中で、幼稚園施設は、どうあるべきなのかについても考えていきます。
↑私たちが、現在設計中の幼稚園
幼稚園施設整備の基本と幼稚園施設整備のまとめ
【幼稚園施設整備の基本的方針】
幼稚園施設整備の基本的方針について、文部科学省大臣官房文教施設企画部が公表している資料をもとに見ていきます。
(1)遊びを通し柔軟に指導できる環境の整備
自然、人、ものなどとの触れ合いの中で、遊びを通して好奇心を満たし、自発的な活動を引き出すことが重要です。
(2)健康で安全に過ごせる環境の確保
例えば、日照、採光、風通しの良い環境であること、また、防災性、防犯性などの安全性を備えた安心できる施設環境に整える必要があります。
さらに、環境にやさしく自然との共生などを考慮した施設であることも大切です。
(3)地域との連携、周辺環境との調和に配慮した施設の整備
子育て相談などがあれば家庭や地域と連携したり、
周辺の施設と積極的に連携したりすることが重要です。
また、地域の町並みや景観との調和に配慮して施設を整備し、バリアフリー対策も図る必要があります。
【幼稚園施設整備基準】
社会の変化などに伴い、子どもの生活も大きく変化し、幼稚園での生活も変化してきています。
前述した幼稚園施設整備の基本的方針をもとに、具体的な幼稚園施設整備基準について詳しく説明します。
(1)遊びを通し柔軟に指導できる環境の整備とは
・幼児が創造性を発揮できるように、さまざまなコーナーや、家具の配置などで楽しめる空間を建築
・自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶために、外へも関心が向くよう幼児の動線に配慮した園庭や遊具の配置の工夫
・お友達や教職員とのかかわりを促せるような工夫
・3歳児の入園ニーズの高まりから、多様なニーズに対応できる施設整備
・支援を必要とする幼児への指導も考慮した施設整備
(2)健康で安全に過ごせる環境の確保とは
・幼児が健康に過ごせるよう採光、通風にし、換気等に対する十分な配慮
・災害に対する安全性の十分な確保
・施設の構造上の欠陥は当然ながら、幼児が予測しにくい危険を事前に取り除き、配慮した施設整備
・障害のある幼児や教職員が安全で円滑に過ごせるよう、バリアフリー化の実現
・環境にやさしく、自然との共存などを考慮した施設づくり
(3)地域との連携、周辺環境との調和に配慮した施設の整備とは
・共働き家庭が増えたなど社会のニーズが高まっていることから預かり保育に対応する施設計画
・親と子の育ちの場としての機能も兼ね備え、子育て支援の充実
幼稚園施設の今後の在り方 時代に合わせたニーズへの対応が必須
一昔前までの幼稚園は、働いていない保護者が預ける小学校入学前に教育をするところ、
保育園は、家庭のかわりに保育をしてくれるところ、といった認識だったと思います。
しかし、時代の流れとともに共働き家庭が増え、保育園のニーズが高まっています。保育園でも単に子どもを預かるだけでなく、
教育機関である幼稚園のようなカリキュラムを求める保護者も増え、スポーツや、英会話などカリキュラムが充実しているところも多くなってきました。
その一方で幼稚園は定員割れしているところも多く、新たに幼稚園施設を建築する場合は、現代の幼児を取り巻く環境の変化や、
社会のニーズが多様化していることに対応している施設にすることが大切です。
地域とのかかわりを大切に
核家族化、少子化により、祖父母や兄弟、親戚とのふれあいが減り、
また地域のコミュニティーも希薄になり、親も子も地域の中での孤立が進んでいます。
そして、子どもへの犯罪の増加などから同年代の子どもと自由に外で遊ぶことも難しくなっています。
そんな時代だからこそ、家庭以外で遊びを通じて、学んだり、地域との連携がとれたりする幼稚園施設であることは、幼児の発達において非常に重要なのです。
預かり保育・プレ保育の実施
また、障害がある子どもたちも安心して過ごせる環境づくり、未就園児を対象としたプレ保育など、
小さいうちから集団活動を通して、幼稚園という場所に慣れ親しめるように配慮するなど、子育てを幅広く支援できる制度が必要です。
幼児期の教育は、自ら考えて判断し、社会の変化に主体的に対応できる素養を育み、その基礎を培うものです。
こういった背景から、多様なニーズに対応した幼稚園施設であることが望まれます。
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一昔前までは、子どもの預け先が幼稚園と保育園の2択でしたが、最近増えてきているこども園。
私立幼稚園がこども園に移行しているケースも多くあります。
ここではこども園や子ども・子育て支援新制度ついて詳しくご紹介します。
子ども・子育て支援新制度とは
子ども・子育て支援新制度とは、幼児期の学校教育や保育、また、地域の子育て支援の場と量の拡充や質の向上を進めていくためにつくられた国によって作られた制度です。
一言でいうと、「量」と「質」の両面から社会全体で子育てをサポートしていこうという取り組みのことです。
必要とするすべての家庭が利用でき、子どもたちがすこやかに豊かに育っていける支援を目指し、現在力を入れて取り組んでいる制度です。
地域に課せられた課題
【すべての子育て中の家庭を支援】
保護者の就労の有無にかかわらず預けられる場所の確保。
(今までは、働いていたら保育園、働いていなかったら幼稚園となっており、保護者の就労の変化により子どもが慣れ親しんだ園を転園しなければならないケースが多かった)
【認定こども園の普及】
幼稚園、保育園だけでなく、保護者の就労に関わらず安定して預けられ、子どもが豊かに育つ場所の普及。
【待機児童の解消】
今は働いていないが、保育園に入ることができれば働きたいといった潜在的なニーズを含め、受け皿の確保を推進
【地域のさまざまな子育て支援の充実】
子育て中の方や妊婦の方のさまざまな悩みを、地域の子育て支援事業などから適切な支援を選択して利用できるように、情報の提供や支援の紹介。
例:一時預かり、ファミサポ(ファミリーサポートセンター)、病児保育、放課後児童クラブ、乳児家庭全戸訪問など
↑当社設計の千代田区学童クラブ
こども園への移行が増えている理由は?
子ども・子育て支援制度の目玉である「認定こども園」が普及するのに伴い、私立幼稚園の子ども園への移行が増えています。
「もうすぐ育休明けなのに預け先が決まらない」「預け先が見つかったら働きに出たい」という人があふれていて、
保育園に入りたいのに入れない待機児童が多いことは社会問題になっています。
それだけ、共働き家庭が増えたという現れなのですが、その一方3歳児以上を預かる私立幼稚園のニーズは減っており、
定員割れの園もある中、余った定員を待機児童に充てる動きは進んでいないのが現状です。
少子化、そして共働き家庭の増加により、幼稚園の経営が厳しくなり、園児の獲得競争が激しくなっている中で、
生き残るために、0~2歳児も預かる認定こども園へ移行する幼稚園が増えているのです。
こども園の特徴は?
こども園は簡単に言うと幼稚園と保育園のいいとこどりです。さらに保育だけでなく、
園に通っていない家庭でも子育て相談や親子の交流の場などに参加できるのが特徴です。
基本的に乳児(0~2歳)の場合は、共働きや介護などの事情から家庭で保育できない世帯の利用となるところは保育園と同じですが、
3~5歳の子どもがいる家庭の利用制限はないので、保護者の就労の有無にかかわらず教育・保育を一緒に受けます。
一般的に保護者の就労状況に変化があれば転園、退園の可能性がある保育園とは異なり、就労状況が変わっても、
子どもは通いなれた園を継続して利用できます。
こども園への移行にともなう問題点
こども園への移行は、事前にしっかりと計画し、準備していればスムーズに移行することができる可能性は高いですが、
必ずしもこども園へ移行したからといって経営が安定するとは言い切れません。
こども園への移行にともなう問題点は次のようなものがあります。
【定員割れ】
地域の人口動態、現在の待機児童数などの外部環境と、現在の預かり保育利用状況などの内部環境を整理した上で定員設定を行わないと、
こども園に移行したのに定員割れになってしまうということも起こり得ます。
正しく定員を見込まなければ、園の経営の悪化につながりかねません。内閣府が「公定価格試算ソフト」を公表していますのでそれを活用しながら、
10年ベースでの収支シミュレーションを組み、しっかりと計画をしましょう。
【施設整備費の圧迫】
幼稚園として機能していた施設から、保育園の要素を加えた施設に改築するためには施設整備にも費用がかかります。
この施設整備費を自治体の補助によってどのくらい活用できるのか、また、差額を借り入れる場合は返済のシミュレーションをしっかりと組み、
経営が安定して行えるよう計画的に行う必要があります。
【保育者不足による補助金の減額】
こども園運営の補助金は、園児の人数に対して必要保育者人数が決定し、その保育者に対する人件費、その他の必要経費が補助金額として支給されるという構造になってます。
そのため、必要保育者人数を満たせていないと、補助金額が減額されてしまい当初予定していた収入を得られなくなってしまいます。
幼稚園教諭と保育士の間での勤務条件や、シフトの組み方、意識の統一など、こども園として一緒になることで発生する課題も多いため、
人材の確保も難しい課題だと言えます。
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