花の旅

　3月6日金曜日の朝、私は滋賀県彦根市街地周辺の庄堺公園の駐車場で目を覚ましました。

　昨日は岡山県旧閑谷学校で中国地方の梅巡りを終えた後、中部東海地方の梅園を訪ねながら、帰路に付きました。

　年金生活で、時間だけは十分に余裕がありますので、高速道路を走るようなことはしません。

　ナビに三重県いなべ市梅林公園をインプットし、一般道ルートを設定、ナビ任せに車を走らせました。

　ナビは六甲山裏側の三田市から川西に進み、摂丹街道を経て、京都の嵐山辺りから京都市内に入り、その後１号線を進むルートを示しました。

　私にとってこのルートは、初めて走る道ばかりなので、緑の丘陵地を縫って走る車窓から、関西の田舎道の長閑な風景を存分に楽しませてもらいました。

　彦根で右折し国道306号を抜け、いなべへと向かう予定でしたが、彦根に着くと既に20時を過ぎていました。

　閉店前のスーパーで夕食の弁当を購入し、彦根市周辺で人家から離れた駐車スペースを探し、後部座席を倒して寝袋に潜り込んだのです。

　この様な車中泊の旅を、かれこれ20年以上も続けてきました。

　慣れない頃は心細くて、人家の灯りが見える場所に車を停めましたが、夜になって、民家近くに他府県ナンバーの車が泊まれば、住民が不安に思うことに気づき、最近は人家から離れた場所を探すことにしています。

　翌朝、空が明るくなり始めた頃に目が覚め、国道306号をいなべへと向かったのですが、ナビが途中からあらぬ方向に車を導き始めました。

　不審に思って全ルートを確認すると、ナビは米原から関ヶ原を抜けて国道365号に入り、いなべ市へと至るルートを選択していました。

　どうやら、鈴鹿山脈を越える国道306号に通行規制が掛かったようです。

　かなり遠回りですが致し方ありません。

　やがて、朝8時を過ぎた頃に、国道365号を走っていると、正面に見えてきた山が雪で覆われていました。

　この瞬間に、ナビが迂回路を選択した理由を理解しました。

　更に小一時間ほども走ると、目の前に、雪を被った鈴鹿が、心洗うような清しさを見せていました。

　しかし、それにしても、夏タイヤであの尾根越えの道に進んでいたらと思うと、背筋が凍ります。

　それにしても、20㎞以上も遠回りして、走り来た甲斐は十分でした。

　ご覧下さい、この見事な景色。

　今まで見てきた、どの梅園の景色も此処に優るものはないと思うのです。

　白い雪を被った鈴鹿山系を借景とし、朱とピンクと白に染まった梅林の美しさは、まさに桃源郷そのものです。

　広い園内を移動しながら、様々な表情を見せる梅林をカメラに納めました。

　本当に悔いのない、いい人生だったな～　って、　ん？！

　私はまだ、この世に別れを告げるつもりはありませんが、

　そんな風に、我が人生を思わせてくれる、いなべ市の梅林公園なのです。

　人生の晩年に見る絶景は、「ああ世は全てこともなし」を実感します。

　いなべ市の梅林公園、此処は、絶対に一度は見ておくべき場所です。

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