邦画ブラボー

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「にっぽん昆虫記」

2005年03月15日 | ★人生色々な映画
冒頭に昆虫のアップ。

東北の寒村に生まれ育ち、
世知辛い世の中を生き抜くパワフルな女の物語。
土着的なものがダメな人にはとてもうけつけられないかも。

だって土着どころか
父ちゃん、ボロを着て首まで田んぼにつかって働いているだ~~
娘:「父ちゃん、おらと夫婦だな」父:「んだ~」
「夫婦だな」「んだ~」

類まれな名優の演技に絶句

役者というものに空恐ろしさを覚え、戦慄してしまう。
大学教授から知的障害者まで演じ分けられる北村和夫。
この父親の口のあき具合。
見ているこちらもあんぐり口が開いた。

そして主役の天才女優、左幸子!
聖女にも売女にも見える表情の豊かさ、艶っぽさ。
この人はまさに不世出の女優だ。
どこを切っても素晴らしい。

東北弁も効果的に使われていて
ユーモアも効いている。

北林谷栄はここですでに90を過ぎた老婆役をやっているが
いったい今いくつなんだ!!
ば、ば、化け物のようだ。
二役で悪どい売春宿のおかみも演じているが
こちらは綺麗に化粧していて
美しい横顔にまた驚く!

春川ますみ、吉村実子、小沢昭一、
殿山泰司(ちらっと)、小池朝雄(ちらっと)、
佐々木すみ江、みな、皆、泣けるほどいいです。

主人公の変遷に昭和の世相が上手く絡められている。
随所に入るストップモーションに
左幸子が詠む素っ頓狂な歌が効いていて可笑しい。
そして表情のアップの場面は、息使いまで聞こえそうにリアル。

シリアスな物語なのに滑稽。見終わってどんよりしないのは
巧みな演出、脚本、そして名演技のなせる業だろう。

いやぁ~
びっくりしたなあ、もう!

1963年 今村昌平 監督作品 脚本 長谷部慶次 / 今村昌平
*「約束」「津軽じょんがら節」の斉藤耕一がスクリプタで
クレジットされている。

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