邦画ブラボー

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「博奕打ち 総長賭博 」

2005年03月24日 | ★ハードボイルドな映画
昭和の始め。
親分が倒れ、跡目相続でもめる天竜一家。
中井組組長(鶴田浩二)が推されるが辞退。
仙波組長(金子信夫)は格下の石戸を推し、跡目とする。
そんな折、中井の兄弟分松田(若山富三郎)が出所するが、
松田は石戸の跡目襲名に激怒し・・

最初からすんなりと「その世界」に入っていけたのは
笠原和夫の脚本の巧みさと
主演鶴田浩二の抑えた演技にひっぱられていったから。

とにかく鶴田浩二が素晴らしい。

女房(桜町弘子)を愛し、妹(藤純子)の幸せを願い、
兄弟分の松田(若山富三郎)を想う。

困ったヤツが若山富三郎。
いのししのように突進していく無骨な男。
それもまたこの男の生き方なのであるが。

女たちはそんな男に黙ってついていき・・と思いきや、
任侠の女らしい、おとしまえのつけ方にも
驚く。

笠原和夫の脚本に
知らず知らずのうちにぐいぐい乗せられる。

鶴田浩二が「松田!」と呼び、
若山が「兄弟!」と答える。それだけでしびれる。

鶴田浩二の悲しみをたたえた瞳がいい。
我慢に我慢を重ねた挙句、男の意地が爆発!

やくざ映画の粋が結集された世界がある。
東映の岡田社長は
「なんだお前らはゲージツみたいなのを撮りやがって。」と怒り、
事実公開当時は興行成績も振るわなかった。
一年経ってから三島由紀夫によって大絶賛され、
マスコミに取り上げられるようになったとか。

こんな素晴らしい映画なのに、
笠原和夫は出来上がったラッシュを見て
「頭にきて」試写室を飛び出したそう。(「仁義なき戦い」の時もそうだったとか)

なんでも当時放送されていたテレビシリーズ「アンタッチャブル」をイメージして、
もっと切れのいいものを想定していたそうである。
そしてエンディングは映画と全然異なるアナーキーなものだったそうだ。

だが町の映画館でひとり見ているうちに引き込まれ、
「これはいけるよ」と納得したそうです。
(『映画はやくざなり』より)


1968年 山下耕作監督作品 脚本 笠原和夫

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