邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「人斬り」

2005年09月01日 | ★ぐっとくる時代劇
五社英雄+岡田以蔵ときては・・
さぞかしズバドバッ!(凄絶な殺陣)だらけだろうと思っていたら

やっぱりそうでした。

女(倍賞美津子)もあります。

脚本橋本忍、勝新太郎、仲代達矢、
石原裕次郎、三島由紀夫のクレジットで
そそられない時代劇ファンはいないはず。

ところが私ときたら、今回がまるっきり初見でした。

拾ってくれた恩人、武市半平太から命ぜられるままに
殺戮を繰り返す以蔵。
恐るべき刺客の顔とは別に、
心優しく、子供のように無垢な顔も持っていた。

勝新にぴったりの役柄。

なのに
この後味の悪さはなんでしょう。
哀れな末路か・・それとも・・

石原裕次郎は坂本竜馬で
いいとこ取りをしているが
幕末の士、竜馬としてはちょっと太りすぎだと思う。

三島由紀夫が田中新兵衛役。
台詞は結構あるが
何度もとちって勝新に助け舟を出されたとか。

嬉々として演じているように見え
豪快な殺陣も披露しているが
武市の謀略によって濡れ衣を着せられて
あっと思った瞬間
筋肉もりもりのもろ肌脱ぎ、一瞬の気合とともに
切腹!唐突!

三島由紀夫が切腹するんですよ。
・・・絶句・・・するしかありません・・・
このシーンは三島にとってはずせなかったのだろうけど、
見ていて精神的に消耗した瞬間だった!

仲谷昇を久々時代劇に見た。
公家の姉小路公知。(綾小路きみまろではありません)

一番貧乏くじをひいたのは
目的のためには手段を選ばない
冷徹な人物として描かれている武市半平太役の
仲代達矢で、汚れ役を一手に引き受けている。

冒頭、暗殺シーンを覗き見していた以蔵の驚きの表情が
次第に陶酔の表情に変わっていくところがすごい。
「俺が・・俺が斬ったら・・」
「き、斬る前に『天誅!』って言うんだな・・『て・・天誅・・!』」
と半眼になる様子はなんとも奇怪で
この映画の中でもっとも印象に残った場面だった。

最後まで見ていて、とうとう違和感の原因のひとつがわかった。

音楽(佐藤勝)がこの作品に合わないと思う。
以蔵が斬り込みに走るシーンに明るい青春時代劇風の曲。
目をそむけたくなるリアルな斬り合いの合間に軽いメロディ。
トーンが合わなすぎ。

様々な人物、思想、が交錯する中、
時代はいやおうなしに大きく動いていく。

五社+勝新って鰻とステーキのようで、
とにかく濃いですわ~

1969年 五社英雄監督作品 脚本 橋本忍 撮影 森田富士郎 美術 西岡善信

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします