邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

成瀬巳喜男の「妻」

2005年09月08日 | ★人生色々な映画
成瀬監督ってやっぱり意地悪だったのかも。

高峰三枝子
思いっきり生活臭のある奥さんを演じているのだが、

美しすぎる。文句なしに綺麗です。

上原謙だってそこらへんを歩いている会社員には
到底見えない浮世離れした美中年だ。

それにしてもまあ、成瀬監督は
「高峰さん、ご飯食べ終わったらそのお箸を楊枝がわりに!」とか、
「耳かき使うとき、口、ゆがめて」とか指導したのだろうか。

高峰秀子に言わせると
「成瀬監督って俳優に何にも言わないの。だから楽。」だそうだけど
高峰三枝子が自分の判断で
お寿司に何度もねちょねちょ醤油をつけ、
片手でお茶をぐいっと飲むわけはないだろう。
ましてやうがいを・・

これも立派な汚れ役である。

豊田四郎監督も細かいが、
些細な仕草やちょっとした目線で
その人となりを出すのが憎たらしいくらいにうまいですね。

上原謙と高峰三枝子は倦怠期の夫婦。

変わりばえしない日常生活にうんざりしている夫は
ふとしたはずみから同僚の子持ちの未亡人(丹阿弥谷津子)と
いい仲になってしまう。
妻はそれを知って・・

息がつまるようなテーマだけど、この夫婦の家は
二階を間貸ししているために人がしょっちゅう出入りする。

開かれた家なのだ。

夫婦の周りにいる人物の配置が絶妙で、
うっとおしいテーマなのに開放感があるのはそのためだと思う。

未亡人の丹阿弥谷津子は殺したら化けて出そうな
じと~~っとした女だが
最後は意外にあっけなかった。

上原が浮かれてホイホイしたり、
帰ると妻の前で黙りこくりじ~~っと下を向いている様子も
とても可笑しく見た。

三國連太郎が
下宿人のユーモラスな味の画学生役で抜群。
うますぎ。
どこかしらなよ~っとしていて
役によってからだの動きも全然違うってすごい。
一挙一動を凝視してしまう。

この作品の脚本は井出敏郎だが
皮肉めいた、
厭世的な結末は監督の恋愛・人生観も反映しているのだろうか?

「フルムーン旅行」というキャッチフレーズの
CMが人気を博したが
まさにこの二人が温泉に入っていたなあと懐かしく思い出す。

1953年 成瀬巳喜男 監督作品  脚本  井手俊郎 撮影 玉井正夫  音楽 斎藤一郎 美術  中古智

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします