川端康成の作品の底に蠢く、
暗く激しい情念がうっとおしく
恐ろしく思ったことがあった。
だが惹かれた。
流麗な文章の影にある「死」の匂いに
憂鬱になると同時に、魅入られた。
川端康成原作を映画化した成瀬巳喜男のこの作品も
一見、
互いに思いやる
舅と嫁の愛情を細やかに淡々と描いているように見えるが
水木洋子脚本による
何気ない台詞のひとつひとつを聞き
登場人物の行動を見ていくにつれ
人間の心の底知れない深みをのぞいていかされる。
不穏な嵐の夜の描写、菊子が鼻血を押さえるシーン、
額のあざの話や能面のエピソード、
山村上原親子の会話など
全編を通してセクシュアルな雰囲気が漂う。
上原の愛人の激しさと
秘書の杉葉子の屈折。
そんなコントラストも
すべて計算しつくされている。
黙って耐えている聖女のような嫁の
心の底にある闇を原節子が熱演している。
新宿御苑での山村と原が並んで歩くシーンはいかにも
玉井正夫のカメラらしい美しい画だった。
鎌倉の川端康成の家を模したというセットがすごい。
上原謙と山村聡親子が並んで出勤するシーンが印象深いが
家の前の道までセットらしい。
中古智の美術の素晴らしさについては
「記憶の現場」にも詳しく述べられていたけど
恐ろしいほど完璧な仕事だったんですね。
成瀬の映画は文学でいうところの
行間を読む楽しみがあると思う。
俳優すらもそれと知らずに演じていたと
いうことも、もしかしたらあるのではないかしら。
そんな、言葉を超えた何かが
見る人々を捕らえて離さないのではないかと思う。
1954年成瀬巳喜男監督作品
原作川端康成 脚本水木洋子 撮影玉井正夫 美術 中古智 音楽斎藤一郎
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暗く激しい情念がうっとおしく
恐ろしく思ったことがあった。
だが惹かれた。
流麗な文章の影にある「死」の匂いに
憂鬱になると同時に、魅入られた。
川端康成原作を映画化した成瀬巳喜男のこの作品も
一見、
互いに思いやる
舅と嫁の愛情を細やかに淡々と描いているように見えるが
水木洋子脚本による
何気ない台詞のひとつひとつを聞き
登場人物の行動を見ていくにつれ
人間の心の底知れない深みをのぞいていかされる。
不穏な嵐の夜の描写、菊子が鼻血を押さえるシーン、
額のあざの話や能面のエピソード、
山村上原親子の会話など
全編を通してセクシュアルな雰囲気が漂う。
上原の愛人の激しさと
秘書の杉葉子の屈折。
そんなコントラストも
すべて計算しつくされている。
黙って耐えている聖女のような嫁の
心の底にある闇を原節子が熱演している。
新宿御苑での山村と原が並んで歩くシーンはいかにも
玉井正夫のカメラらしい美しい画だった。
鎌倉の川端康成の家を模したというセットがすごい。
上原謙と山村聡親子が並んで出勤するシーンが印象深いが
家の前の道までセットらしい。
中古智の美術の素晴らしさについては
「記憶の現場」にも詳しく述べられていたけど
恐ろしいほど完璧な仕事だったんですね。
成瀬の映画は文学でいうところの
行間を読む楽しみがあると思う。
俳優すらもそれと知らずに演じていたと
いうことも、もしかしたらあるのではないかしら。
そんな、言葉を超えた何かが
見る人々を捕らえて離さないのではないかと思う。
1954年成瀬巳喜男監督作品
原作川端康成 脚本水木洋子 撮影玉井正夫 美術 中古智 音楽斎藤一郎
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