邦画ブラボー

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「氷壁」

2007年07月14日 | ★人生色々な映画
朝日新聞に連載された井上靖の原作を元に
新藤兼人が脚色し
増村保造が監督した。

魚津(菅原健二)は独身サラリーマン。
暇さえあれば山に登っている山男である。
美しい人妻(山本富士子)にフラれてようやく立ち直った親友、
小坂(川崎敬三)と共に穂高に登るが
ナイロンザイルが切れて小坂は滑落死してしまう。

果たしてザイルは切れたのか、失恋した小坂が故意に切ったものなのか・・・

菅原健二と川崎敬三は山男にしては無骨さが皆無・・
二人ともイケメンでスマートで
女のことで思い煩う・・という風には到底見えないのである。
というのは先入観だろうか?
菅原は小坂の妹(野添ひとみ)と人妻の間で
ちょっと揺れるのであるが、当然女より山でしょう魚津の場合・・
と思ってしまう。

山本富士子と
上原謙演じる年が離れた嫌味な夫との関係が面白い。
山本は普段は和服で楚々としていながら
寝室ではドッキリ透け透けネグリジェでという分かりやすさだ。
とことんやる増村監督万歳。いくらなんでも色気が出過ぎでしょう~

天下の美女がそんな衣裳で攻めても
初老の夫は「疲れた疲れた」と向こうを向いてしまうのであった。
ひとり闇に取り残される若妻。彼女にとっては
小坂でも魚津でもよかったのではないかと思ってしまう演出だった。

そして脚本もいい。
デュプラが書いた詩「もしか或る日」が引用され、
泣かせる。

「もしかある日、おれが山で死んだら、
山で結ばれたザイル仲間のお前にだ
この遺言を頼むのは。

お袋に会ってくれ、そして 言ってくれ、
おれはしあわせに死んだと、
おれの心は いつでも
お母さんのそばにいたから、
おれは 苦しくなんかなかったと。

おやじに 言ってくれ、おれは 男らしくやったと。
弟に言ってくれ、さあ 今こそ
お前に バトンを渡すぞと・・・」



山男の心情と生き方を示す
なんと思いやりがある遺書であろうか!

小坂を見送る火の前で
山の仲間が歌う
「雪よ、岩よ、われらが宿り・・俺たちゃ町には住めないからに・・・♪」
やっぱり彼らは街には住めないのであろうか?
歌の入り方が絶妙であった。

ドライなようで菅原をよく理解している上司
(山茶花究)の存在も心を明るくしてくれる。

なぜ山に登るのか?
「山男」は女にとっても不可解であるがゆえに魅力的ですね。

1958年 
監督: 増村保造
原作: 井上靖 脚本: 新藤兼人 撮影: 村井博
美術: 下河原友雄 編集: 中静達治 音楽:伊福部昭
出演: 山本富士子/ 菅原謙二/ 野添ひとみ
川崎敬三/ 山茶花究/

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