邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

華岡青洲の妻(6)”永久(とわ)の花々”最終回

2005年03月05日 | ★TV番組
ショック!の連続。最終回。

ここにまたすごい女優さんがひとり現れた。
不治の病に冒され、
亡くなる寸前にこれまでの思いを加恵にぶつける
青洲の妹小陸(小田茜)。

その内容は見ている私たちものけぞるような衝撃的なものだった。

小田茜の気迫のこもった演技、
美しい首に現れた醜悪な塊を見せつけられた私たちの驚き。

「姉さんは勝ったからそういえるんや」

横っつらを張り倒されたような気持ちに!


死んでいこうとする人間の最後の叫びにぶちのめされた。
今まで加恵と於継のすべてを黙って見ていた小陸。

嫁に行かなくて幸せだったという言葉の意外な意味とは!
涙を流しながら叫ぶ小陸の姿に

どてっぱらに風穴を開けられた!

業病に侵された人間にさえ、姉さんよりはまし・・といわれる加恵とお継の関係とは・・・!

頭から氷水をかけられたように急冷!

そして遂には男ひとりのために女が犠牲になってきたと・・・・
兄、青洲をも非難するに至って・・

完全KO。全面降伏。
小陸ちゃんの勝ち!(意味不明)

死んでいこうとする人間の目には、真実が見えてくるのかもしれない。
その目の前にはよけいなものがとりはらわれて、
本質だけがさらけだされるのかもしれない。

目が見えない加恵の演技も素晴らしかった。

真っ白な曼荼羅の花の中にたたずむ加恵。
盲目の目に映る於継の幻。
懐かしさと悲しさと嬉しさ、色々な感情が入り混じった加恵の表情が見事だった。
美しい映像でした。

最後に、実在する於継、加恵、青洲の墓の映像に
これまた激辛のナレーションがかぶさり、いいようのない余韻が残った。

素晴らしい美術、演出、俳優さんたちの渾身の演技に目を見張った全6回だった。

登場人物誰もが素晴らしく、
全員の息がぴったりとあっていた。

なんだかんだ言われているNHKだが、濃密な時間をありがとう!

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「助太刀屋助六」

2005年03月04日 | ★ぐっとくる時代劇
亡き岡本喜八監督の遺作。

またもや最初から斬新なカットが散りばめられていて楽しい。
時代劇にモダンジャズ(なんと山下洋輔!)を使うという、遊び心満点の作品。

真田広之がはじけまくり。
コミカルな面が引き出されています。

江戸時代の武士社会に「仇討ち」という制度があった。
助六は仇討ちを助けた武士に礼を言われたことがきっかけで
仇討ちと見るや、助太刀をしまくっていた。
久しぶりに故郷の宿場町に舞い戻ったが・・・

真田に仲代達矢、鈴木京香、小林桂樹、
佐藤允、天本英世、伊佐山ひろ子、鶴見辰吾、
風間トオル、本田博太郎(ほんの一瞬!)、
竹中直人、嶋田久作、村田雄浩、など豪華な顔ぶれが贅沢な使われ方で絡む。

鈴木京香も思いっきりはねかえっている。

仲代達矢はいぶし銀の侍姿。
刀を構えた後ろ姿はすごい貫禄。髪の毛一本まできまっている!

くすっと笑ったりほろりとしたり・・
ユーモラスなナレーションは、出演もしている岸田今日子。

岡本監督の茶目っ気と洒落っ気が溢れている。

2001年 岡本喜八監督作品  岡本喜八脚本

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「三匹の侍」

2005年03月02日 | ★ぐっとくる時代劇
貧しい百姓たちが代官の娘亜矢(桑野みゆき)を人質にして立て篭もる。
人質と引き換えに強訴しようという計画だった。

人気爆発したドラマを映画化。

騒動に巻き込まれた浪人柴左近(丹波哲郎)は百姓の味方になる。
だが、代官側にはすご腕の桜京十郎(長門勇)、
雇われ用心棒の中には桔梗鋭之助(平幹二朗)がいた。

豪快で男っぽく真っ正直な柴左近、
ユーモラスな雰囲気が漂う槍の名手、桜京十郎、
ニヒルで女好きな桔梗鋭之助。

三人三様。それぞれがとびっきり魅力的。
共通しているのは比類ない剣の達人であること。

テンポが非常に良く、ぐいぐいと見せる。
ダイナミックな演出が冴えわたる。

桑野みゆきの激しさ、つんとすました顔の色っぽいこと。
女を撮るのが上手いといわれていた五社監督だが、
その扱いは容赦が無く荒っぽい。

代官側で用意した人質、百姓出身の女郎おやす。(香山美子)
見せしめに首に縄をつけられて引張り回されるシーンがあるが
その激しさにぶっ飛んだ。
大丈夫だったんですかね、香山美子さん。

そして女同士の取っ組み合いも。

映画「陽暉楼」での池上季美子と浅野温子の喧嘩シーンが
公開当時話題になったものだが、
すでにこの映画でその原形発見!

女郎同士の激しいつかみ合いは
ど迫力。香山美子さん、この映画で身体はってます。

リアりティにこだわる演出は細部にわたる。

最近の時代劇は、浪人でも妙にぱりっとした着物を着ているけど、
この映画では醤油で煮〆たような着物。クロサワの映画も
またそうであったことを思い出す。
たちまわりの場面では着物が汗染みだらけになっている!

女郎屋の障子はまだら染みだらけでお化け屋敷のようだし
百姓の家ときたら、人が住めるのかと思うようなあばら家である。

題名からしていい。
三人といわず、まるで野良犬のように三匹と言わせるところがニクイ。

白黒のびしっと締まった画面。
けっして甘くないストーリー。

ラストの、荒涼とした野を行く三匹の後姿に惚れ惚れした。

1964年 五社英雄監督作品 阿部桂一、柴英三郎、五社英雄 共同脚本

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「悪名」

2005年03月01日 | ★ハードボイルドな映画
河内の暴れ者朝吉はめっぽう喧嘩が強かった。

今東光の人気新聞小説を映画化。依田義賢が脚色。
監督は「陸軍中野学校 竜三号指令」」の田中徳三。
撮影は宮川一夫。

義理と人情に厚い古いタイプの男、朝吉(勝新太郎)は河内八尾の一匹狼。
喧嘩が強くて女にめちゃめちゃもてる。

朝吉にこてんぱんにやられて以来弟分になるモートルの貞(田宮二郎)。
こちらはドライで現代的なおにいちゃんである。

二人がコンビを組み水が流れるような河内弁をあやつり、
あくどい浮世を渡っていく、痛快娯楽作。

このシリーズは大人気を博してなんと16作も作られ、
田中徳三監督はそのうち9作を手がけている。

なぜか黙っていても女に惚れられてしまう朝吉。
寅さんとは大違いである。

女性陣に、中田康子、
信じられないくらい純情そうな水谷良重(遊女・琴糸)、
同じく可憐なお絹に中村玉緒。

朝吉の評判を聞き、客人として迎え入れる親分に山茶花究、
シルクハットをかぶっていることから
「シルクハットの親分」(永田靖)と呼ばれる親分さんなど魅力的なキャラクターがからむ。

だが本作でなんといってもピカイチなのは
因島の女大親分麻生イト(浪花千栄子)であろう。

約束を破った朝吉に
「わしを裏切ったモンはどうなるか、わかってるやろうな!」と、
体をゆさゆさゆさぶりながら
帯の中に手をつっこんですごむ場面の迫力といったら!
「わしの後についてこい!ついてこんかい!」
一人称が「わし」ですから。

浪花千栄子と関西弁は切っても切れないもの。
風土と言葉と人格の合体を味わう楽しさ。

そう、「悪名」は関西弁、河内弁のニュアンスの面白さ、
豊かさ、痛快さを味わう映画でもある!

1961年 田中徳三監督作品 脚色 依田義賢  原作 今東光

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