邦画ブラボー

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「剣鬼」

2007年07月08日 | ★ぐっとくる時代劇
と人との間に生まれたと蔑まれ、
ひっそりと生きていた男が神がかりの居合術を会得。
命ぜられるがままに隠密を斬り、
恩師を斬り仲間を斬るうち本物の畜生道へ堕ちていく・・
という身も蓋も無い物語。

だが雷蔵が演じると、不幸な男の孤独な人生がくっきりと浮かび上がり、
哀しい物語へと昇華されてしまうのだった。

中老は男子禁制の大奥で男の子を産み落とす。
傍らにはいつも犬がいたため噂が噂をよぶ。
女は産後すぐに亡くなり、
犬が斑であったことから赤ん坊は斑平と名づけられた。

斑平(市川雷蔵)は花作りに長け、
可愛い娘っこ(姿美千子)にも慕われ地道に暮らしていたが
森の中で名も知らぬ武士による凄まじい居合術を目撃してしまったことから
花だけではなく、
新たな才能も開花させてしまう。

優しい斑平が刀を見ると
ギラギラとした目つきになってしまうのが異様。

それまで刀を抜いたことも無いような男が
凝視し続けるだけで居合いを会得してしまうという設定には大いに無理がある。

その他にも健脚の斑平が全速力で走る馬を追い越すなど、
んなわきゃ~ないだろう的な
漫画チックな描写もあるが、かえって緊張が抜けていいバランス。
出生の秘密や狂気がやどった刀伝説など
柴錬得意とするところのケレン味も楽しい。

最も驚くのはラストの花畑での死闘だ。何十人も相手にしながら
斑平は学んだ通り、一人斬る度、刀を鞘に納めるのである!!
抜刀し、斬りそして納刀。哀しいサガと言うにはあまりに無謀な殺陣!
そんなことしてたら斬られるじゃないのお~~~!と
思うまもなく、やっぱり斬られてしまう!

初めて人を斬った時、
子供のような無邪気な顔で「斬れた!」と狂喜する斑平。
虐げられてきた人間の哀しみ苦しみを
全身で表現出来る雷蔵ならではの物語だった。

出演:市川雷蔵、姿美千子、佐藤慶、睦五郎、他。

1965年
 監督 ................  三隅研次
脚本 ................  星川清司
原作 ................  柴田錬三郎
撮影 ................  牧浦地志
音楽 ................  鏑木創
美術 ................  下石坂成典

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「たそがれ酒場」

2007年07月01日 | ★人生色々な映画
東京の片隅にある大衆酒場の一夜の出来事を描く。

夕暮れが近づくと
従業員が次々と店に現れ、開店準備。
いよいよたそがれ酒場が開くのだ

ステージでは
専属歌手と女給(野添ひとみ)が歌の練習。
「何にしようか」
「『夢見る君』にしましょうか!」
伴奏は優しい音色のアコーディオンである。

店が開くと同時にぱらりぱらりと客が入ってくる。
このタイミングとリズムが抜群!

いつの間にか店は満員になり、がやがやとした喧騒に包まれる。
学生、夫婦連れ、
あちこちで酒が酌み交わされ
バーテン兼司会者の紹介で専属歌手がステージにあがると
その店自慢の歌謡ショーが始まる・・・

常連の絵描き(小杉勇)はカウンターに陣取って
いつもの酒を注文する。
この男、なにやら曰くありげ。

とにかく店のセット、空間的な造形が素晴らしい。
広さは小さめの学校の体育館くらいか。
流れるようなカメラが酒場を写し出す。

才能ある若き歌い手を演じているのは本職のテノール歌手、
またその師のピアニストも本物音楽家であるが故
何を歌っても演奏しても質の高さは申し分なし。
ひとり暮らしの老音楽家の足元には子犬が一匹じゃれついている・・

青年は素晴らしい歌声を見込まれ
著名な作曲家の劇団に入団をもちかけられるが
若者の師はなぜか頑なに反対するのだった。
曰くありあり・・・

美しい踊り子(津島恵子)は男に斬りつけられ、
恋人(宇津井健)を追って行こうか悩む娘(野添ひとみ)は
貧しい家族のため恋をあきらめる。
いい男丸出しの
丹波哲郎はチンピラ役だし
ちょこっと出る東野英治郎と加東大介がほろりとさせつつ
くすりと笑わせてくれる。
おっと、
忘れちゃいけないのは多々良純のへべれけ親父。

「お富さん」、「カルメン」「夢見る君」・・
クラッシックから軍歌、歌謡曲まで多岐に渡る
音楽監修は芥川也寸志。
音楽の効果が最高にドラマを盛り上げ、哀愁を誘う。

戦争の傷跡まだ癒えない時代背景、
混乱した世相の中、人々は集い歌い酔う。
人生の喜び哀しみすべてたそがれ酒場にある。
日本の音楽劇の大傑作である。

内田吐夢
音楽のセンスも抜群だということもわかってしまって参りました。

1955年 
監督:内田吐夢
脚本:灘 千造
撮影:西垣六郎 照明:傍士延雄
録音:中井喜八郎
美術:伊藤壽一
音楽:芥川也寸志

*映画の中のイイおんな 
津島恵子:可憐な・・慎ましい女性というイメージ一新!
驚くほど艶やかな踊り子っぷりに思わず身を乗り出すこと
必至!無名の青年を暖かく見守るお姉さん的な役柄が
似合ってますが、あの「七人の侍」での役柄とは大違い。
同じ人とは思えません!

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