(昨日の続きです)
わが国農業の安全保障上の一番の隘路は「 主な化学肥料の原料である尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加⾥(塩化カリウム)は、ほぼ全量を輸⼊。世界的に資源が偏在しているため、輸⼊相⼿国も偏在」(農林水産省)です。
皆様、中学の理科で植物の成長に必要な三元素について習った記憶がおありと思います。窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)ですね。その3元素が供給されないと農作物が良く育たないことは、皆様もよくご存じと思います。3元素の一つでも欠けると、良く育たなくなるのです。
しかし、わが国農業は、その三元素の供給源となる肥料を(農林水産省によれば)ほぼ全量を国外から輸入しているというのです。一体どこから輸入しているのか?実は私もよく知らなかったのですが、窒素肥料は37%、リン肥料に至っては何と90%を中国から輸入しているというのです(上のグラフをご覧になってください)!(注)わが国農業でほぼ自給できているお米(に限らず、あらゆる国内農産物)の生産は、実は全面的に、本当に全面的に中国頼みだったのです。もう笑うしかないですね・・・このような現状で、岸田総理は、よく中国との戦争準備をしようという気になるものだと感心してしまいます。
一昨日に本ブログでも書きましたように、習近平氏が軍事力による戦争ではなく、経済戦争を日本に仕掛けた場合、日本経済にダメージを与えるのとほぼ同等のダメージを中国も受けることになります。しかしリン肥料「りん安」の日本向け輸出禁止に限定すれば中国経済が受けるダメージは少なくなります。習近平氏が「石油武器」ならぬ「りん安武器」を日本に対して発動する誘惑にかられる可能性は十分にありえます。今、緊急に対策をとるべきは、このような対中国肥料全面依存状況の改善です。43兆円をミサイルを購入することに使用するのではなく、一刻も早くこのような状況を改善することに使用しないと、私たち日本国民はミサイルを抱えながら飢えることになります。事態はそれほど深刻なのかと疑う方もおられると思いますが、りん安肥料は令和2年7月から令和3年6月までの1年間に、約51万トンを海外から輸入しています。そのうちの46万トンを中国からの輸入に頼っているのです(残りはほぼ米国)。もし中国からの46万トンのりん安肥料供給が途絶した場合、他国からの代替輸入は、ほぼ絶望的です。と申しますのは、ロシアのウクライナ侵略のために世界中で肥料供給が減少しており、簡単に他国から買うということができなくなっているのです。ここで悪いお知らせをもう一つ、カリウム肥料の26%をロシアとロシアに追随しているベラルーシからの輸入にわが国は頼っています・・・何ということでしょう・・・
(注)農林水産省「肥料をめぐる情勢」令和4年4月
https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/attach/pdf/index-7.pdf