睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

眠れぬ夜のENDLESSと背徳の心地よさ・中野重治「歌」

2009-09-20 03:31:21 | アート(画・書・創作)

「怪我と弁当は自分持ち」と
建設現場を渡り歩くフリーターの彼は言う。
彼に「なんでそんなにしてまで山に行く、時代錯誤と違うか?」と聞いた。
“そこに山があるから”と二番煎じのセリフが返ってくるかと思いきや、
「惚れたオンナを押し倒す感じよ.....ひ~っひひ」と、だらしなく笑った。
なんとなく分る。

カッコ良くてスマートで洗練を好む風潮の中、彼みたいな無骨なヤツは少数派、
リスクをへとも思わない野生児なのだ。
彼の無垢な笑いは本物、嫌われることを怖れない彼の大粒の涙も本物、
へつらいと無縁な彼の言葉はもっと本物....かな?
ヤツはときどき可愛い嘘をつく(笑)

   [歌] 中野重治

  おまえは歌うな
  おまえは赤ままの花やとんぼの羽を歌うな
  風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな
  すべてのひよわなもの
  すべてのうそうそとしたもの
  すべてのものうげなものを撥き去れ
  すべての風情を擯斥せよ
  もつぱら正直のところを
  腹の足しになるところを
  胸さきを突きあげてくるぎりぎりのところを歌え
  たたかれることによつて弾ねかえる歌を
  恥辱の底から勇気を汲みくる歌を
  それらの歌々を
  咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌いあげよ
  それらの歌々を
  行く人びとの胸郭にたたきこめ


これも、あれも、草野心平の[冬眠]●に通ず。
ビオトープのふちに小さな蛙がとまっていた。
手をさし出すまもなく水面を渡りピョンと草むらに逃げた。
逃げるなカエルよ、おまえを生涯愛した心平のように、
私もカエルがすこし好きなのだ。

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隣家の庭にむくげの花が咲いていた。
むくげは漢字で一文字「槿」と書き、三好達治の詩集
「駱駝の瘤にまたがって」の中に槿の短い詩がある。

   [花木槿] 三好達治

  人に面(おもて)も見すまじき
  けふの心のかたくなを
  しかはあれどもよしとする
  ゆふべはしろき花木槿(はなはちす)


詩意はともかく、
語感のリズムの心地よさ、
Rose色に沈む夕暮に真っ白な槿の花が匂い立つようだ、
豪快な光晴もいいけど、世捨て人の達治もいい。

 

槿の画像は下記より拝借しました。
http://www.hana300.com/mukuge.html

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   [現金] 山之内獏

  誰かが
  女といふものは馬鹿であると言ひ振らしてゐたのである。
  そんなことはないのである。
  ぼくは大反対である。
  諸手を挙げて反対である。
  居候なんかしてゐてもそればかりは反対である。
  だから
  女よ
  だから女よ
  こつそりこつちへ廻はつておいで
  ぼくの女房になつてはくれまいか。


獏さんの詩を詠むと、金子光晴や田村隆一の[迷宮]がアタマに浮かび
旧い詩集や追悼本を引っ張り出す、やがてニザンやロルカにおよぶと
もうエンドレスのエンジン全開。
夜が更けるまで言霊を拾い集め眠たい朝を迎える。

メダカの画像をUPしようと思いながら、コーヒーを淹れにいく。
夜食は何にしようか冷蔵庫をのぞいたら、コロンバンのフルーツ
ロールケーキと長崎屋の
カステラを見つけた。

これを全部食べたら明日の朝、メタボとか成人病とかmy良心を刺激

するよなセリフが返ってくるな・・・。
えぇいままよ、と食べちゃった。

ついでに自家製のとろ~りと濃い梅酒をなみなみと注ぎ、
これでもかとロスマンズロイヤル(タール10mg)の封を切った。
夜中に不善を成す背徳の心地よさ。



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