父が病を得てから実家は玄関に鍵をかけるようになった。
例年なら熱帯夜が続く真夏は網戸で寝ていたのに、
その年はエアコンを入れ雨戸まで閉めきって床についている。
オヤジは「わしの身体がいうこときかんから」が口癖になり、
目でモノを云うようになった。
気骨ばりばりの火の玉のようなオヤジが家を守れない。
風に立つライオンも、老いさばらえ、朽ち果てる、
見つめる私もせつないが、誰もが必ず、通る道。
実家のすぐ近くで自殺があった。
知らない人ではないだけに痛ましい。
鬱病のその前兆はあったらしく、未明から地元の人たちが行方を探していた。
山側の排水が落ちるコンクリートの滝壷で息絶えていた。
死にたい人あらば、強く、生きたいと願う人あり。
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