梅雨あけ間近の暑いころ
母の手提げ金庫からお金を盗み家を出た
東海道本線に揺られ駅の待合室に眠り、朝もやにけぶる鳥取駅に着く
鳥取砂丘に立っていた
梨を売る店の、薄っぺらいシートがバタバタと風にたなびき
どんよりと重い雲が幾重も重なり水平線に溶けていた
日本海は茶色にうねり、流木を引き込み逆巻き、泡立つ波が岸を食む
台風が近づく浜辺は人っ子ひとりいない
腹の底から怖かった
来た道を一歩づつ噛みしめるように家へ帰る
母の真っ赤な目を見たときに、またひとつ、十五の覚悟が消えた
母は畳に座り、投げ出した足の親指に糸を張る
木のハンドルを回し、糸をたぐっては両手で捩る
捩って、捩って、細い糸に芯を入れる
はた織機があるでなし・・・、それでも母は糸を紡ぐ
親不孝をした。
母の手提げ金庫からお金を盗み家を出た
東海道本線に揺られ駅の待合室に眠り、朝もやにけぶる鳥取駅に着く
鳥取砂丘に立っていた
梨を売る店の、薄っぺらいシートがバタバタと風にたなびき
どんよりと重い雲が幾重も重なり水平線に溶けていた
日本海は茶色にうねり、流木を引き込み逆巻き、泡立つ波が岸を食む
台風が近づく浜辺は人っ子ひとりいない
腹の底から怖かった
来た道を一歩づつ噛みしめるように家へ帰る
母の真っ赤な目を見たときに、またひとつ、十五の覚悟が消えた
母は畳に座り、投げ出した足の親指に糸を張る
木のハンドルを回し、糸をたぐっては両手で捩る
捩って、捩って、細い糸に芯を入れる
はた織機があるでなし・・・、それでも母は糸を紡ぐ
親不孝をした。
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