睡蓮の千夜一夜

馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
坂口安吾の言葉「生きよ・堕ちよ」を拝す。

「木蓮の涙」と走馬灯

2018-01-29 21:59:04 | 唄は世につれ風まかせ




母が他界してしばらくは山の家に帰れなかった。
行くことは行っても、残されたメダカの世話と睡蓮鉢の
手入れが終わると、そそくさと戻る数年間だった。
ドアを開けられない。 

草ボウボウに生い茂る雑草と雨樋に下がるヘビの抜け殻、
庭のあちこちに開いてる穴ぼこ。
なにも見えないことにした。

'緩慢なる自死'に思える母の末期を黙認した自分が
腹立たしく、激しい後悔の念に囚われていた。
そんなある日転機が訪れた。

リーマンを引退した翌年に原因不明の著しい体調不良、
駐車場からエレーベータまでのわずかな距離が歩けない。
激しい動悸と呼吸困難に肩で息をしながら壁伝いに歩いた。

これで病院に行ったら即入院になる、
もし悪い病気だったらこのまま家に帰れないかもしれない。
病院のベッドが目に浮かぶ。

私たちを拝むように両手を合わせた父の涙
ありがとうの一言を残して逍遥と逝った母
かっこよすぎるじゃないか。
はじめてわんわん泣いて憑きが落ちたのさ。

一週間後には山の家の草むしりをしていた。
汗だくになって、泥んこになって、ドアの鍵を開けた。
ドアを開けたとたんぼわっとカビ臭に襲われ息を止めた。

玄関も天井も台所もカビだらけ。
窓の桟に積もる灰色のほこり。

山の家と自分の変っていくさまを記録にとどめたくて
ブログを始めた。
あれから9年が経ち、おかげさまで元気です。

唄は私の走馬灯。
 

「木蘭の涙~acoustic~」スターダスト☆レビュー【LIVE】



「吾亦紅」すぎもとまさと





最新の画像もっと見る

コメントを投稿