稚内機船漁協(風無成一代表理事組合長)は、昨年9月に創立50周年を迎え、このほど『稚内機船漁業協同組合50年史』を発行して関係先に配布した。
同漁協は、昭和47年(1972)に稚内機船漁協と宗谷機船漁協が合併して発足し、沖合底びき網を中心に道北最大規模の水揚げを誇った。しかし、昭和52年(1977)のソ連による200海里宣言によって東サハリンなどの好漁場を失い、大きな打撃を受け、度重なる減船を余儀なくされる。同時に日本海においては韓国の大型トロールによる乱獲で資源枯渇を招き、200海里適用運動によって全面撤退を勝ち取ったが、資源は簡単には戻らず、主要魚種のイカナゴ、スケソウの資源回復計画に取り組んできたが、低迷に悩まされた。名物のホッケに対して道、道総研の漁獲努力量3割削減勧告よりも早く自主規制に取り組み、TAC導入ではない漁業実態を反映した関係漁業者一体の「北海道スタイル」を認めるよう国に訴えている。
現状は5隻体制ながら、平成4年度(2022)の水揚げは1万7千㌧、18億円と前年を上回る水揚げをあげている。この間、ロシア漁場の喪失、資源の減少、燃油・資材高の三重苦にさらされながらも、加工・製氷・冷凍をはじめ、信用・共済事業を継続し、組合基盤の強化を図ってきた。特に信用事業の実施組合は業種別漁協としては特筆されるもので、3期15年間にわたる中期経営改善計画を達成し、自己資本比率34%を誇る。
3月末に出した50年史は、平成4年9月に発行した20年史に次ぐ2回目の組合史で、今回は主に平成時代から令和時代に入った組合と沖底漁業の歩みをまとめた。
50年史の本編は、第1部「生産体制の変遷(平成時代の稚内沖底)」第2部「稚内の沖底漁業の特徴、操業条件」、第3部「沖底漁業をめぐる漁政課題と取り組み」、第4部「稚内機船漁協の経営と財務の推移」、第5部「加工など特色のある事業の推移」という5部構成で、年表や事業のデータをまとめた資料編を含めB5判・224ページ、オールカラー。巻頭のグラビアページや「稚内沖底おぼれ話」(元漁撈長・中澤和一さん)など懐かしい写真や話も掲載している。
風無組合長は巻頭で「組合50周年記念に当たり、これまでの先人各位の努力を偲び、組合の歩みを次世代に正しく認識していただければ幸いです」と述べ、葛西英裕専務は編集後記で「この50年は、組合にとっても激動の歴史であり、更にこれからの水産業界も厳しい状況が続くと思われますが、これまでも難局を乗り越えてきた英知と努力により、今後60年、70年と将来に持続的な漁業を望むと共に更なる躍進を祈念し、後世に残せる一助をなれば幸いです」と結んでいる。
『稚内漁業協同組合50年史』の紹介記事が、日刊宗谷が出ました。