太平洋クロマグロの資源減少により、水産庁は「中西部太平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)の国際合意に基づき、今年1月から30キロ未満の小型魚の漁獲規制を行っている。わが国の年間漁獲の上限は4007トン。その配分は、沿岸漁業1901トン、大中巻き網2000トン、近海竿釣り漁業等106トン。全国を6ブロックに分け、ブロックごとに上限を設け漁獲量をモニタリングし、その数値を都道府県にフィードバックする。また、大中巻き網、近海竿釣り漁業等は漁業種類ごとに管理するというもの。
水産庁は、3月6日に27年1月分の30キロ未満の小型魚の漁獲量を343トンと発表。その内訳は、沿岸漁業(曳き縄、定置網等)94トン、大中巻き網246トン、近海竿釣り漁業等3トン。沿岸漁業者が口を揃えて指摘するように、圧倒的に巻き網の小型魚漁獲が大きいことを示している。
時期的に見て北日本の漁獲は少なく、北海道は皆無だった。道は3月17日札幌で説明会を開き、管理手法の検討状況、強度資源管理について水産庁の話を聞いた。すでに西日本で資源管理の取り組んでいるが、北海道はシーズンオフとあってほとんど手つかずの状態。北海道は太平洋北部と日本海北部の2ブロックに分かれ、ブロック内の配分については、太平洋北部の上限346トン(1年7か月)に対し83.4トン、日本海北部の同625トン(1年3か月)に対し53トンとなっている。小型魚の漁獲上限、管理方法などの合意に加え、細則を決めて警報や操業自粛要請を受けないよう調整を図る。
強度資源管理は、クロマグロの資源管理によって漁獲努力量を15%以上削減する漁業者に対し、漁業収入安定対策に特別措置を行うもので、5%以上の減収で「積立ぷらす」が発動する。水産庁は「クロマグロ対策に関し漁業収入安定対策(ぎょさい+積立ぷらす)以外に考えていない」とした。
今後の管理の進め方について、道は「上限値ではなく、目安量を設定して取り組む」方針。振興局ごとに関係者がが話し合い、目安量の配分と細則を決める。定置網の網上げ、はえ縄の休漁も想定されるが、メニューを考え、実行可能な措置を選択していくことになる。
説明会では、漁業者や漁協関係者から様々な質問、意見が出た。例えば、この規制がなくなるのはいつか?「10年間で資源を回復させる計画だが、国際漁業管理機関(WCPFC) で3年ごとに見直しをするので、3年間は続ける」。上限値を上回った場合は?「定置網など予想以上に小型魚が入ることも考えられ、超過分は翌年の上限値から差し引く」。その配分は全体責任か?「ブロック内の調整は関係道県、漁業者が話し合って決めてもらう」。逆に上限値を下回った場合はどうするのか?「余った分を翌年に回し上限値を増やすことはしない。ブロックごとの基本数字は変えないが、仮に大幅に下回り、加入資源が状態が続けば、より厳しい規制が出る可能性もある」。強度資源管理と言っても、どんどん水揚げが落ちていけば、共済金が下がる構造ではないのか?「いわゆる5中3(漁獲金額の最高と最低を除いた3年間の平均額を補償水準の基準とする)で右肩下がりになった場合はそうってしまう。しかし、今回の漁業管理で資源は回復するチャンスがある。未来永劫にこの形でやるわけでないので、必要に応じて見直しを検討する」。
漁業者からは「この数字は厳しく、漁業者は生きていけない」「浜からの要望は何ひとつ聞いてくれないのか」「一番弱い漁業者守るような措置をとってほしい」「海外の資源管理の手法を取り入れ、(巻き網の)漁獲規制をやったらどうか」といった意見も聞かれた。
最終的には、道が「 すでに1月から漁業管理はスタートしている。(前例がないので)実際にはどうなるかわからない。今年はまずやってみる。支障が出れば国に物申す。マグロに対する世間の注目度を考慮し、やらざるを得ない」(幡宮道水産林務部水産局長)と強調。
出席者も「マグロ資源が上向くのは浜も期待している。安易に上限値を超える事態は、資源管理の意味がなくなる。初年度、道の力を借りてしっかり取り組みたい」(蝦名北るもい漁協専務)と共通認識が確認された。
しかし、法的規制でない要請という形であれ、操業自粛という事態が発生すれば、どうなるのか。定置網の網上げやはえ縄の休漁はあるのか?戦々恐々というのが実情だ。長い話になったが、国際合意に基づく漁業管理措置なので単純には言えないが、「資源管理のあり方検討」で表舞台に立ったマグロ資源問題。沿岸、沖合、遠洋と複雑な漁業で同一資源を持続的に利用することの難しさを象徴している。現場の漁業調整は都道府県と漁業者の叡智に任される。国はせいぜい枠組みを決め、ホームページに掲載するだけ。有識者も現場には現れない。水産庁による説明会はすでに3回目とあって、これでお開きとなりそうだ。資源管理の成否は現場に託された。
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