8時半に出発したバスは9時25分タウテン、11時過ぎバンタドカンに着く。このころ洗面器をひっくり返したような大雨に見舞われる。メコン川を時折右手に見ながら平均速度40キロ位でバスは北北西に進んでいく。バーンペーンには昼の12時35分に到着。ノンカイまではあと136キロの標識が見える。午後1時15分バンピーの田舎町に。この辺りは検問が何回も繰り返される。その度に許可をもらいポールを挙げて進んでいく。ラオスとの相当の密貿易があるのか治安上の悪化のせいか?午後2時ノンカイまであと88キロの標識が見える。今度の検問はバスの下に積んでいる荷物のチェックである。乗客も行商人が圧倒的であることからしていわば闇の経済圏地帯なのであろう。3時過ぎにバンバッカパを過ぎ児童生徒がバスに乗り込んで途中で降りる下校すうる光景に移る。ノンカイまであと36キロ。それまでは一帯が疎林の原野かまばらな水田の景観であったがだんだん人家も増えてきて役所のような建物が見えてくると完全にノンカイ文化圏に入った感がする。バスもぎっしり混みだしてきた。初めからの乗客は私だけだった。
ノンカイのバスステーションに着いたのは午後4時を少し過ぎていた。腰が非常に痛かった。8時間余りの長旅笠道中ではあったがすわノンカイバスターミナルに着けばバスから降りる乗客は次のメカニズムに向かって点々バラバラ跡形もなく霧散してしまった。思えば生活を抱えてない漂泊者は私だけなのだ。
たいていの町でそうなのだがバスが着けば入り口まで「どこへいくんだ。」とサムローが取り囲んでくる。「バンコクだよ。」と答えれば「乗れ乗れ。」とバックと腕を引っ張る。まさかバンコクまでサムローで、という訳ではないだろうが「どこまで連れて行ってくれるのか?」と問い返せば「ノンカイ駅へ行けばいい。今からは汽車しかない。」と答える。汽車の旅も面白そうだがなにせ時間のない旅なのだ。何度か来ているノンカイでの見物はほどほどにして一気にバンコクへ南下しなければならない。「ブルーバスのオフィスに連れて行ってくれ。」と言うと「今日はバスはもうないよ。」と答える。先ほど降りたバスの男車掌の一人が私の方にやってきて「まだバスはあると思うがあそこの案内所で確かめたほうがいい。」と親切に教えてくれ、どこからか警察官も加わってブルーバスのオフィスを案内してくれた。この結末でサムローの運転手たちはサアーッと消えてしまった。ま ん が である。