こうの史代作「この世界の片隅に」(上・中・下)を読みました。
これは戦時下に広島から呉に嫁いだ娘さんの物語です。
第2次世界大戦の話しは、どれも惨たらしく眼を背けたくなる話しばかりなので、戦争と聞くと自然と心の中に高い垣根が出来て、そこから覗き見るような心持になりますが、この物語はそうではありません。
今の私達の生活と同じ視線で戦争が描かれています。ですから不意打ちされたように急に戦争が身近になります。日常に戦争が感じられます。
戦争の陰惨な描写もほとんどありませんが、だからより怖い。
いきなり深いところに痛烈な痛みを感じます。だからより悲しい。
8月15日に終戦の玉音放送を聞いて、納得がいかないと悔し泣きをする主人公と自分に何の境目もない事を気付かせてくれます。
この作品も読めば読むほど、深く心に沁みてきます。
名作です。是非ご一読を。