こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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伝わらない悔しさ。

2013-06-19 22:25:05 | 訪問看護、緩和ケア
長く関わっていて、一生懸命向き合って来た担当ナースが、日々の問題点をピックアップして、最近の問題をステーション内で検討したとき、それをどうしたらうまく周囲に伝えるのことができるのか、とても悩むことが多くあります。

長い関わりの中で、患者さんの置かれている状況も、患者さん自体の状態も少しづつ変わってきます。

自分ではなにもできず、チューブ類につながれていた状況から、地域で作ったチームの懸命の支援体制と、もちろん本人の頑張りで、びっくりするほど回復して、食事も食べられるようになり、もちろんチューブ類もとっくの昔に抜去して、往診ではなく電車に乗っての通院までできるようになる・・・。

ここまで聞けば、大成功のケースなのだけれど、実際にはその後だっていろいろなことは起こってくるのです。

回復して自立度が増せば、必然的に介護度は下がります。
実際は、ここからが問題になってくるのです。

今までたくさんの人が毎日訪れて、あれこれと世話をやき、心配して声をかけてくれていたものが、ある時期から突然自立を強いられるわけですから、本人の不安や負担は膨れ上がります。

だからこそ、徐々に自分で出来ることを増やしながら、自立した生活への準備を進めてきたのです。
案の定介護度はどんと下がり、それによって使えるサービスは激減するのです。

今まで毎日入っていたヘルパーも減ります。
訪問入浴は中止となり、訪問看護は生活支援のために30分に減らしました。

最初は何とか頑張っていても、やがて一人の時間を持て余すようになり、大好きだったお酒に手が伸びるようになります。
すると、飲んで寝てしまうので食事が取れません。
目が覚めれば、酔いの残った体では、ただでさえ面倒な食事の温めもしなくなり、また飲んで寝てしまいます。
すると、時間の観念はだんだん失われ、受診の日も忘れ目が覚めれば昼をとっくに過ぎている・・。もちろん薬なんて飲めません。
毎回、飲まなかった薬が山のように残ります。(この医療費はどこから出るのでしょうか。)

訪問に行くといつもまだ寝ていて、起こすと酒臭い息のまま、「淋しいんだよ。」と泣いたりすがったりすることが多くなってくるのです。

トイレに行くのも面倒なので、ポータブルトイレに排尿し、それを捨てることもなく朝までにあふれる寸前のバケツを、ヘルパーさんに捨てさせるのです。
ゴミは、ビールの空き缶でいっぱいになっていて、それを片付けるのもヘルパー任せになります。

こんなことを支えるのが自律を支援することなのか。

高齢になり、認知力もどんどん低下して、会話する相手もいないさみしさの中で、いくら自立しなさいといっても、それは難しいことです。
ましてその年まで、好きなようにその日暮しをされてきた背景があればなおのこと、支援の仕方はもっとほかにあると思うのですが・・。

伝わらないのです。

残念なことに。

あげく「管理するのではなく、支援しましょう。」と言われてしまった担当ナースは、もう本当にあんぐりですしがっかりです。
誰が管理をしようとしたのか。
「管理する。」と「支援する。」の意味は、言われなくても十分わかっています。

当の本人は、担当者会議で人が集まってくれて、それは上機嫌だったのでしょう。
「大丈夫。まだまだやれます。僕だって、いろいろ考えていますから!」と胸を張っていたそうです。

そうして決まったのが「区分変更」
区分変更をして、また人をたくさん増やすのだそうです。
再び往診も始まります。

でも・・お酒さえ飲まなければ、電車に乗って通院できます。
着替えもトイレも全部できます。
毎日ビールを買いに行けます。お弁当も買いに行けます。

独居で淋しいから、お酒を飲んじゃうから、それで低栄養になったから区分変更。

理解しがたいのは、私たちだけでしょうか?

ひとつの提案として、私は考えました。
声かけをすれば出来る人です。
話し相手が欲しいのです。
食事も声をかけて、一緒に食べてくれれば、美味しく食べれらます。
だれかの面倒も少しは見られて、自己の存在価値を見いだせれば、きっとまだまだ人生を楽しめるはず。

軽度の認知はあるけれど、ADLは自立しています。

質の良いグループホームの選択肢はどうでしょうか?

私たちは在宅療養の専門家です。
だからといって、在宅だけが全てではないと思っています。
適材適所。
家にいることを強く願い、確固たる信念のもとに在宅を希望されるのであれば、もちろんそれを支えます。
けれど、彼はみんなが帰ったあとに、「グループホームっていうの?見学に行ってみようかな。ずっと家なんて思ってないよ。」と看護師に言ったのです。

それをさっき言ってよね。

なんでうまく伝わらないのかな。
管理がしたいわけじゃないってこと。
支える意味が違うってこと。

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