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Mさんは、このまま一生残るはずだった気切孔をふさぐ手術を終え、次の段階である摂食訓練を本格的に行う事となっています。
病院での嚥下評価もまあまあだったので、1.5%のトロミ水からの開始です。
じゃあ1.5%ってどのくらい?
というわけで、実際にトロミの付き具合をみんなで試してみました。
簡単にトロミをつけるためのトロミ剤には、たくさん種類がありますが、今回栄養士の方がおすすめしてくれたのが、水・お茶用のトロミ剤「トロミアップパーフェクト」です。
![]() | トロミアップ パーフェクト 3g×50本 |
日清オイリオ | |
日清オイリオ |
トロミアップって昔はかなり不味くて、粉っぽいしダマニなるしであまりいい印象はなかったのですが、最近のものはそんなこともなくなり、使いやすくなっているようです。
今回の嚥下評価では、空気を飲み込んでしまう事や、若干ながら梨状陥凹に残ることもあり、1.5%のトロミ水からの直接訓練を開始することになっています。
今回どれなら飲みやすいかな?と言う事も検討し水とお茶でお茶作ってみることになりましたが、以前どうしてもビールを飲ませたいというご家族がいたことを思い出し、炭酸のジュースでも作ってみました。
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一番手前が1.5%の水です。
水150㏄に対して、トロミ剤0.75g(4分の1包)の割合です。
でも、お水よりも冷たいお茶のほうが美味しい!というみんなの意見でウーロン茶でも作成。
さらに3%、それ以上と作ってくれました。
びっくりしたのが炭酸ジュース。
トロミ剤を入れてかき混ぜた途端、モコモコモコモコと膨れ上がり溢れてきました。
「わー!!」と大騒ぎをしましたが、ある程度で止まり、写真のような感じになりました。
飲んでみての感想です。
1.5%でも結構トロミが強いと言う事です。
なので3%になると口の中でネトネトしてきて気持ちが悪い。
それ以上になると、口の粘膜にべったりくっついて、飲み込みずらくてかえって危険な感じ。
みんなトロミが嫌なはずですよね。正直まずいです。
ただ、お茶の1.5%以下なら何とか飲めそう。
炭酸ジュースもこういうデザートだと思えばまあいけるかも。
ビールは・・。
喉越し命なので、きっと残念な感じだと思います。
訓練方法としては、お口の中を清潔にして、うがいをしてから行う事。
直接訓練の前に、間接訓練を行う事。
関節訓練は、深呼吸、首のストレッチ、シャキア訓練(首上げ訓練)、咳払い、発声などを行い、その後トロミ水を飲む。
トロミ水は、20分以内に飲めるだけ行い、途中カラ咳や発声を入れること、背中をトントンしてげっぷを出すこと。とします。
しばらくこれで訓練をして、問題なければ次の形態へと移行していくわけですね。
まあ、あんまり楽しい訓練じゃないので、本人にはちょっと憂鬱かもしれませんね。
でも、誤飲性肺炎を繰り返し、イレウスも繰り返してきたMさんなので、今度こその思いを込めて周囲も愛のムチってところでしょうか。
早くもっとおいしいものが食べられて、IVHも終了できればいいのですが。
ちなみに、窒息事故を起こすこんにゃくゼリーですが、あれはちょど気管の太さにぴったりなのだそうです。
吸い込むような食べ方を、子供は良くしますから、何かの拍子にスポッと喉の奥にはまってしまったら、自宅ではどうにもなりませんね。
同じようにバナナも実は窒息事故になりやすいそうです。
良く潰すとか、子どものころからなんでも良くかむ習慣が大事ですね。
時々お子さんで、寝っころがりながら口に物を入れていたり、いわゆる「ながら食べ」をさせている親がいますね。
親の責任においてちゃんと座って食事に集中させることが、子供を守ることにつながるのだと言う事を、もっとわかってほしいですよね。
うちの子供は、小さい時から遊び食べ、ながら食べだけはさせませんでした。
それから、食事の姿勢ですが、臥床している方は60度程度ギャッチアップで(壁に座椅子で持たれてもいい)首は軽度前屈し、飲み込むことに集中します。
うちのおじいちゃんは、いつもテレビの方を向いたまま食べていて、何を食べているのかわからないんじゃないのかと思ってしまいす。時々「おじいちゃん!これ食べて!」とおきい声で呼びかけてはいますが・・。
今まで、ここまで丁寧な摂食訓練はしませんでしたが、Mさんはこれからまだまだ可能性を持っています。
どこにでも行けて、なんでも食べられるようになるという・・。
そのゴールに向けて、嚥下サポートチームは頑張ってくれています。
しかも、液体のままでは逆流して肺炎を起こしてしまったと言うことで、トロミを付けたラコールを15分おきにシリンダーで注入するという非常に面倒な方法をやらされましたっけ。
その後、嚥下専門の耳鼻科医が嚥下できていると診断してくれました。ただ、体力回復のために胃ろうからの栄養を続けた方が良いだろうと言うことで、続けておりましたが。
夏場のことで水を飲みたがるので、トロミを付けた水を飲ませたところ「この水腐っているぞ」と言っていたのはやはり不味かったのでしょう(笑)。
水くらいは飲ませても良いということなので、麦茶をストローコップで飲ませましたが、「あぁ美味い」と大変に喜んでいたのを覚えています。もしかしたらこれが最後の肺炎につながったのかも、と思わないでもありませんが、経口での摂取を禁じられたままよりは良かったのかなと思います。従姉の送ってくれたぶどうを喜んで食べていましたしね。
亡くなった免疫学者の多田富雄氏は、栄養は胃ろうで、好きなウィスキーはトロミを付けて嗜まれたそうで、トロミビールよりは飲みやすかったんでしょう。
胃瘻自体を造るか造らないかとか、IVHを入れるか入れないかとか。
何か良いかはわかりませんが、少なくともお父さんは、麦茶が何より美味しいって思えたのだから、結果オーライなんだと思いたいですね。
胃瘻の逆流を防ぐために、トロミを付けて注入する方法を「半固形化栄養」と言いますが、このトロミは経口用のトロミではなくて、粘度をつけます。
だいぶ以前に記事にもしましたが、これもいろんな方法があるんですよ。
それにしても、トロミのウイスキーは、どんな味するんでしょうねぇ・・。
半固形化栄養についてはPeg Doctor's Netのホームページで見て、本なども買ってみました。テルモだったかの栄養食品を試してみたら下痢もせず良好だったのですが、保険が利かないので結局ラコール使っていましたけどねぇ。
PDNのホームページに、食品用のトロミはすぐ胃液で溶けるので半固形にはならないという医師がおられましたが、やっぱり違うものなんですね。面倒な方法を押しつけた医師も多分PDNに入っていたはずなんですが・・・。
この医師は「(家族が行う)胃ろうなんて簡単だよ」と軽く言っていましたが、介護に精通した医師の存在ってやはり重要ですね。
参考までにですが、ラコールを固形化するには、イージーゲルがいいようです。
同じ大塚製剤なので、スムーズに固形化します。
栄養剤の中に含まれるカルシウムの量によって、固形化しやすかったり、しにくかったりします。
私たちは、ご家庭の経済状況や介護力や考え方によって、決めていきます。
いくつかの選択肢の中から選んでいただく方法です。
胃瘻の管理と言っても、やはりそんなに簡単なものではないですから・・・