「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
今宵また暮れゆく海をゆく船に さきはひあれと灯ともすわれは
富山市米田 高柳 芳夫
かねがね日本の燈台守の比較的世にも目立たぬ、そして忍苦に満ちた日常の生活を見聞きしていた私は、戦時中は時折いろいろな雑誌等にその実態ぶりを紹介されて国民の注目を引いていたこともあつたのに、敗戦後全く忘れられたようになつたのに心動き、平時にこそ益々これらの闇夜の海に光をかかげて生きる人達の労苦を称揚すべきであるとの一すじの思がいつしか凝って平和百人一首に寄せて詠んだものである。
作者である私自身は燈台守でも何でもない只、燈台守の世にも美しい、崇高なる犠牲的精神に満ちた、尊い日常の生活に打たれて、敢えて燈台守の身となつた、心となつて詠みあげたものである。
(芳夫)