「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
力限り働くはたのし朝風に 曳き出づる馬はいななきにけり
埼玉県上町 保永 不沙夫
かつて千葉の開墾地に友を訪ね、雄大なる自然に抱かれて過した折を追憶しての作品である。
すべて二十九戸しかない、まだ狐の出る小、それ故に人はもちろん、馬も、牛も、兎も、鶏もがこよなく懐かしい。
丁度秋の忙しい収穫時であり、野良仕事を手伝つては力限り働いた。
よく眠れた朝のすがしさに、脳の髄まで沁み入る秋風がうれしく、思はず心もはづんで曳き出す馬が、快晴を中へ告げるかのように嘶いた。
この時、土に生きる喜びをしみじみと感じそれがこの一首として成立つたのである。
(不沙夫)