「道の学問・心の学問」第三十一回(令和2年12月18日)
伊藤仁斎に学ぶ③
「仁の成徳、其の利沢恩恵、遠く天下後世に被るに足って極まれり。」
(『童子問』上巻第四十七章)
仁斎は、「仁とは徳の長(最上位)であり、学問が仁に至る時には衆徳合奏(全ての徳が合わさって備わる)する。」「仁を外にしては所謂学問と言うものは無い。」と述べ、仁を身に備える事こそが、孔子が求めた道であるという。
ここで注意すべきは、仁とは、個々人の性情に備わるのみならず、究極は、仁によって世界人類、更には後世の人々に迄恩沢を及ぼす事を、目標としている点である。孔子が、春秋時代の覇者である斉の桓公の宰相を務めた管仲の事を仁者と評したのは、管仲の政治によって後世の人々が恩恵や利沢を被ったからだと、仁斎は説明する。仁斎は言う。「仁の成徳は、其の利沢や恩恵が、遠く後世に迄被る事が出来る様になる事を、その極みとする。」と。
儒学が老荘や仏教と一線を画するのは、あくまでも人間社会の中に生き、社会をより良き方向へと導く事を学問の目的にしている点にある。儒学には「遁世」「厭世」や「出家」は有り得ない。政治に積極的に関与して、政治を通して社会や国家を変えて行く事を、自らの使命としている。それ故、例え個人として「忠」や「清」を貫いても、その事による「利沢」が他者に及ばない様であれば、その人物は「仁」とは言えないとする。
我々が、心を常に温かく持って人に接し、思いやりの心で人に親切を行っていても、ただそれだけでは自己満足に過ぎない。仁は個人から家、集団、社会、国家、天下まで広がって行かなければ本物にはならない。その意味で、政治に関心を抱き、政治の正常化の為に尽力する事は大いなる「仁」の業に他ならない。
それ故仁斎は言う。「孔子様から今に至るまで二千年以上の時が経つが、中国全土に於て、人々が善を善として悪を悪とし、君臣父子夫婦昆弟朋友の交わりに於いては、各々其道徳を守り、野蛮な風俗に染まらないでいるのは、悉く孔子様が人間の有り方についての教えを定められたからである。人々は皆孔子様の教えの中で生きていながら、孔子様の教えが実に偉大である事を知らないでいる。」と。孔子の教えが今日の倫理道徳の基礎となっている事を考えれば、我々も又、孔子の「仁」による利沢恩恵を被っているのである。
内村鑑三になぞらえば、「後世への最大遺物」を我々が残す事が出来た時、初めて真の「仁者」となり得るのである。
伊藤仁斎に学ぶ③
「仁の成徳、其の利沢恩恵、遠く天下後世に被るに足って極まれり。」
(『童子問』上巻第四十七章)
仁斎は、「仁とは徳の長(最上位)であり、学問が仁に至る時には衆徳合奏(全ての徳が合わさって備わる)する。」「仁を外にしては所謂学問と言うものは無い。」と述べ、仁を身に備える事こそが、孔子が求めた道であるという。
ここで注意すべきは、仁とは、個々人の性情に備わるのみならず、究極は、仁によって世界人類、更には後世の人々に迄恩沢を及ぼす事を、目標としている点である。孔子が、春秋時代の覇者である斉の桓公の宰相を務めた管仲の事を仁者と評したのは、管仲の政治によって後世の人々が恩恵や利沢を被ったからだと、仁斎は説明する。仁斎は言う。「仁の成徳は、其の利沢や恩恵が、遠く後世に迄被る事が出来る様になる事を、その極みとする。」と。
儒学が老荘や仏教と一線を画するのは、あくまでも人間社会の中に生き、社会をより良き方向へと導く事を学問の目的にしている点にある。儒学には「遁世」「厭世」や「出家」は有り得ない。政治に積極的に関与して、政治を通して社会や国家を変えて行く事を、自らの使命としている。それ故、例え個人として「忠」や「清」を貫いても、その事による「利沢」が他者に及ばない様であれば、その人物は「仁」とは言えないとする。
我々が、心を常に温かく持って人に接し、思いやりの心で人に親切を行っていても、ただそれだけでは自己満足に過ぎない。仁は個人から家、集団、社会、国家、天下まで広がって行かなければ本物にはならない。その意味で、政治に関心を抱き、政治の正常化の為に尽力する事は大いなる「仁」の業に他ならない。
それ故仁斎は言う。「孔子様から今に至るまで二千年以上の時が経つが、中国全土に於て、人々が善を善として悪を悪とし、君臣父子夫婦昆弟朋友の交わりに於いては、各々其道徳を守り、野蛮な風俗に染まらないでいるのは、悉く孔子様が人間の有り方についての教えを定められたからである。人々は皆孔子様の教えの中で生きていながら、孔子様の教えが実に偉大である事を知らないでいる。」と。孔子の教えが今日の倫理道徳の基礎となっている事を考えれば、我々も又、孔子の「仁」による利沢恩恵を被っているのである。
内村鑑三になぞらえば、「後世への最大遺物」を我々が残す事が出来た時、初めて真の「仁者」となり得るのである。
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