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宇宙航空研究開発機構・相模原キャンパスで「はやぶさ:HAYABUSA」のロケを見学した4月30日(土)。
それ以来、映画の封切を一日千秋(いちじつ・せんしゅう)の思いで待っていたのです。
10月1日(土)、その日です。封切の初回を観てきました。
さて、JAXAで撮影を見学させて貰ったのは、宇宙科学研究所(現・宇宙航空研究開発機構 JAXA)の対外協力室(以下、協力室)の2シーンです。
萩原研究室研究生の水沢 恵(竹内 結子:たけうち・ゆうこ)が協力室に採用されてから、研究所内に展示してある「はやぶさ」などの模型を見学して質問する人に対応する相談員をしているとき、「イオン・エンジンの原理」を問われた小学生に説明するのですが、専門用語を並べ立てる解説に「ちんぷん・かんぷん」のまま小学生は帰ってしまう。それで、だれにでも解る説明をしようと決心した彼女は、その向学心を満たす情報の所在を協力室長・的場 泰弘(西田 敏行)に、教示を願うシーン。
もうひとつは、「はやぶさ」を「イトカワ」に着陸させる際、燈台機能を担う「ターゲット・マーカー」に、世界149カ国から『星の王子さまに会いに行きませんか』ミリオンキャンペーンへの応募が約88万人あり、その名前を刻んだ横8mm、縦12mmの50枚のフイルムを、多層断熱材にエッチングして、マーカーのアルミ球と反射布の間に挟みこんだことを説明する場面。
このシーンでスティーブン・スピルバーグや長島茂雄が応募したことが分かります。ターゲト・マーカーへ登録を承認した人の中には、星野仙一監督、衣笠祥雄もいたようです(JAXAWebサイトより)。
さて、撮影準備に追われるスタッフの邪魔にならないように、本番前の慌しい雰囲気を肌で感じられる現場でした。
小学生に向学心を点火された恵が、ガソリンとなる資料の在りかを的場室長へ伺うシーンを見学した時は、カメラのファインダーを覗けませんから、西田敏行と竹内結子との演技を観るだけでした。
ところで、堤(つつみ)幸彦監督の映画創りは、カットを積み重ねるスタイルのようです。
室長と恵との絡みをロケ現場で見学しているので、それは映画を観た時に解りましたが、堤組映画の特徴を「はやぶさ」のプログラムから引用して紹介します。
「段取り打合せで細部にまで指示を出すと、監督はモニターのある別室に移動。本番はモニターからチエックし、俳優やスタッフへその後の指示は放送で出す。もちろん『アクション』『カット』の声もスピーカー越し。そして、監督のモニターの隣では早くも編集が行われている」
JAXAに係わりのある知人の尽力もあり、別室への入室が了承されましたので、プログラムに紹介されている堤組の現場を見学させて貰う機会を得たのです。
「映画好きの元気印さんには、またとない体験でしたね。Webに公開する動画を撮影・編集している今の仕事に、大いに役立っているのですから、堤監督の厚意に感謝しなくては・・・」
「百聞は一見に如かず、です。観音さま。堤監督とスタッフの皆さん、有難うございました」
さらに、堤組のカメラは常に2台まわっており、1時間で9カットを撮ることなどが、プログラムに記載されています。
恵を演じた竹内 結子は、「チーム・バチスターの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」に出演していたのですが、「はやぶさ」のプログラムを読んで気が付く間抜けさ。メガネを掛けた彼女の澄んだクリクリ眼(まなこ)には、観客の心を奪う憑神(つきがみ)が潜んでいるようです。ちなみに、元気印の目はどんぐり目。自称「つぶらな瞳」ですが・・・。
「恵役の彼女は気になる存在になりましたか、元気印さん」
それにも増して、宇宙科学研究所の臨時社員でありながらカメラチームリーダー坂上 健一を熱演した高嶋 政宏がよかった。
もう一人います。熱狂的な「はやぶさフアン」を演じた生瀬 勝久(なませ・かつひさ)も見逃せません。
ユーモアタップリに彼の数カットに込めた堤監督の熱いメッセージが、それも彼が変身する様子はカットだけで提示されています。はやぶさが帰還する物語に奥行きを感じさせる、心憎い作戦ですよ。
なにはともあれ、日本の宇宙開発の歴史、はやぶさの全て、地球からイトカワまで片道3億kmの旅に出発して地球へ帰還するまでの7年に亘る「はやぶさ」プロジェクトチームの悪戦苦闘、「はやぶさ」の顛末を見守る一般人などが描かれている「はやぶさ:HAYABUSA」でした。
無事、地球に帰還するのは、「イトカワ」から採取したサンプルを収納した「帰還カプセル」(写真中央にある銀色の部分)だけです。大気圏に再突入する「はやぶさ君」に最後のミッションを行わせたプロジェクトマネージャー・川渕 幸一(佐野 史郎)の心意気が一緒に味わえる映画です。
満身創痍のはやぶさは、相次ぐ7種類のトラブルに襲われるのです。
その都度、「はやぶさ」プロジェクトを担う専門分野のメンバーからは技術に裏づけられた解決策、逆転の発想からも提案がなされ、プロジェクトマネージャーはそれらに対して結論を下さねばなりません。勇気ある決断は速やかに担当チームが実施してその結果を確認します。崩壊寸前意まで追い込まれたプロジエクトの継続をもたらし、危機一髪の事態を乗り越えた「はやぶさ」は、7年間で60億kmにも及ぶ宇宙大航海を成し遂げたのです。
2年4か月の命を与えられた「はやぶさ」は5年も永らえ、昨年6月13日にその生涯を閉じたことは世界中の人々が知っています。
そこには、想定外のトラブルは存在しないのでした。
小惑星からサンプリングして帰還させることを任務とした「はやぶさ」プロジエクトチームが共有する認識は、想定されるトラブルへの対策を事前に講じること、予期しないトラブルに見舞われても、最後まで諦めないで粘ることでした。失敗することは、そのプロジエクトの研究開発に必要な予算が皆無になる背景があります。しかしです、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還できたのは、前人未到の任務だからこそ付きまとうトラブルが解決するまでは絶対に諦めず、最後まで粘り抜いた技術者たちの戦いの成果でした。
「元気印さん、原子力村の住民が捏造した安全神話は、もう、誰も信じていませんよ」
ボケ封じ観音さまの呟きに、なぜか説得力がありますね。
小惑星のサンプルを地球に持ち帰る「サンプルリターン」の技術実証を目的とした「はやぶさ」のミッションは、世界初の兆戦
でもあったから、「はやぶさ、そうまでして君は」(宝島社刊 川口淳一郎著)から抜粋します。
1.イオンエンジンという新しい推進機関による惑星間航行
2.遠く離れた宇宙空間での自律誘導航法
3.微小重力の小惑星でサンプル採取
4.イオンエンジンを使用した地球スイングバイ
5.カプセルによる大気圏再投入
小惑星探査機「はやぶさ」の顛末は、多くの人がご存知でしょう。
そう言ってみても、「はやぶさ」が与えてくれた感動と勇気、そして、希薄になっている日本人の誇りと情熱を呼び覚ましてくれたことです。
この映画を観て、それを再び呼び起こす楽しみに浸っても良いのでは、との気持ちが筆を走らせてしまい、本稿を書いた次第です。
余計なお世話で恐縮ですが、ことの顛末を知っている「はやぶさ・おたく」であっても新しい発見があるはず。
他方、予備知識がなくても、既述した5項目のミッションを遂行する任務を課せられたが故に、工学実験探査機とも呼ばれる「はやぶさ」に付与された技術を生み出した日本人が持っている底力の根源が分かり、自信と勇気が湧いてくる映画です。
このコーナーには、観賞した映画がもたらす余韻で千鳥足になって、勝手気ままに思い浮かぶ映画話を書いていきますので、気軽に立ち寄ってくださると有難いです。
それ以来、映画の封切を一日千秋(いちじつ・せんしゅう)の思いで待っていたのです。
10月1日(土)、その日です。封切の初回を観てきました。
さて、JAXAで撮影を見学させて貰ったのは、宇宙科学研究所(現・宇宙航空研究開発機構 JAXA)の対外協力室(以下、協力室)の2シーンです。
萩原研究室研究生の水沢 恵(竹内 結子:たけうち・ゆうこ)が協力室に採用されてから、研究所内に展示してある「はやぶさ」などの模型を見学して質問する人に対応する相談員をしているとき、「イオン・エンジンの原理」を問われた小学生に説明するのですが、専門用語を並べ立てる解説に「ちんぷん・かんぷん」のまま小学生は帰ってしまう。それで、だれにでも解る説明をしようと決心した彼女は、その向学心を満たす情報の所在を協力室長・的場 泰弘(西田 敏行)に、教示を願うシーン。
もうひとつは、「はやぶさ」を「イトカワ」に着陸させる際、燈台機能を担う「ターゲット・マーカー」に、世界149カ国から『星の王子さまに会いに行きませんか』ミリオンキャンペーンへの応募が約88万人あり、その名前を刻んだ横8mm、縦12mmの50枚のフイルムを、多層断熱材にエッチングして、マーカーのアルミ球と反射布の間に挟みこんだことを説明する場面。
このシーンでスティーブン・スピルバーグや長島茂雄が応募したことが分かります。ターゲト・マーカーへ登録を承認した人の中には、星野仙一監督、衣笠祥雄もいたようです(JAXAWebサイトより)。
さて、撮影準備に追われるスタッフの邪魔にならないように、本番前の慌しい雰囲気を肌で感じられる現場でした。
小学生に向学心を点火された恵が、ガソリンとなる資料の在りかを的場室長へ伺うシーンを見学した時は、カメラのファインダーを覗けませんから、西田敏行と竹内結子との演技を観るだけでした。
ところで、堤(つつみ)幸彦監督の映画創りは、カットを積み重ねるスタイルのようです。
室長と恵との絡みをロケ現場で見学しているので、それは映画を観た時に解りましたが、堤組映画の特徴を「はやぶさ」のプログラムから引用して紹介します。
「段取り打合せで細部にまで指示を出すと、監督はモニターのある別室に移動。本番はモニターからチエックし、俳優やスタッフへその後の指示は放送で出す。もちろん『アクション』『カット』の声もスピーカー越し。そして、監督のモニターの隣では早くも編集が行われている」
JAXAに係わりのある知人の尽力もあり、別室への入室が了承されましたので、プログラムに紹介されている堤組の現場を見学させて貰う機会を得たのです。
「映画好きの元気印さんには、またとない体験でしたね。Webに公開する動画を撮影・編集している今の仕事に、大いに役立っているのですから、堤監督の厚意に感謝しなくては・・・」
「百聞は一見に如かず、です。観音さま。堤監督とスタッフの皆さん、有難うございました」
さらに、堤組のカメラは常に2台まわっており、1時間で9カットを撮ることなどが、プログラムに記載されています。
恵を演じた竹内 結子は、「チーム・バチスターの栄光」「ジェネラル・ルージュの凱旋」に出演していたのですが、「はやぶさ」のプログラムを読んで気が付く間抜けさ。メガネを掛けた彼女の澄んだクリクリ眼(まなこ)には、観客の心を奪う憑神(つきがみ)が潜んでいるようです。ちなみに、元気印の目はどんぐり目。自称「つぶらな瞳」ですが・・・。
「恵役の彼女は気になる存在になりましたか、元気印さん」
それにも増して、宇宙科学研究所の臨時社員でありながらカメラチームリーダー坂上 健一を熱演した高嶋 政宏がよかった。
もう一人います。熱狂的な「はやぶさフアン」を演じた生瀬 勝久(なませ・かつひさ)も見逃せません。
ユーモアタップリに彼の数カットに込めた堤監督の熱いメッセージが、それも彼が変身する様子はカットだけで提示されています。はやぶさが帰還する物語に奥行きを感じさせる、心憎い作戦ですよ。
なにはともあれ、日本の宇宙開発の歴史、はやぶさの全て、地球からイトカワまで片道3億kmの旅に出発して地球へ帰還するまでの7年に亘る「はやぶさ」プロジェクトチームの悪戦苦闘、「はやぶさ」の顛末を見守る一般人などが描かれている「はやぶさ:HAYABUSA」でした。
無事、地球に帰還するのは、「イトカワ」から採取したサンプルを収納した「帰還カプセル」(写真中央にある銀色の部分)だけです。大気圏に再突入する「はやぶさ君」に最後のミッションを行わせたプロジェクトマネージャー・川渕 幸一(佐野 史郎)の心意気が一緒に味わえる映画です。
満身創痍のはやぶさは、相次ぐ7種類のトラブルに襲われるのです。
その都度、「はやぶさ」プロジェクトを担う専門分野のメンバーからは技術に裏づけられた解決策、逆転の発想からも提案がなされ、プロジェクトマネージャーはそれらに対して結論を下さねばなりません。勇気ある決断は速やかに担当チームが実施してその結果を確認します。崩壊寸前意まで追い込まれたプロジエクトの継続をもたらし、危機一髪の事態を乗り越えた「はやぶさ」は、7年間で60億kmにも及ぶ宇宙大航海を成し遂げたのです。
2年4か月の命を与えられた「はやぶさ」は5年も永らえ、昨年6月13日にその生涯を閉じたことは世界中の人々が知っています。
そこには、想定外のトラブルは存在しないのでした。
小惑星からサンプリングして帰還させることを任務とした「はやぶさ」プロジエクトチームが共有する認識は、想定されるトラブルへの対策を事前に講じること、予期しないトラブルに見舞われても、最後まで諦めないで粘ることでした。失敗することは、そのプロジエクトの研究開発に必要な予算が皆無になる背景があります。しかしです、小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還できたのは、前人未到の任務だからこそ付きまとうトラブルが解決するまでは絶対に諦めず、最後まで粘り抜いた技術者たちの戦いの成果でした。
「元気印さん、原子力村の住民が捏造した安全神話は、もう、誰も信じていませんよ」
ボケ封じ観音さまの呟きに、なぜか説得力がありますね。
小惑星のサンプルを地球に持ち帰る「サンプルリターン」の技術実証を目的とした「はやぶさ」のミッションは、世界初の兆戦
でもあったから、「はやぶさ、そうまでして君は」(宝島社刊 川口淳一郎著)から抜粋します。
1.イオンエンジンという新しい推進機関による惑星間航行
2.遠く離れた宇宙空間での自律誘導航法
3.微小重力の小惑星でサンプル採取
4.イオンエンジンを使用した地球スイングバイ
5.カプセルによる大気圏再投入
小惑星探査機「はやぶさ」の顛末は、多くの人がご存知でしょう。
そう言ってみても、「はやぶさ」が与えてくれた感動と勇気、そして、希薄になっている日本人の誇りと情熱を呼び覚ましてくれたことです。
この映画を観て、それを再び呼び起こす楽しみに浸っても良いのでは、との気持ちが筆を走らせてしまい、本稿を書いた次第です。
余計なお世話で恐縮ですが、ことの顛末を知っている「はやぶさ・おたく」であっても新しい発見があるはず。
他方、予備知識がなくても、既述した5項目のミッションを遂行する任務を課せられたが故に、工学実験探査機とも呼ばれる「はやぶさ」に付与された技術を生み出した日本人が持っている底力の根源が分かり、自信と勇気が湧いてくる映画です。
このコーナーには、観賞した映画がもたらす余韻で千鳥足になって、勝手気ままに思い浮かぶ映画話を書いていきますので、気軽に立ち寄ってくださると有難いです。
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