「――久しぶりだな氷河よ」
唐突な師との再開に、氷河は当惑していた。
「カ…カミュ、なぜあなたがここに? 水瓶座のあなたがここにいる以上、ここは宝瓶宮なのですか…」
氷河は師と辺りを見比べた。
「違う! 宝瓶宮はまだずっと先だ! ここは7番目の宮、天秤宮だ!」
天秤宮の名には訊き覚えがあった。
「て、天秤宮といえば紫龍の師である老師の…」
紫龍から伝え聞いた天秤宮の黄金聖闘士の姿を思い描いた。
「そうだ、本来なら五老峰の老師が預かるこの天秤宮だが、老師は長い間…廬山を動かん、いわばここは無人の宮」
無表情に告げる師の姿を氷河は呆然とした面持ちで見つめていた。
「そ…その天秤急に、なぜあなたが…」
12の宮はそれぞれの名を冠せられた黄金聖闘士が守護しているはずだ。
自身が護る以外の宮に黄金聖闘士が立ち入るとは、奇異な気がする。
「氷河、お前をここで止めるためよ!」
全身を凍りつかせるような双眸で見据えられ、氷河は身を竦ませながら師の言葉に耳を傾けていた。
「師である私の命令だ! これ以上…先に進むな! 死にたくなければここで止まれ氷河」
「そ…それは…残念ながら師のお言葉でも従うわけにはいきません…」
友でも兄弟でもある星矢たちが、巨大な敵と相対しているのを尻目に、氷河だけがその戦闘から退くわけにはいかない。
適わぬまでも氷河が敵に与えた一撃が、星矢たちの勝利の一因になるのなら、氷河は闘う。
「ならば力をもって止めねばならないか…」
師が言葉を切るのと同時に、氷河の背に悪寒が奔っていた。
避けることも受けることもできなかった。
吹き荒れるブリザードに打ち倒されるように氷河は石畳に叩きつけられていた。
「来い、氷河…進むためにはこの私を倒さねばならないのだぞ…」
師の言葉に、氷河は呻いた。
「そ…それも、それもできません」
氷河は上体を起こした。
「師であるあなたに拳を向けることは…」
師であるカミュに拳を向けることなどは、考えたこともなかった。
「続く」
唐突な師との再開に、氷河は当惑していた。
「カ…カミュ、なぜあなたがここに? 水瓶座のあなたがここにいる以上、ここは宝瓶宮なのですか…」
氷河は師と辺りを見比べた。
「違う! 宝瓶宮はまだずっと先だ! ここは7番目の宮、天秤宮だ!」
天秤宮の名には訊き覚えがあった。
「て、天秤宮といえば紫龍の師である老師の…」
紫龍から伝え聞いた天秤宮の黄金聖闘士の姿を思い描いた。
「そうだ、本来なら五老峰の老師が預かるこの天秤宮だが、老師は長い間…廬山を動かん、いわばここは無人の宮」
無表情に告げる師の姿を氷河は呆然とした面持ちで見つめていた。
「そ…その天秤急に、なぜあなたが…」
12の宮はそれぞれの名を冠せられた黄金聖闘士が守護しているはずだ。
自身が護る以外の宮に黄金聖闘士が立ち入るとは、奇異な気がする。
「氷河、お前をここで止めるためよ!」
全身を凍りつかせるような双眸で見据えられ、氷河は身を竦ませながら師の言葉に耳を傾けていた。
「師である私の命令だ! これ以上…先に進むな! 死にたくなければここで止まれ氷河」
「そ…それは…残念ながら師のお言葉でも従うわけにはいきません…」
友でも兄弟でもある星矢たちが、巨大な敵と相対しているのを尻目に、氷河だけがその戦闘から退くわけにはいかない。
適わぬまでも氷河が敵に与えた一撃が、星矢たちの勝利の一因になるのなら、氷河は闘う。
「ならば力をもって止めねばならないか…」
師が言葉を切るのと同時に、氷河の背に悪寒が奔っていた。
避けることも受けることもできなかった。
吹き荒れるブリザードに打ち倒されるように氷河は石畳に叩きつけられていた。
「来い、氷河…進むためにはこの私を倒さねばならないのだぞ…」
師の言葉に、氷河は呻いた。
「そ…それも、それもできません」
氷河は上体を起こした。
「師であるあなたに拳を向けることは…」
師であるカミュに拳を向けることなどは、考えたこともなかった。
「続く」