JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
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経費削減SS (一輝と猫22)

2013-09-03 03:25:00 | ノンジャンル
 瞼を開き、最初に目にしたのは氷河の顔であった。
 なぜだか解らぬが、氷河はとても不機嫌そうな表情をしていた。
「キサマ、なんのつもりだ」
 出し抜けに掛けられた言葉に、一輝は眉を顰めた。
 一輝は午睡から覚めたばかりであった。
 久し振りに熟睡はしたが、その夢の内容は、珍無類としかいいようのないものであった。
 猫が人間になり、食の改善を求めるとは--自分でも、よくあんな夢を見たものだと思う。
「いつまで呆けている気だ、しゃんとしろ、しゃんと」
 氷河の冷たい口調に、一輝は物思いから我に返った。
「誰が呆けておるだと? キサマ、オレを誰だと--」
「なら、コレはどういうことだ」
 氷河の視線を追うように部屋を見回した一輝は、自分で自分の顔色が変わるのが解った。
 部屋の中は竜巻が行き過ぎたような、見るも無残な変貌を遂げていた。
「これは…」
 一輝は自分の寝ていたベットと、部屋の惨状を見比べた。
 一輝は猫と化した老人に、闇の世界に誘(いざな)われたと思っていた。が、実際に誘われたのは精神だけで、肉体はここで眠っていただけ、ということが解った。
 一輝は闇の空間で、何度か老人に拳を叩き込んだ。
 精神と肉体はつながっているから、一輝は無意識のうちに部屋に拳を叩き込んでいたという事になる。
「見ろ、この有り様を。お前は呑気に眠っていて解らんだろうが、外にもガラスが吹っ飛んで、部屋もこの通りだ。人的被害はないが、ガス爆発か何かだと思われて、もうすぐ消防車がやってくる。いいか、よく聞け! 消防車が出動するということは、もれなく警察も一緒にやってくる、ということだッ!」
「いや、これには訳が…」
“怒り心頭”を絵に書いたような氷河に、一輝は声をかけた。
「訳? 寝ぼけた訳か? オレが知るかッ、この部屋はお前が片付けて、沙織さんへの言い訳もお前がしろッ」
 言いたいことだけを口にし、氷河は一輝に背を向けた。
「待て、お前はどこに…」
 バックを手にした氷河に、一輝は怯えた。
 部屋の片付けに、消防署と警察の事情聴取だという。そういう面倒なことは、氷河に任せることに一輝は決めているのだ。
「城戸邸だ、こんな場所で仕事が出来るかッ」
 一輝は着替えとパソコンを詰め込んだバックと、猫が入ったゲージを持ち、部屋を出る氷河の姿に目を見張った。
 ゲージの中で、猫は険悪な眸を一輝に向けていた。
「猫は置いていけ、猫は…」
 猫と引き離されたのでは、猫に化けた老人との約束を果たすことができない。
「キサマに猫の面倒が任せられるか」
 氷河は冷たい一瞥を残し、部屋を出て行った。
--おい、猫よ…。
 一輝はゲージから出ようと暴れる猫の姿を想い描きながら、心中、呼びかけた。
--オレが悪いのではないぞ。恨むのなら、安易にゲージに入った己の愚かさを恨め。だから帰ってきても、決してオレに当たるのではないぞ。
 険悪な表情を浮かべ、睡眠を尽(ことごと)く邪魔をした猫の姿を思い浮かべながら、他人の精神を読めるという猫と姿をした老人に、一輝は呼びかけずにはいられなかった。

END

 長々とすみません。

 最大の失敗は、下書きをしないで書き始めたことでした(もっと早く終わる予定だったのに)
 此の次は、ちゃんと下書きをしてからカキコしますね☆