数日前の放課後、瞬は兄の小宇宙を感じたことがあった。
威力を最小限に押さえた鳳凰幻魔拳――。
氷河の様子がおかしくなったのは、それからであった。
以前は兄との間に張り巡らされていた透明なバリアーが溶け、氷河の兄に対する険も薄れたような気がする。
まさか、とは思う。
兄が凝りもせず、氷河に幻魔拳を撃ち込んだなどとは思いたくなかった。
だが、兄ならやりかねないことであった。
「何かをされたなどと…失礼な。オレが、こいつに何をするというのだ」
一輝が瞬に射るような視線を向けた。
「いろーんなことをしたよね? ボクにも、聖矢にも、紫龍にも」
瞬が一輝を睨み返した。
「落ち着け瞬、オレは一輝になにもされていないから。今日だって、オレから声を掛けたんだ」
険悪な雰囲気を醸し出す二人に、氷河は慌てた。
「なんで、氷河が兄さんを庇うの?」
兄と氷河の間にあった出来事を思えば、素肌を晒す入浴を一緒に、というのは考えられない。やはり、不意を突かれた幻魔拳にかかっているとしか、考えられない。
聖闘士の死闘は女神によって禁じられている。真面目な氷河はそれを守るにしても、不真面目な兄がそれを守るとは思えない。
屋上で騒ぎを起こしたときに、氷河が目当てで、この山深い学園に編入したと公言した兄であった。
「それは――」
氷河が瞬から視線を逸らせた。
「城戸が怖がりだからじゃあねぇ?」
傍らからの声に、瞬が不審げに眉を顰めた。
声の主は、氷河と同室の生徒・古賀であった。
「なんで氷河が怖がりなの?」
氷河は聖闘士だ。人知れず、女神と共に地上を護った戦死であった。
その氷河を“怖がり”とは――自分の名誉も傷つけられたような気がした。
「続く」
威力を最小限に押さえた鳳凰幻魔拳――。
氷河の様子がおかしくなったのは、それからであった。
以前は兄との間に張り巡らされていた透明なバリアーが溶け、氷河の兄に対する険も薄れたような気がする。
まさか、とは思う。
兄が凝りもせず、氷河に幻魔拳を撃ち込んだなどとは思いたくなかった。
だが、兄ならやりかねないことであった。
「何かをされたなどと…失礼な。オレが、こいつに何をするというのだ」
一輝が瞬に射るような視線を向けた。
「いろーんなことをしたよね? ボクにも、聖矢にも、紫龍にも」
瞬が一輝を睨み返した。
「落ち着け瞬、オレは一輝になにもされていないから。今日だって、オレから声を掛けたんだ」
険悪な雰囲気を醸し出す二人に、氷河は慌てた。
「なんで、氷河が兄さんを庇うの?」
兄と氷河の間にあった出来事を思えば、素肌を晒す入浴を一緒に、というのは考えられない。やはり、不意を突かれた幻魔拳にかかっているとしか、考えられない。
聖闘士の死闘は女神によって禁じられている。真面目な氷河はそれを守るにしても、不真面目な兄がそれを守るとは思えない。
屋上で騒ぎを起こしたときに、氷河が目当てで、この山深い学園に編入したと公言した兄であった。
「それは――」
氷河が瞬から視線を逸らせた。
「城戸が怖がりだからじゃあねぇ?」
傍らからの声に、瞬が不審げに眉を顰めた。
声の主は、氷河と同室の生徒・古賀であった。
「なんで氷河が怖がりなの?」
氷河は聖闘士だ。人知れず、女神と共に地上を護った戦死であった。
その氷河を“怖がり”とは――自分の名誉も傷つけられたような気がした。
「続く」
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