だいじなおしごと

さっちゃんは、小さな頃から模倣遊び「ごっこ遊び」が好きな子で
その中でも、お人形遊びが大好きです。

お気に入りの大きさは、さとみの手のひらサイズ。
このサイズのお人形さんの、胴の部分を持ち
手のひらからはみ出した顔や手足がぴょこぴょこ動く姿は
まるで、人形劇を見ているかのように、いきいきとしています。

更に、人や動物の姿をしたお人形さんだけでなく
うちわや物差しや“縦笛”にまで名前を付け
それぞれに性格や役割分担を付けて遊ぶのです。

時々、さとみの本音をお人形さんたちが私に伝えてくれたり
私がお人形さんたちに怒られたりすることもあれば
ヘルパーさんとの調理の時には、お人形さんたちがサポートもするらしく
とても頼もしくもあり、面白くもある存在です。

大抵、一定の時期にものすごく仲の良いお人形さんがいて
その期間は、数ヵ月から数年単位に及ぶものもあり
セサミストリートに登場する「バート」と
絵本のおまけに付いてきた「ねずみさん」は
一緒に高等養護学校に入学し、寄宿舎で寝起きを共にし
帰省する時のバスにも、大抵一緒に乗り
そして、最終的には３人で(？)めでたく卒業式を迎えました。

さとみが小さな頃から、ずっと一緒にいてくれたバートとねずみさんは
さとみの高等養護学校卒業後と同時に、引退したらしく
今は、さとみのお部屋の本箱や棚に鎮座して
新人の教育、指導に当たって（いるように見える）います。

さて、最近…、と、言っても、もうかなり前からになりますが
お人形さんたちに、「朝の付き添い」のお仕事が出来ました。
お仕事の内容は、さとみのジーンズのお尻のポケットに収まって
さとみが洗顔や歯磨きを終えるのをじっと待ったり
テーブルの上で、さとみが朝食を食べ終えるのを見守ったりするのですが

ジーンズのポケットに収まるお仕事は
さとみがなにも考えずに無造作に突っ込むものだから
首だけポケットに収まって、身体がぷらぷらしていたり
逆に、片足だけポケットに入れて、逆さまになっている事もあり
お人形さんたちは、かなりヒヤヒヤしているのではないかと思われます。


この、「朝の付き添い」は、毎回決まった子がするのではなく
毎朝違うお人形さんたちが、当番制でやってきます。

ある日、お父さんが
「この子たちを撮って、画像を集めよう」
と、思い付きました。

そして、撮り溜めした画像をパソコンで編集しようと思ったのです。

その日から、毎朝まい朝、さとみのお尻の辺りで
お父さんや私が、携帯電話を持ってきてウロウロするようになりました。
それが気に入らないさとみは、お尻を右へ動かし、左へ動かし
身体を半回転させたりして撮影を妨害しようとします。
それはそれはよく動くお尻なものだから、撮影が大変です。
ボケボケ、ブレブレ画像にもめげず、撮り続けるお父さんと私。

ある朝、さとみのふとした隙を狙って、お尻のお人形の撮影をした私に
さとみが、ついにキレました。

「ちょっと！いいかげんにしてって！」

その、本気な口調が可笑しくて、バカウケするお父さんと私。

こんなおバカさんな両親と付き合っているのですから
さとみもさとみで、結構大変なのです。
もしかしたら、さとみのお部屋のお人形さんたちは
そんなさとみの愚痴も、聞いてくれているのかもしれませんね。