(写真)レッド・キャンピオンの花
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キャンピオン(campion)は、チャンピオン(champion)とも呼ばれ、馬上試合の勝者のための花冠として用いられたという。
この花には、赤・白・ピンクの色があるが、赤花を“レッド・キャンピオン”、白花を“ホワイト・キャンピオン” 、ピンクの花は、この二種の交雑種のようだ。
“ホワイト・キャンピオン”は、ムスクの香りがするが、“レッド・キャンピオン”にはこの香りがなく、種小名の“dioica”はギリシャ語で雌雄異株を意味するので、種を取るには雌株と雄株がないと実をつけない。
だが、花の美しさにおいてはなんら問題はない。
古においては、蛇にかまれた傷に塗られたり、膀胱や腎臓の病にワインに入れて服用したという。
原産地は、ヨーロッパからアジアに広く分布し、開けた野原や平原で30-60㎝に育つ二年草または多年草で、5月から開花する。
花や葉はサラダに利用されるようだが、食べてみたいという食欲を刺激しない。
17世紀の英国を代表する植物学者ジェラード(John Gerard 1545-1611 or 1612)は、レッド・キャンピオンを“bachelor buttons(独身者のボタン)”と称した。背広の襟のボタン穴に花を飾るということは独身者を意味し、既婚者は真似をしたり指輪をとってはいけないということだろう。
今ではこのような由来は忘れられ、オシャレなのかキザな男を意味しているのかもわからない。一度こんなキザをやってみたいと思いつついまだに出来ないでいる。
「レッド・キャンピオン」には、三つの学名がある。
Silene dioica ( L. ) Clairv. (1811)
Lychnis dioica L. (1753)
Melandrium dioicum (L.) Coss. & Germ.(1845)
ナデシコ科の植物で1753年にリンネがこの三つの名前をつけたが、1811年にフランスの植物学者・昆虫学者でスイスで活動したClairville, Joseph Philippe de(1742-1830)がシレネ属に分類し(ほぼこれが学名として通用している)、
1845年には、北アフリカの植物相を調査研究したフランスの植物学者Cosson, Ernest Saint-Charles (1819-1889)とGermain de Saint-Pierre, Jacques Nicolas Ernest (1815-1882)によってメランドリウム属に分類されたが、この決着はいまだついていない。
こんなややっこしいことも重要だろうが、それぞれのボタニカルアートを楽しみつつ違い発見をしてみよう。
(写真)Silene dioica
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(出典) Go Botany
カーティス(William Curtis 1777-1798)がボタニカルマガジンに掲載した画
(写真)Lychnis dioica
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(出典)meemelink.com
(写真)Melandrium dioicum
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出典) wikimedia
(写真)レッド・キャンピオンの立ち姿
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レッド・キャンピオン( Red campion)
・ ナデシコ科シレネ(和名マンテマ)属の耐寒性のある2年草か短命な多年草。
・ 学名は、Silene dioica ( L. ) Clairv. (1811)。英名はRed campion。
・ 原産地はヨーロッパからアジアの明るい草原、荒地。
・ 草丈30-60cmで雌雄異株。
・ 開花期は5-10月で、赤色の5枚の花弁が素晴らしい。
・ 雄花には10本のおしべと10本の筋のある萼が、雌花には5本の花柱と20本の筋のある萼がある。
・ 湿った酸性でない土壌を好む。
・ ホワイト・キャンピオン、レッド・キャンピオンを混裁すると雑種化しやすくピンクの変種が出来やすい。
浜辺の砂地が生息地のようなので塩分がある乾燥したさらさらした土壌を維持するのは難しいので、それで死んでしまったのでしょうか?