パラグアイ・スイートハーブ(Paraguayan sweet herb)と呼ばれる南米パラグアイ原産のステビア(Stevia rebaudiana)を採りあげたので、中米メキシコ原産のアステカ・スイートハーブ(Aztec sweet herb)、或いは、メキシカン・スイートハーブと呼ばれるリッピアを書いてみようと思う。
(写真)リッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の花
ステビアは砂糖の200~300倍の甘味といわれるが、メキシコ原産のリッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)は1000倍の甘さといわれる。
リッピア・ドウルシスはどんな植物かといえば、>
草丈10~20cm程度で地表を這うように生育し、乾燥地を好むというのでメキシコに適した特質を持っている。
開花期は夏から秋なのでまさにシーズン最中であり、松ボックリのような花序の上部に小さな白い花が咲いていている。
葉は対生で1枚の1/5程度をかじってみると、化学物質のような甘みを感じたステビアとは異なり、砂糖に近い甘さを感じる。
鉢とかハンギングで育てるのに適しており、日当たりが良い軒下に下げ、伸びた枝15cmぐらいの長さでカットしてあげると良い。
耐寒性が極めて弱いので冬場は0℃以上のところで管理する。これを忘れて車庫の屋根下で管理したら何度か凍死させてしまった。
ということで、メキシカン・スイートハーブでは甘い思い出ではなく、苦い思い出だけが残っている。
天然の甘味料がブームになっているようだが、
ヨーロッパから中国西部までのユーラシア原産のカンゾウ(甘草)、中国桂林地方の高地に自生するウリ科植物の果実ラカンカ(羅漢果)、日本の中部地方の林に成育する落葉低木のアマチャ(甘茶)の葉、南アメリカパラグアイ原産のステビアなど世界の各地に天然甘味料の植物が存在し、今ではステビアは天然甘味料の代表的存在になっている。
メキシカン・スイートハーブ、リッピア・ドウルシスがこの天然甘味料の仲間としてまだ評価されていないところがあるが、科学的に甘み成分の特定化がされたのが1985年と遅くまだ分からないことがあり、且つ樟脳が含まれているため忌避されているのだろう。
一方のステビアの甘み成分が特定化されたのが1931年で、1971年には製品化されておりメキシカン・スイートハーブリッピアとのスピードの違いが歴然としてある。
メキシカン・スイートハーブの歴史
1985年にシカゴのイリノイ大学で熱帯植物から抗がん剤を見つける研究開発していたCesar M. CompadreとA. Douglas Kinghornによってリッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の甘み成分が特定化され、この砂糖の1000倍もある甘み成分に“hernandulcin”と名付けた。
いわばこれは、hernand +dulcis であり、“hernand”は、1570年代にフィリップ二世の命でメキシコの植物資源調査をしたスペインの医師・植物学者エルナンデス(Hernandez,Francisco de Toledo 1514-1587)を表している。
(写真)Hernandez,Francisco de Toledo
アステカ語で“Tzonpelic xihuitl”と言われる甘いハーブをヨーロッパ人で最初に記述したのはこのエルナンデスと言われる。
彼は、1572年から1577年までにメキシコや中央アメリカを探検し、メキシコシティで2500種の標本などを正確なイラストと特徴を記述した新世界メキシコの初の動植物を説明する原稿を作った。
この中にメキシカン・スイートハーブの記述があったはずだが、その原稿すべては、1671年の火災で焼失したので、エルナンデスの正しい成果が把握できないことになってしまった。
(写真)Rerum medicarum Novae Hispaniae thesaurus, seu, Plantarum animalium mineralium Mexicanorum historia
※エルナンデスの原稿コピーを元に1651年にローマで出版された版
※全頁検索はこちら (右ページの上でクリックするとページがめくられます)
エルナンデスは、パイナップル、トウモロコシ、ココア、唐辛子、チョウセンアサガオ、パッションフルーツ、タバコなどの新しい種を発見したが、その証拠となる原稿はない。もし残っていたならば、メキシコの植物誌の歴史を大きく塗り替えたことだろう。
【参考】エルナンデスの探検隊にご興味があれば、下記をお読みください。
1.No33:セッセ探検隊①:偶然から始ったメキシコ植物探検隊
2.No32:カルロス三世とマドリッド王立ガーデン・植物園
3.No31:スペインの絶頂期にメキシコを探検したエルナンデス
(写真)リッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の葉
メキシカン・スイートハーブ、メキシカン・リッピア
・クマツヅラ科イワダレソウ属の耐寒性がない多年草。
・学名はLippia dulcis Trevir. 1826年にTreviranus, Ludolf Christian (1779-1864)によって命名された。英名は Aztec sweet herbまたはmexican lippia。
・属名のLippia(和名イワダレソウ属)は、パリ生まれのイタリアの植物学者リッピ(Auguste.Lippi,1678-1701)の名にちなむ。この属の植物は約90種あり、南北アメリカ、アフリカに分布する。多くは低木だが、わずかに宿根草も含む。葉は2または3枚で対生または輪生。花は小さく細い花梗の上に頭状または穂状について一見小さなランタナのように見える。
・原産地はメキシコ・グアテマラなどの中米。
・耐寒性がないので、冬場は霜よけをする。
・草丈10㎝程度で茎が地面をはって広がる。繁殖力旺盛。
・開花期は6~9月で松かさ状の花序に白い小さな花が咲く。
・葉にさわやかな香り、ステビアを上回り蔗糖の1000倍の甘味がある。樟脳成分を含むようなので継続使用には注意が必要。香りを楽しむハーブとして活用。
・日当たりから半日陰で栽培。乾燥気味の土壌を好む。但し、夏場は過度の乾燥に注意。
・冬場は、耐寒性がないので腐葉土で根を覆い軒下か、室内に取り込む。
(写真)リッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の花
ステビアは砂糖の200~300倍の甘味といわれるが、メキシコ原産のリッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)は1000倍の甘さといわれる。
リッピア・ドウルシスはどんな植物かといえば、>
草丈10~20cm程度で地表を這うように生育し、乾燥地を好むというのでメキシコに適した特質を持っている。
開花期は夏から秋なのでまさにシーズン最中であり、松ボックリのような花序の上部に小さな白い花が咲いていている。
葉は対生で1枚の1/5程度をかじってみると、化学物質のような甘みを感じたステビアとは異なり、砂糖に近い甘さを感じる。
鉢とかハンギングで育てるのに適しており、日当たりが良い軒下に下げ、伸びた枝15cmぐらいの長さでカットしてあげると良い。
耐寒性が極めて弱いので冬場は0℃以上のところで管理する。これを忘れて車庫の屋根下で管理したら何度か凍死させてしまった。
ということで、メキシカン・スイートハーブでは甘い思い出ではなく、苦い思い出だけが残っている。
天然の甘味料がブームになっているようだが、
ヨーロッパから中国西部までのユーラシア原産のカンゾウ(甘草)、中国桂林地方の高地に自生するウリ科植物の果実ラカンカ(羅漢果)、日本の中部地方の林に成育する落葉低木のアマチャ(甘茶)の葉、南アメリカパラグアイ原産のステビアなど世界の各地に天然甘味料の植物が存在し、今ではステビアは天然甘味料の代表的存在になっている。
メキシカン・スイートハーブ、リッピア・ドウルシスがこの天然甘味料の仲間としてまだ評価されていないところがあるが、科学的に甘み成分の特定化がされたのが1985年と遅くまだ分からないことがあり、且つ樟脳が含まれているため忌避されているのだろう。
一方のステビアの甘み成分が特定化されたのが1931年で、1971年には製品化されておりメキシカン・スイートハーブリッピアとのスピードの違いが歴然としてある。
メキシカン・スイートハーブの歴史
1985年にシカゴのイリノイ大学で熱帯植物から抗がん剤を見つける研究開発していたCesar M. CompadreとA. Douglas Kinghornによってリッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の甘み成分が特定化され、この砂糖の1000倍もある甘み成分に“hernandulcin”と名付けた。
いわばこれは、hernand +dulcis であり、“hernand”は、1570年代にフィリップ二世の命でメキシコの植物資源調査をしたスペインの医師・植物学者エルナンデス(Hernandez,Francisco de Toledo 1514-1587)を表している。
(写真)Hernandez,Francisco de Toledo
アステカ語で“Tzonpelic xihuitl”と言われる甘いハーブをヨーロッパ人で最初に記述したのはこのエルナンデスと言われる。
彼は、1572年から1577年までにメキシコや中央アメリカを探検し、メキシコシティで2500種の標本などを正確なイラストと特徴を記述した新世界メキシコの初の動植物を説明する原稿を作った。
この中にメキシカン・スイートハーブの記述があったはずだが、その原稿すべては、1671年の火災で焼失したので、エルナンデスの正しい成果が把握できないことになってしまった。
(写真)Rerum medicarum Novae Hispaniae thesaurus, seu, Plantarum animalium mineralium Mexicanorum historia
※エルナンデスの原稿コピーを元に1651年にローマで出版された版
※全頁検索はこちら (右ページの上でクリックするとページがめくられます)
エルナンデスは、パイナップル、トウモロコシ、ココア、唐辛子、チョウセンアサガオ、パッションフルーツ、タバコなどの新しい種を発見したが、その証拠となる原稿はない。もし残っていたならば、メキシコの植物誌の歴史を大きく塗り替えたことだろう。
【参考】エルナンデスの探検隊にご興味があれば、下記をお読みください。
1.No33:セッセ探検隊①:偶然から始ったメキシコ植物探検隊
2.No32:カルロス三世とマドリッド王立ガーデン・植物園
3.No31:スペインの絶頂期にメキシコを探検したエルナンデス
(写真)リッピア・ドウルシス(Lippia dulcis)の葉
メキシカン・スイートハーブ、メキシカン・リッピア
・クマツヅラ科イワダレソウ属の耐寒性がない多年草。
・学名はLippia dulcis Trevir. 1826年にTreviranus, Ludolf Christian (1779-1864)によって命名された。英名は Aztec sweet herbまたはmexican lippia。
・属名のLippia(和名イワダレソウ属)は、パリ生まれのイタリアの植物学者リッピ(Auguste.Lippi,1678-1701)の名にちなむ。この属の植物は約90種あり、南北アメリカ、アフリカに分布する。多くは低木だが、わずかに宿根草も含む。葉は2または3枚で対生または輪生。花は小さく細い花梗の上に頭状または穂状について一見小さなランタナのように見える。
・原産地はメキシコ・グアテマラなどの中米。
・耐寒性がないので、冬場は霜よけをする。
・草丈10㎝程度で茎が地面をはって広がる。繁殖力旺盛。
・開花期は6~9月で松かさ状の花序に白い小さな花が咲く。
・葉にさわやかな香り、ステビアを上回り蔗糖の1000倍の甘味がある。樟脳成分を含むようなので継続使用には注意が必要。香りを楽しむハーブとして活用。
・日当たりから半日陰で栽培。乾燥気味の土壌を好む。但し、夏場は過度の乾燥に注意。
・冬場は、耐寒性がないので腐葉土で根を覆い軒下か、室内に取り込む。
ステビアの次はメキシカン・スイートハーブなのですね。 ステビアよりももっと甘い葉っぱということで、それならと姫イワダレソウの葉を囓ってみました。こちらはただただ青臭い味しかしませんでした。
久しぶりのセッセ探検隊登場ですね、わからないままに、でも楽しく拝聴させていただいきますm(_ _)m