天津ドーナツ

みんなで力を合わせて、天津の日本語教育を楽しく、元気にしましょう。ご意見・ご要望は左下の「メッセージ」からどうぞ。

天津ドーナツ「天津日本語ゼミ(仮称)」中間報告会

2012-05-05 06:31:12 | イベント・コンテストの予定

                   当日のスケジュール                          

日付:2012年5月13日 14:00~17:20

場所:天津商業大学

プロセス:

2:00 学生責任者の挨拶:天津商業大学の王永ヤクさん

     RT(ラウンドテーブル)による討議(40分)

2:40 全体発表および質問応答

    ① 天津商業大学 Aゼミ:3年生基礎研究ゼミナール(30分)

    ② 天津商業大学 Bゼミ:2年生読書会ゼミナール『おくのほそ道』(30分)

    ③ 河北工業大学 日本の青年の恋愛観   (30分)

    ④ 天津師範大学津沽学院:「日本語の曖昧さ」(30分)

4:40 全体討議と第三者による評価(40分)

5:20 記念撮影




スピーチコンテストで大切にしたいこと

2012-05-02 21:04:52 | 日本語学習法
今日(5月2日)のお昼休みに、天津市のある大学の先生から、電話がかかってきました。

「ゴールデンウィークのスピーチ特訓から帰ってきた学生の原稿が、規定時間の2分間を30秒ぐらい越えている。どうしたらいいだろうか」という相談です。



私は、

1.3日間で、全ての学生の原稿を完璧に仕上げることはできないこと

2.事実や気持ちを丁寧に書いた少し長めの文章を、スピーチの練習をしながら削っていくことで、

  言葉の質が高くなっていくこと

3.コンテスト当日のスピーチと、提出する原稿は、趣旨が同じであれば問題はないこと

4.会場の反応によって間のとり方が変わるのだから、数秒から十数秒の誤差が出ることは、ドーナツのコンテストでは  容認されること

5.ドーナツのコンテストでは、原稿を練り上げていく過程で、自分の好きな表現や気持ちにぴったりの日本語が見つかっ  たり、指導者とのやり取りを通じて思考が深まったり視野が広くなったりすることのほうが、制限時間を1秒単位で守  ることよりも大切だと考えていること。



もちろん、意図的に大幅に超過する原稿を用意することは、他の選手との公平性やコンテスト全体のスケジュールへの

影響などの理由から禁ずるべきことではあります。

しかし、壇上でスピーチをしているとき、考えなければいけないのは、「1秒単位の残り時間」でしょうか、

それとも、「相手に伝わっているかどうか」ということでしょうか。



今日、電話で相談してくださった先生は、幸い、後者を大切にしたいという先生でした。

また、特訓に来た学生たちも、自分たちのスピーチが知らず知らずのうちに、形式に囚われていたことに気がついてくれました。その結果、ほとんどの学生の原稿が書き直しとなりました。

そのポイントについては、いつか、『スピーチ練習帳』という本にまとめてみたいと思います。



以前、ある大きなコンテストのスタッフを務めた学生が次のような感想を漏らしたことがあります。

「先生、スピーチが始まったら居眠りを我慢するのが大変でした。審査員もゲストも、観客も、

ちゃんと聞いていないのが分かったし、選手も、相手がいないのに話していて大変そうでした。

みんな、我慢していました」



私は、そういうコンテストとは違うコンテストを開きたくて、

ドーナツというサークルを作り、スピーチコンテストを開催しています。



日本語教育の中で大きな位置を占めるスピーチコンテストが、「つまらないのを我慢する」ものでしかないのであれば、

それは、すなわち、日本語教育そのものが本質的につまらないということに他ならないと思うからです。



私1人でできることはほとんどありませんが、幸い、協力してくれる人が少しずつ増えて、

超有名な日本企業の方も来てくれるようになりました。

関わる人みんなが知恵を出し合って、「見に行きたくなる・参加したくなる」スピーチコンテストをつくっていけたらいいなと思います。

国際交流基金によるスピーチコンテスト審査基準

2012-04-30 20:09:54 | 日本語学習法
Ⅰ.審査基準:以下の3つの部門です。(  )内は(最高点―最低点)です。
 1.言語力部門
  (1)発音(5-1)
    ①母音・子音の発音
    ②アクセント・イントネーション
    ③話す速さ・間の取り方
  (2)文法・語彙(5-1)
    ①正しい文法や語彙の使用
    ②スピーチに相応しい表現や語彙
    ③さまざまな表現が使えているか(意図的に同じ語彙を繰り返す場合は除く)
2.内容
 (1)聞き手への意識(5-1)
   ①聞き手の興味を引く内容か
   ②構成・展開的に分かりやすいか
   ③聞き手の背景知識を考慮しているか
 (2)内容の深さ・説得力(5-1)
   ①主張がはっきりしているか
   ②主張の根拠が明確かつ十分か
   ③大学生らしい視野の広さや思考の深さが感じられるか
3.運用力・表現部門
 (1)プレゼンテーション力(5-1)
   ①態度(姿勢・視線・顔の表情・声の大きさなど)は適切か
   ②視覚および聴覚的にアピール力があるか(絵・歌やダンスは不可)
 (2)質疑応答(5-1)
   ①正しく適切な日本語を用いているか
   ②質問に対する回答として十分かつ相応しい内容か
   ③積極的に理解してもらおうとしているか
   ④日本的な常識から外れることなく、友好的かつ自然な対話を成立させることに貢献しているか(会場を沸かせたかどうかは、考慮しない)
    →例えば、質問が聞き取れなかった場合・意味が分からなかった場合は、質問を繰り返すように要求してもいいし、繰り返しを要求したこと減点の対象とはしない。ただし、そのときの文言や態度は採点の対象とする、などです。

体“ことば”最終回  目・眼・瞳 その2…もとNHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2012-04-29 06:44:21 | 日本語学習法
 初めは“柳腰”答弁から、ふらりと出発しましたが、どうやら日本語の市井の“ことば”は、体“ことば”なしでは成り立ちませんね。日本語の中枢にしっかり組み込まれています。それが実感です。
 まだ、鍋底についた汁を舐めるなら、続けることも出来るのですが、これで一応の区切りといたします。次回からは、日本語の音の持つイメージやら、オノマトペやら、愉快な用法を拾ってみることにいたしましょう。では、最後の「目・眼・瞳」です。
 いつものように、◎印は、日本語初心者向けです。

 ◎ 衆目の耳目(ジモク)を集めて、目がくらみ。目新しいことには目を疑って、人目につくな目立つでないぞ。目と鼻の先で、目が会えば近目になるし、目を転じれば目が届く、目を遊ばせて目を覚ませ、目に付いたなら目を通せ、目を奪われたら目が曇る、目を凝らしたら目にしみる。目に角たてれば目付きが悪い、目を丸くして目を回せ、目の色変えて目は点になる。

* 目を皿にした目利きの目明かし、見附の辺りを見詰める目付き、目こぼしないかと目をこらす。この目障りな目の上のタンコブに、眼(ガン)をつけたは賊の頭目、縄目の恥はかくまいと、人目を盗んだつもりでも、壁に耳あり障子に目あり、隣の窓には覗き眼鏡のレンズがキラリ、双眼鏡か天眼鏡か、複眼・単眼・乱視の遠視、目を光らせる監視カメラは疑いの眼差しか。

* 金の切れ目が縁(エニシ)の切れ目、そこが付け目だ百年目、お目見え奉公目付きが悪い、薄目を開けて横目で見れば、“アッカンベ”して一目散、金目(カネメ)の象眼(ゾウガン)持って逃げ。
  ーーー註;“アッカンベ”  拒否 からかい 下瞼の赤い裏をみせてーーー

◎ 夜目遠目、寄り目にひが目にひんがら目、素人目にはドングリ眼、贔屓目にみても二枚目とは言われまい、眉目秀麗(ビモクシュウレイ)見目うるわしき人にあこがれて、逆上せ目(ノボセメ)高じて色目を使う、眼科に通って目尻を上げて、節目を撰んで伏し目がち。

* 青眼に構えた浪人・目の付け所、心眼・正眼・目にモノ言わす。相手の家臣は目一杯、勝ち目はないと殿に目配せ、「勝負はこれまで。仕官は叶った目通り許す」と危ない目をば救われる。

* 諸国大名は弓矢で殺す。糸屋の娘は目で殺す。殺して貰えぬ町の若衆白眼視、娘は睫毛パチパチ目が早い、焦眉の急と目頭熱く、柳眉逆立て眉ひそめ、人目引こうと目玉商品、大売り出し!

* “目ン無い千鳥”は目隠し鬼の、亡き盲目の妻を想う、目と目で交わしたあの日の出会い、月に映した面影目をかすめ、曲目見るたび、目に浮かぶ。

* 目から火が出るガチンコ相撲、出来た目の上タンコブ二つ、右の目の隈・眼帯付けて、脇目も振らずにフンドシの結び目掴むや、目にも止まらぬ早業めざまし、目にモノ見せたぞ目の敵(カタキ)、目の肥えた客の目をも楽しませ。

* 三度目の正直、潮目が変わった、賽の目には注目しろ、ぞろ目が出たら押し目で買えよ、勝ち目がないときゃ斜眼に構え、目を楽しませれば出目がくる、面目・要目・不面目、死に目にあったら題目唱えて、瞑目・徳目・目を閉じろ。

* 生真面目(キマジメ)な目上の小言はいつでも堅目、あんなの目じゃあない尻目にかけろ、二言目には「目一杯」にと、破れ目・曲がり目・病み目に着目、冬の流行目(ハヤリメ)気をつけろ、口はともかく目は届く、目に一丁字もないのが引け目となって、裏目にでたのは負い目ゆえ、視線を伏せて目を覆う、大目に見たのが運の尽き。

* 頭の後ろに目はないが、目籠(メカゴ)は目だらけ荒目の作り、編み目に網の目・境目見えぬ、裂け目に要心・厚目の竹をあぶるは百目ロウソク、目を逸らせるな瞳を凝らせ。

* 三草二目は法華経、俳諧式目連歌の目次、ウオの目つらいぞ憂き目にあって、焦げ目をつけるは五目飯、品目・天目・審美眼、落ち目の跡目に反目あって、弱り目・祟り目・三白眼、まなじり決して一目散、台風の目は鬼の目か・・・これで“体ことば”一巻目の終わりでございます。

ーーーーー
 ・・・川柳 ・・・ 
   “嫁の顔 眼鏡の外で じろりと見”・・・・姑の眼鏡にかなう嫁はなし。

♪♪ーーー 夫婦げんか 謝りそびれて目と目が冴えて、
       二人でみている蛇の目傘、言いたいことも聞きたさも、
        目と目が曇る千万無量ーーー

イベントの見た目の成功≠学生の成長

2012-04-22 07:20:55 | 顧問・アドバイザーから
今日の日記の結論は、「一時的な成功≠成長」です。

もっと簡単に言えば、「成功=成長ではない」です。


4月21日(土)、第3回ドーナツ杯天津市外国語カラオケ大会が行われました。

中国人教師は1人も来場せず、また、観客は多くても15人ぐらいでスタッフと選手・審査員のほうが遥かに多く、

会長からも「大問題です。観客が来ません」という連絡が入ったぐらいです。

さらに、今大会の予算は、わずか200元。

マイクとスピーカーのレンタル料だけで300元というのですから、予算が足りなくなり、

結局は学生達自身に負担してもらいました。



「大会費用を負担し、スタッフとして働く。しかも、観客はスタッフより少ない」というコンテスト、

みなさんだったら「大失敗だ」と思いますか?

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私も、昨年までだったら、「大失敗のイベントだった」ということで頭が一杯だったでしょう。

事実、「コンテストを開催するときは、観客の数を記録しておくように。それが成功の一つの基準です」といい続けていましたし、会場でも「今日は何人来たかな」ということを気にしていました。



また、企業の方など、外部の方も「コンテストには何人ぐらい集まるのか」ということを、

真っ先に聞きます。そして、「270人ぐらい集まったこともあります」というと、

「それはすごい。」と感心してくれました。



でも、私はやっぱり「何かが違う」と感じていたのですが、その理由がようやく分かりました。

(こういう大事なことが分かる時というのは、本当に瞬間的なことで、しかも、偶然のように思える出来事が重なるのですね)

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やはり、「成功」と「成長」は違うものです。



ある人は、成功したことが理由で成長が止まります。

ある人は、失敗したことが理由で成長し始めます。

ある人は、成功したことが理由でさらに成長します。

ある人は、失敗したことが理由で成長が止まります。



私がドーナツで大切にしたいのは、「成長」であって「成功」ではありません。

例えば、運営資金について言えば、ドーナツが設立された瞬間から、いくつかの「人材紹介会社」や「日本語学校」から資金提供と合作の申し出がありました。北京の会社からもありました。おそらく中国で一番大きい語学学校からも、お話がありました。

しかし、それは天津の学生を「ビジネスの競争」に巻き込むことが確実だったので、全て、お断りしました。

そういうところと提携すれば「一時的な成功」を収めることはできたと思いますが、それは、学生の成長とは無縁だと私は考えたからです。

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現在、アジアで行われている「アジアサッカーチャンピオンリーグ」で、広州恒大というチームが躍進しています。

昨日は、日本のチャンピオンである柏レイソルを3-1で破りました。サッカーの専門家たちも、「広州恒大は、アジアの中でも上位に入るだろう」と言っています。つまり、「大成功するだろう」ということです。



でも、同時に、「広州恒大の成功=中国サッカーの成長」ではないという人もいて、私もその通りだと思います。

なぜなら、恒大の成功は、潤沢な資金を利用して外国人選手を集め、試合に勝ったらたくさんのボーナスを出す、というやり方が支えているからです。事実、昨日の3つの得点は、全て「3人の外国人選手」から生まれたものでした。



また、試合に勝つことでたくさんのお金を手にすることができる、というやり方は、

現在の選手のモチベーションを高めることには成功するかもしれませんが、若手の成長にはつながりません。

それは、「日本人みたいだな」という表現が「サッカーが下手な人」という意味だった頃の日本と同じで、

小さいときからサッカーに親しむ環境が整わないからです。

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ドーナツという天津市の日本語学習サークルを設立してから、もうすぐ3年になります。

その間、外部の人たちから「すばらしい」と言われるようなイベントも、何度か開催しました。

清華大学の有名な先生や国際交流基金の先生を天津に呼ぶことにも、「成功」しました。



でも、その間、ずっと「これが、天津の学生にとって一番良いことなんだろうか」という疑問が

消えませんでした。

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昨日のカラオケコンテストには、観客はほとんど集まらず、「失敗だった」と考える人のほうが一般的だということは、私にも分かります。

しかし、その会場にいるスタッフ・選手・選手の友達・審査員の方々が、「成長したのかどうか」ということを基準にするとしたら、私は、「成功だ」と言っていいと思います。

それは、「緊急ではないけれど重要なこと」を積み重ねてきた結果ですし、もし、同じスタッフ・同じ選手が、

来年度にもう一度カラオケコンテストを実施したら、ということを想像してみればすぐに分かります。

おそらく、今回の審査員の方々の殆どが、「このメンバーでもう一度やったら、もっと良い大会になる」と言ってくれるでしょう。

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ドーナツは、これからも「世間でもてはやされる成功」と「学生の成長」は違うということを、徹底して追及していきたいと思います。