天津ドーナツ

みんなで力を合わせて、天津の日本語教育を楽しく、元気にしましょう。ご意見・ご要望は左下の「メッセージ」からどうぞ。

くれくれ星人 VS 私もあげます星人

2011-05-31 19:30:34 | 顧問・アドバイザーから
例1  ある日本の方のお話。



「二人の中国人社員に、ご飯をおごりながら、相談にのることを続けたことがあります。

確か10回目だったと思うのですが、その内の一人が「今日は、本当にいい勉強になりました。

私が払います」と言って伝票を持っていきました。」

「本当に嬉しかったです。ここまで成長したのかと思って。」

「でも、もう一人の人は、ご馳走してもらうこと・相談に乗ってもらうことが当たり前だと言う様な

顔が10回目になっても変わりませんでした。」





例2  ドーナツのメンバーの話



今年の夏、あるドーナツメンバーが日本企業で実習をします。

アルバイトではありません。

「え?実習とアルバイトって違うんですか?」と思った方もいるかもしれません。



実習とアルバイトは、まったく違います。

実習と言うのは、「仕事を教えてもらう」のが一番の目的で、

場合によっては、実習生のほうが費用を支払って仕事を教えてもらいます。

なぜなら、たかだか数ヶ月の経験で、会社に利益をもたらすことなどできませんし、

仕事を教えてもらっている間、相手の仕事をストップしているからです。



これに対してアルバイトは、

「すぐに、誰でもできること」、つまり、「単純作業」をこなすことで賃金をもらう

というものです。

もちろん、アルバイトの中にも、責任のある、そして経験と技能と人間力が必要なものは

たくさんありますが、日本語科の学生が夏休みにできるアルバイトで、そのような能力を

必要とするものは、あまり多くありません。

企業側も、安い労働力として使いますから、大事な仕事を教えて育てていこうという姿勢では

ありません。

また、そのようなアルバイトを、仕事の経験として考えてくれる企業はそれほど多くありません。



ご両親の負担を軽くしようとしてがんばっている学生以外で、

手っ取り早くお金をもらうことばかりを考えている学生は、

実習という仕事を覚えるチャンスを逃していることを、考えてみて欲しいと思います。



もし、「私が費用をお支払いしますから、1ヶ月、仕事を教えてください」

という学生がいたら、話を聞いてくれる企業は、天津にもいくつもあるということだけは

ここに書いておきます。





例3  ドーナツの企業に対する要望



「企業の社会貢献が、金銭を提供することしかできないのであれば、それはやめたほうがいい」

「その企業ならではの価値を提供し、そのことによって相手も自分も得をするのがこれからの社会貢献だ」

と言われています。



ドーナツは、

実践を通じての「日本語力の向上」「社会人基礎力の養成」

を目的としています。



例えば、Aという会社に支援をお願いしたときに、

「1000元分の賞品の提供」と「2時間の社会人としてのマナー講習」の

どちらが学生にとって有益なのでしょうか。



もし、ドーナツが

「学生にお金や物を与えること」を目的にして設立したのだったら、

答えは前者です。

しかし、もし、「学生の成長」を目的とし続けるのであれば、

答えは、今までも、そしてこれからも、ずっと後者のはずです。



成長する人間は、

いつまでも、「(お金・物・チャンス・人脈・情報を)くれくれ」とは言いません。

教えることによって自分が学べるのと同じで、

自分が相手に与えることが、何かを得る一番いい方法だと知っています。



ドーナツのメンバーが、もし、

「お金や物をくれるかどうか」でしか人間関係を考えられなくなったら、

それはドーナツの実質的な終了を意味します。

そんな学生サークルを、まともな社会人が支援するわけがないからです。



私自身、いろいろな人との人間関係が、

「くれくれ星人」のようになっていないか、きちんと確認しておきたいと思います。

留華ネットで紹介されました

2011-05-30 06:50:35 | 結果報告
先日、吉林省で行われた留華ネット(中国にいる日本人留学生のネットワーク:国際交流基金が後押ししています)会議で、天津ドーナツが紹介されました。



位置づけとしては、「天津における日中交流組織のプラットホーム」ということです。

この会議で報告されたということは、中国にいる日本人留学生および国際交流基金の先生方に、

正式な形でドーナツが知られたということです。



発足当時から、ドーナツと提携したいという会社はいくつもあります。

天津以外の地域からも申し出がありました。



でも、私はビジネスをやりたくてドーナツを始めたのではありません。

必要経費の調達など、絶対に必要なものはありますが、

金銭的な利益を手にしたいのであれば、もっと効率の良い方法があります。



今後は、天津にいる日本人留学生、そして、留華ネットを通じて、

中国にいる日本人留学生ともネットワークがつながっていくことになります。



しかし、何度でも、徹底して確認しておきたいことがあります。



ドーナツを通じて本当に学生が成長しているのか、

ドーナツがやっていることは学生にとって一番いいことなのか、

ということは、どんなに有名になっても、どんな人が声をかけてきても、

これからも変えてはいけません。



そして、最終的に、

「日本語で天津の町をもっと元気にする」

(2年前の北京の大学生との約束です)

ために、これからも一歩一歩、前に進んでいきたいと思います。

スピーチが上手になりたい人へ  考え方編

2011-05-22 12:23:18 | 日本語学習法
昨日のスピーチコンテストには、いつもより多くの企業の方が来てくださいました。

そのうちの一人であるコンサルティング会社の方と、次のような会話を交わしたのですが、

これが、おそらくスピーチが上手な学生とそうではない学生を生み出す一番の要因だと

思いました。



コンサルティング会社

「びっくりしました。これが本当に1年生のスピーチですか?私が考えていた1年生のスピーチは、例えば、○○番の選手のレベルです。でも、この○人のスピーチはまったくレベルが違います。どうしてですか?」





「おそらく、その学生本人と周囲、つまりクラスメートや指導している教師の意識がちがうのでしょう。

ある先生方は、「1年生にはスピーチは無理だ。たどたどしくても仕方がない」と考えていますが、

ある先生方は、「1年生でも、5月ごろにはちゃんとできるはず。できないのは、やらないからだ」と考えています」



コンサルティング会社

「なるほど、うちの社長がいつも言ってる「できないことはない、やっていないだけだ」ということですね」

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ある学校では、10段階のうちの3のレベルに達したら、もう困ることはありません。

授業でも、宿題の発表でも、先生との会話でも(中国語を使ってくれます)、3のレベルの日本語で十分にやっていけます。ましてや、5や6のレベルに達したら、学校の代表になることができます。



ある学校では、7のレベルの学生でも周囲は相手にしてくれません。

どうにかして8あるいは9のレベルに達しないと、生活がどんどんつらくなっていきます。

学校の代表になりたければ、限りなく10に近いレベルに達しなければいけません。

7や8のレベルでは、予選に出ることすら恥ずかしいという環境です。



本人、周囲(クラスメートと教師陣)が、どのような意識で毎日を過しているのか、

その集大成のひとつが、代表のスピーチだと私は思います。



それだからこそ、企業の方が「いい人材がいたら…」と言って

視察に来るのです。

あるいは、あるコンテストでは上位入賞者に大学院進学の優先権が与えられるのですが、

それも、同じ理由です。



みなさんは、普段、どのような意識で日本語学習に取り組んでいますか?

自分の日本語が通じないとき、中国語で話してくれる先生を「優しい先生」などと

思っていませんか?

1年生の5月の段階で、3分間のスピーチができる、それは夢のような話だ、

と思っていませんか?

2年生の7月、あるいは3年生の12月でN1に合格するのは、

一部の優秀な学生だけだ、そう思っていませんか?



努力をすれば何でもうまくいく、とは思いません。

しかし、自分がどのような気持ち・考え方で日々を過しているのか、

ぜひ振り返ってみてほしいと思います。

スピーチコンテストが終わりました…失敗の連続でしたが、やってよかったです。

2011-05-22 11:44:21 | 結果報告
「心を伝える」

「チームワーク」

「元気があれば何でもできる」

の3つをスローガンに、第2回ドーナツ杯天津市1・2年生スピーチコンテストが行われました。



1.観客編

  視察に来ていたコンサルティング会社の方が、

  「観客の質がよい。今まで見てきたコンテストでは、あちこちで携帯電話を

  いじっている学生がいたが、今日はまだ見ていない」とおっしゃっていました。

  また、スピーチの中での呼びかけや問いかけにも、きちんと反応していました。

  また、審査結果が出るまでずっと待っていてくれたことにも、お礼を言います。

  本当にありがとうございました。

  

  中には始まってしばらく、恋人同士で座って話をしている学生もいましたが、

  途中でそれが気にならなくなるぐらい、選手のスピーチはすばらしかったです。

  と言うわけで、次は、



2.選手のスピーチ編  です。

  ゲストとして来て下さった日本企業の方が、

  「心が伝わってきて、途中で泣きそうになりました」

  とおっしゃっていたのが、すべてだと思います。



3.審査員編

  こんなに真剣に話し合う審査員会議は、初めてでした。

  また、各審査員賞の表彰式でも、選手に声をかけていただいたのですが、

  その時の学生達の表情をみると、こちらも嬉しくなりました。

  そして、講評で本当に一生懸命に話してくださったM先生、

  本当にありがとうございました。



4.スタッフ編

  (1)やり直すべき点

     審査結果が出るまでに30分以上かかりました。

     その結果、あわてたスタッフの連絡ミスがおき、

     表書式で名前を間違えて読んでしまうなど、混乱が見られました。

     ひとつのミスが、他のミスを引き起こしてしまうこと、

     「たぶん、大丈夫です」という理由でリハーサルを行わない、

     それは絶対に許されないことです。



  (2)良かった点

    ①当日の朝、7時過ぎにはスタッフが集まってきたこと

    ②案内の学生が10時から(つまり、4時間)外に立って、きちんと案内できたこと。

    ③会場を盛り上げようとして、スタッフが率先して拍手をしたりしていたこと

     (Oさん、本当にありがとう)

    ④終了後、全スタッフが会場の外に並び、見送りをしたこと



もっとも印象に残ったのは、優勝したLさんの感想です。

その感想の意味が分かる人はごく少数だと思いますが、

審査員のM先生、そしてゲストのM先生の二人は、何度もうなずいていました。



ここに書いた以外にも、改善すべき点、はっきり言えば、途中で中止にすべきレベルのミスも

少なくなかったコンテストです。

もし、次のコンテストでも同じミスが起きたら、あるいは起きる可能性が

あると感じられたら、その時点で、コンテストを中止にしたいと思います。

ゲストの方もおっしゃっていましたが、「同じミスを二度起すことは許されない」のです。

(ゲストの方がそういう発言をするということは、そのミスはとても大きなミスだということです)



このような状態でしたので、とてもではありませんが、「成功した、乾杯!」とは言えないコンテストでした。

それでもなお、私は今回のコンテストをやってよかったと思います。

それは、審査員、ゲスト、観客、そして選手とスタッフたちの真剣な顔を見ることができたからです。



日本語教師としての私は、

語学の面では効率を、

教育の面では効率ではなく効果を大切にしたいと考えています。



コンテストへの出場を通じて、日本語力がアップするのは当たり前です。

特訓を受けている選手とクラスメートの差も開きますし、

選手同士の差も、取り組み方によって開いてきます。



しかし、コンテストの意義は、それだけではありません。

少数の、おそらく、数人というレベルだと思いますが、今回のコンテストが成長のきっかけになる

学生が、選手にも、スタッフにも、学生にもいると信じることができる、今回はそういうコンテストでした。



そして、このようなコンテストを積み重ねていけば、

その数人が数十人になる、そう思えるコンテストでした。



「たった数人~数十人の成長のためにコンテストを開催する?」

「そんなの非効率的だ」、そういう声も聞いたことがあります。



でも、私は、教育に効率を求める時代(規格品の大量生産・大量消費と同じ発想)は、

終わったと思っています。

繰り返しますが、語学の面においては、今まで以上に効率的な勉強方法が求められると考えていますが、

人間的な力は、効率よく伸ばすことは無理だと思うのです。



あえて言えば、「語学面」だけに絞れば、効率よく「教育する」ことは可能でしょう。

実際に、「能力試験N1ぐらいだったら、1年前後で合格させることができる」という日本語学校は

少なくありません。1年でN1に合格、とても効率的ですよね。



しかし、人間的な部分は、「何年でこのレベル」というのは、

試験勉強と同じようには計算できないのではないでしょうか。



効率的ではないかもしれないけれど、効果はある、

ドーナツはそのような成長の種を蒔くためにやっています。



そういう意味で、今回のコンテストは、

「失敗の連続だけれど、やってよかった」と思います。



責任者として、最後までやりとおしてくれた商業大学のHさん、

本当にありがとう。



ゲストの方も、審査員の先生方も、大人の人たちはその苦労が分かります。

だからこそ、講評や結果発表などで、あんなに一生懸命に話をしてくれたり、

終了後も会場の外に残って、何十分も話をしてくれたのです。



スピーチが始まると外に出て、タバコを吸いながらコンテストの終了を待ったり、

居眠りをしているゲストがいるコンテストを、何度も見てきた私には、

昨日の光景は、とても新鮮な驚きでした。



失敗は次に取り返すことにして、しばらくは、自分のした仕事に満足していいと思います。

一夜漬け、その場しのぎ VS 改善、PDCA(準備→実行→振り返り→改善)

2011-05-22 11:43:03 | ドーナツの宝
今週の土曜日(21日)は、第2回ドーナツ杯1.2年生スピーチコンテストです。



今回は、今までにない数のゲストの方々が来られますし、

ゴールデンウィークの特訓でも、元俳優の方が来てくださったりと、

少しずつコンテストの認知度が上がってきたことを実感しています。



1年生と2年生の同時開催、

同じ学校同士がペアになっての即席スピーチ、

国際交流基金の助成が認められたこと、

バスで50人の応援団を派遣する学校が出たこと、

テーマを学生達が考えたこと、

スピーチのあり方そのものを審査員が討議すること、



など、現状のスピーチコンテストを少しでも改善しようと

していることは、伝えられるかと思います。



しかし、私が感じている大学日本語科の根本的な問題は、

ここでも解決されていません。



それは、

「一夜漬け、その場しのぎ、言い訳」に終始しているということです。



ある日本企業の方は、次のようにおっしゃっていました。

「大学のサークルなんだから、1年間のスケジュールが立てられますよね。

ある意味では、企業よりやりやすいのではないでしょうか」と。



私もそう思っていました。

大学なんだから、1年間のスケジュールを立てて、十分な準備ができるだろうと。



しかし、現状はまったく逆でした。

何しろ、期末テストの日程でさえ、数日前に通知される学校がありますし、

時間割が新学期の最初の授業の前日に渡されることもあります。



スピーチコンテストにしたって、

「明日(2日後)のコンテストに選ばれましたから出場してください」

というケースも、何度か聞いています。



学生から、

「先生、明日のコンテストに出場するので、アドバイスをしてください」と言われ、

「今まで何をやっていたのですか?今からで間に合うわけがありません」と答えたのですが、

「さっき、連絡があったのです」と言われてしまいました。

もちろん、そんな形で出場した学生が、いいスピーチができるはずがありません。





コンテストの運営スタッフ、出場する選手、そして何よりも教員自身が

一夜漬けでしか事にあたらないから、いつまで経っても日本語教育が変わらないのではないでしょうか。



それは、準備・リハーサルの軽視と同時に、振り返りを行わない、というところからもわかります。

一夜漬けでイベント・コンテストを行い、終わったとたんにすべてを忘れる、

この繰り返しで、どうやったら成長できるのか、私には理解できません。



ドーナツのイベント・コンテストも、だんだん、一夜漬けに近いものになってきました。

そして、審査員として来て下さった方から、厳しい意見が相次くようになりました。



意見を言ってくださっている間は、まだ救いがあります。

ある企業の方のように、「学生の遊びに付き合っている暇はない」と言われ、

二度と来てくれなくなることもあるのです。



お母さんのように優しい先生が多い中で、一定以上の質を保ち続けるのは簡単なことではありませんが、

学校の外では、それ(質を高めていくこと)が当たり前だということを、ドーナツのスタッフは肝に銘じておいてください。



みなさんが成長できないのは、能力がないのではなく、

「一夜漬け・その場しのぎ・言い訳」を積み重ねているからです。



成長したいと思う学生は、「改善・振り返り・十分な準備」を習慣にしてください。